どこに目を向けても、選び抜いたこだわりを感じるインテリアが並ぶHさんのお宅。それでもHさんは「インテリア好き、ってなんか気恥ずかしいからやめて!」と笑います。飾らない笑顔が素敵なHさんが丁寧に作り込んだお部屋は、訪れた人を心からリラックスさせてくれるような空間でした。
2度目の来社で運命の出会い
お仕事をしながら、80代のお父さまと二人で暮らしているHさん。今の家は二人で住むにはちょっと狭く、もっとゆったりとした空間で過ごせたら…。そんな思いで新しい家を手に入れることを決意しました。
家探しをスタートさせたHさんは、不動産屋さんに行って物件を見て回りました。何軒か見て回ったものどこもピンと来ず、徐々に「このまま微妙な気持ちで決断したくない!」という思いが募り始めます。そこで新たな選択肢として、リノベ会社を覗いてみることに決めました。
初めてnuリノベーションに来社されたのは2016年。現れた男性アドバイザーがとにかく丁寧に対応する様子を受け、女性一人で訪れることに不安を感じていたHさんはホッとしたと言います。
しかし個別セミナー後に、ローンの兼ね合いですぐにリノベを始めることが難しくなってしまいました。それを受けたアドバイザーは「今諦めないで、時間を置いて再開しましょう!」と持ちかけます。長期的なスパンでの提案に真剣味を感じ、アドバイザーの言う通り時間を空けて再度来社することを決めました。
大田区で生まれ育ち、新しい家もその周辺でと考えていたHさん。1年越しで物件探しを再開すると同時に今まで考えてこなかった都外にまで範囲を広げてみると、理想の物件との出会いはすぐに訪れました。これまでの人生でほとんど訪れたことがなかったという鷺沼という街。想像していた都外の不便さはほとんど感じませんでした。また、物件の目の前は歩くだけで気持ちのいい並木道。訪れた時の季節は初夏で、青々としている木々が気になってなんの種類か調べてみると、桜であることが判明しました。春には美しい桜並木になるという願いもしなかった偶然に、「いいかも」という気持ちは確信に変わったと言います。
いつのまにか身についていた“自分好み”
インテリアショップで働いていた実体験の中で“自分好み”が身についていたと言うHさん。デザイナーとの最初の打合せに、持ち合わせの雑誌をスクラップして持ち込みました。その中身はシンプルで、抽象的なイメージのものばかり。しかし受け取ったデザイナーはすぐにHさんの好みを把握したと言います。デザイナーにとってもHさんのブレない好みは分かりやすく、ふたりのイメージ共有はまさに以心伝心でした。
取材時に手作りのシロップで梅サイダーをスタッフに振る舞ってくれたHさん。今は新しい家で自家製の味噌を仕込んでいると言います。そんなHさんにとって、キッチンに立つ時間はなにより大切なものでした。また、Hさん同様お父さんも料理好きということもあり、使い勝手がよく二人で並んで料理が出来るキッチンは必須項目。最近の流行であるオープンキッチンに対して「油ハネとか大丈夫なのかな?」とお料理好きならではの視点で疑問を抱いていたHさんは、料理に集中できて油ハネも気にならない壁付けキッチンを選択。ニュアンスグレーのタイルは、他の家にはないものを取り込みたいという思いで決めたものの、汚れが目立たないという嬉しいおまけもありました。
前のお家では、夜ご飯を食べ終わるとすぐにそれぞれの部屋に向かい、会話があまりなかったと言うH親子。男親と娘と言う間柄もあり、Hさんは物静かであまり主張をしないお父さんの遠慮を感じとっていました。「お父さんが自分に遠慮して部屋にこもることなく、ゆったりと過ごせるように」と考えた新しい家の間取りは、ベッドとテレビだけのシンプルな寝室をリビングのすぐ横に設け、引き戸で仕切るというもの。高齢のお父さんにとって引き戸は開け閉めが簡単なだけでなく、大きく造作した扉は開けておくととても開放的です。
妄想が現実になる
宅配のお兄さんが思わず「広っ!」と声をあげるというほど広々と開放的な玄関。Hさん本人の寝室は、そんな玄関を入ってすぐの場所にあります。モルタル敷きの玄関から、あえて段差をつけずひとつづきになった寝室は、靴を履いたまま入るべきか迷ってしまうような独特なつくり。「とにかく玄関は広く見せたい!」という特別な思いからこのスタイルを選びました。というのもHさん、リノベを始める以前から「まず何よりも、玄関を広く取れば空間全体が広く見えるのでは?」と考えていて、この機会にそのアイデアを実現したんだそう。ざらっとしたモルタルの床は、寝室に普通とは一味違うハードなアクセントを加えています。
玄関と寝室を仕切る壁には黒縁の内窓が。ここについて話を伺うと、Hさんが嬉しそうな表情でデザイナーとのエピソードを教えてくれました。「一番最初から、玄関の内窓をつけたいって言ってて。上に内窓があって、その下にコートやカバンをかけるフックがあって、その下にベンチ!っていうのが、見た目的にテンションあがるなって。」その理想はまさに現実となっていました。「でもあれもこれもっていううちに、予算の都合がつかなくなってきて。忘れられなかったけど黙ってたんだよね。そうしたら最後の打ち合わせで、デザイナーさんが見積もりにさりげなく入れておいてくれたの。」その話を一緒に聞いていたデザイナーは、「だってHさんが忘れてないの感じてたもん!」と笑います。Hさんの頭の中の理想がそのままカタチになった玄関は、スタッフも入った瞬間に感動してしまうような仕上がりでした。
目に映る全てが、幸せな景色
リノベ後の家には大阪のインテリアショップ“TRUCK”のTVボードを置くと決めていたHさん。リビングのフローリングはそれに合うよう、TRUCKの家具と同じオークを選びました。
お気に入りのインテリアが壁や床とマッチしていて、パーツなど細部までこだわりにこだわった空間はどこに目を向けても幸せな景色。旅行をするたびに買い揃えるというたくさんの食器も、キッチンが素敵だからこそより一層輝いてみえます。そんな空間の中で本を読みながらうとうとしたり、朝日を感じながら朝ごはんを食べるのが何よりの幸せなんだそう。
また、リノベによってお父さんとの時間にも変化が現れました。前の家ではなかなか自分の部屋から出てこなかったお父さんは今、Hさんがお仕事から帰ってくるとリビングのHさんお気に入りのチェアでテレビを見ています。Hさんが買って帰ってきたものをキッチンのパントリーにしまいこむ間、自然に会話が生まれるようになりました。
経験を重ねることでみえてきた、自分の好きなものとそうでないもの。好きなものだけをとことん大切に、丁寧に精製したエッセンス。それこそが自分自身である、ということを証明するかのようなこの空間で、Hさんは心地よい時を重ねていきます。