モデルの斉藤アリスさんとお届けする、ご自宅のリノベーション日記。
物件探しから、工事中の現場のレポートまで。アリスさんと一緒に、はじめてのリノベーションを楽しく進めていきましょう!
[ Vol.8 こだわりの床 ]
前回は、ショールーム見学をしてどんなお風呂にするか決定しましたね。
設備などが一通り決まったら、いよいよ空間の印象を決定づける素材を選ぶタイミングが訪れます。
水回りに使うタイルや壁紙、塗装するペンキの色、そしてリノベーションの醍醐味といえばの、フローリング!
家の中で大きな面積を占める床。
そこにどんな素材を使うかで、お部屋の印象もかなり変わってきます。
nuリノベーション(以下、nu)ではオリジナルのフローリングも制作可能。
アリスさんは当初「オークのフローリングとモールテックスを合わせたい」と言っていました。
「この階段、渋谷の『hotel koe』で見たのですが、モールテックスと木の融合の雰囲気がとても好きで。
この雰囲気は、絶対に取り入れたいポイントでした。」
まずはデザイナーの鷲山が用意したフローリング材のサンプルをチェックするところからスタートしました。
「オーク以外の選択肢ももちろんありますが、オーク材は流通量が多いので、張り方の選択肢も多いんです。」と鷲山。
その中からイメージに近いサンプルを持って、nuのコンセプトルームへ。
実際の空間に当てはめてみて、イメージ通りかどうか確認します。
nuのコンプセプトルームで使っているのもオーク材のフローリングなのですが、こちらは無垢のオークにヴィンテージ加工がされたもの。
アリスさんが持っているサンプルは、無加工のオーク。比べてみると一目瞭然ですよね。
コンプセプトルームのフローリングは、ヴィンテージ加工が施されています。
あえて傷をつけたり経年劣化してるように見せる加工をすると、新しいけどずっと前からそこにあるような馴染み方になるんです。
アリスさんは見比べてみて、加工なしのオークのフローリングを選びました。
「内装に色や加工を入れすぎると、うるさい空間になるかなって思いました。それよりもシンプルな素材を個性的に使って、ディテールにこだわるほうが自分らしさを表現できて長く愛せそうじゃないですか?個性的な家具を入れようと思っているので、家具を入れたあとのバランスも意識しましたね。」
そして、もう一つのモールテックスという素材について。
実はモールテックスとひとくちに言っても、実は無限に調色が可能なため、色を選ぶという作業も必要なんです。
ここで簡単にモールテックスについてご説明しますね。
簡単にいうと、モルタルよりも薄塗りで、とても強度の出る左官材です。
具体的には1mm~3mmの施工で、コンクリートの5倍ほどの表面強度があると言われています!
これは驚きですよね。
モルタルだと、薄くても3.5cm~4cmの厚さは必要だと言われているので、その差は歴然。
ではリノベーションの空間ではどのような効果が発揮されるのでしょう。
例えば、今まではモルタルでその質感や風合いを表現していた箇所にこのモールテックスを塗るとしますよね。
モールテックスだと薄く塗れば良いだけなので、床から天井までの高さ(天井高)を変えることなく施工可能です。
モルタルだと、天井高が3センチ低くなると考えると圧倒的な差。
逆にデメリットはあるの?と思う方に、ハッキリとお伝えします。
金額がモルタルの約2倍、なのです。
だからこそ使いたい素材があるときには、どこにその素材を使うのか、
どのくらいの面積に施工するのか、ここでもバランスが非常に重要になってくるのだと思います。
(ブランドのものとファストファッションをうまいバランスでコーディネートしている人も
素敵~!って思いませんか?なんだかそれと似ている気がします。)
さて、アリスさん「色はやっぱりモルタルのような色がいいな~」と、当初の予定通り薄めのグレーに決定しました。
どちらも使う素材が決まったところで、アリスさんからこんな一言が。
「馬喰横山に、CITAN(シタン)というホステルがあって、そこの床が良いんですよ~。
タイルとモルタルが切り替わる場所があるんですけど、きっちり切り替わっているんじゃなくて、
タイルが割れちゃったから、そこをツギハギするようなかたちでモルタルで埋めていて。その感じを出したいんです!」と。
おおお!
すごく斬新なアイデア!
そんな床は、nuリノベーション史上、これまでありませんでした。
そして、ここで皆さんにお伝えしたいことがひとつ。
アリスさんのように、「○○(お店や宿泊施設など)で見た△△(素材や内装の雰囲気)」という情報って
リノベーションにおいて重要なイメージソースになると思うんです。
なんとなくでデザイナーに伝えるよりも、具体的で伝わりやすく、
そういったイメージソースをストックしていくことは、イコール “好き” をストックしていくことになるので
完成したときにズレが生じることがありません。
ディテールを諦めないために、普段から“好き”のストック作りを意識しているとあとあと役に立つこと必至です。
さて、話は逸れてしまいましたがそのアイデアを形にすべく、
鷲山と毎週検討を重ねた結果、乱尺張り(長さがバラバラな木材を張っていく施工方法)にしたオークとモールテックスをランダムに床に施工する方法に決定したのです。
これ、どんな風に完成するのかすごく楽しみじゃないですか?
見たことがないものをつくれるって、本当にリノベーションの醍醐味ですよね。
さて、次回は事件が起こります。
アリスさんが「間取りを変えたい」と…
(次回更新は6/15予定です。お楽しみに!)
取材・文:山下あい / 撮影:上田瑠美
前回の記事
Vol.1 アリスさんとの出会い | Vol.2 リノベのきっかけ | Vol.3 物件探し | Vol.4 どんな家にしたい? | Vol.5 プレゼンテーション | Vol.6 間取り決定 | Vol.7 ショールーム見学
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Vol.9 間取り変更!? | vol.10 タイル選び | vol.11 既製品?造作? | Vol.12 Pタイルって何? | Vol.13 スケルトン | Vol.14 現場打合せ | Vol.15 竣工までの道のり | Vol.16 タイル施工 | vol.17 完成! | vol.18 引渡し