心を躍らせるアンティーク調の大きな扉。その先に広がるのは、モルタルやステンレスを基調としたラフでインダストリアルなオリジナルの空間です。家族のにぎやかな笑い声が響き渡る、Y邸を訪ねました。
膨らむ、高まる理想
千葉県千葉市。京葉線のとある駅から少し歩くと、Y一家の暮らすマンションが見えてきます。以前は3LDKの賃貸マンションに暮らしていたY一家。夫妻と保育園に通う息子さん、家族3人で暮らすには十分な広さでしたが、「広さの割には家賃が結構高くて。高額な家賃を払い続けるなら、家を買った方が資産になるし良いんじゃないかと思い、妻に話を持ちかけました」とご主人。インテリア好きの奥様もこの意見に大賛成で、以前から興味のあったリノベーションを軸にマイホーム購入に向けて動き出したそう。「色んなお家をインスタで見ていたら、ついつい妄想が膨らんじゃって。リビングに大きな扉が欲しいとか、広い作業台のあるキッチンが良いとか…。こんな風に自由な家づくりが出来るのって、リノベーションならではだなと思ったんです。nuリノベーション(以下、nu)の事もインスタで知って、デザイン性はもちろん、物件探しからお願いできる点も魅力的に感じました」と話す奥様。そんなY夫妻が最終的に購入したのは、以前のお住まいから車で15分ほどの物件。「保育園や職場までの距離など、生活環境をなるべく変えずに済む物件を中心に探してもらいました。ここは広さも十分だし、日当たりも良いので内見の時から好印象で。近所に公園が点在しているので、子育てにもぴったりな環境です」とご主人が続けます。
主役は“大きな扉”
この家を語る上で外せないのは、限りなく黒に近いダークグレーを纏ったリビングの扉。高さ約2.4mと圧倒的な存在感を放ち、ほぼ全面がモルタルで塗装された無機質なLDKのアイデンティティとなっています。「リノベーションをするって決めた時から、リビングの顔になるような大きな扉が欲しいなと思っていて。この家を内見した時には既に、『この空間をリビングにして、ここに扉をつけよう!』というイメージが出来上がっていました(笑)アンティーク調の扉が好みで、それをどうしたら表現出来るか、色味や質感などデザイナーさんと何度も話し合いました」と奥様。取っ手は、使い込むうちに柔らかな輝きを生む真鍮を採用。扉は独特の深みがあるダークグレーで塗装し、まるで前からそこにあったかのように空間に馴染んでいます。それから、扉の中心を起点に床材が切り替わっているのもY邸の特徴。リビングはサイザル麻という天然素材、ダイニングキッチンはモールテックスで仕上げ、広々とした空間を緩やかにゾーニングしています。「床に座ってゴロゴロできる空間にしたかったので、フローリング以外の素材で検討しました。ネットでサイザル麻の住宅事例を見つけて、これならどんなテイストにも合いそうだし、素足でも気持ち良さそう!と思い、デザイナーさんにリクエストしました。実際に足馴染みも良いし、床座でもリラックスして寛げます」とご主人。モルタルやステンレスなどで構成された無骨な空間の中で、サイザルが織りなすナチュラルなテクスチャーが際立っています。
モールテックスの床に、壁付けキッチンと作業台を設えたDKスペース。ざっくりと仕舞われたお皿や、表情のないステンレスキッチンが厨房のような雰囲気を放つこの場所には、奥様のこだわりが詰まっています。料理が好きで、実家に住んでいた時からキッチンに立つ事が多かったという奥様。よく遊びに来るという友人や同僚にも手料理を振る舞い、一緒に食事をする事が多いそう。「友人や家族と話しながらご飯が作れるように作業台を配置しました。作業台の隣にはダイニングテーブルを配置しているのでゲストとの距離も近く、会話も弾みやすいです。雨の日にはここで息子とクッキーを作ったりもします」と奥様。作業台にはコンセントも備え付けており、在宅で仕事をする際のデスクとしても活躍しているそう。また、今回のリノベでは、“暮らしやすさ”も重視していたY夫妻。賃貸時代に不便に思っていたという水回りの動線を解決するため、約3.5Jのユーティリティ(家事室)を設けました。「洗濯する、干す、畳む、仕舞うが一部屋で完結できたら便利だなと思っていて。それをデザイナーさんに伝えたら、全ての目的を内包したユーティリティのあるプランを提案してくれました。お風呂と隣接しているので動線もスムーズだし、おかげで効率的に家事が出来ています」と嬉しそうな奥様。ユーティリティは脱衣所も兼ねているため、洗面スペースは廊下に配置。ゲストも気兼ねなく使えるオープンな仕様で、モールテックスで造作したL字型カウンターの一辺に洗面スペースを。もう一辺にはシューズラックを兼ねたギャラリースペースを設え、2つの要素を一体的にデザインしました。毎日使う場所だからこそ、気分の上がる空間にあつらえ、日々の暮らしをより豊かに彩ります。
自然体で暮らす
同僚や友人など、夫婦共通の知り合いも多いというY夫妻。リノベーション後は沢山のゲストが遊びに来たそうで、「外観とのギャップもあってか、みんな部屋の内装を見て『…すごい!リノベってこんなに変わるんだね』と驚いています(笑)リビングの大きな扉やモールテックスのカウンターなど、新築では中々ないようなデザインなので尚更ですよね」とお2人。Y邸ならではのデザインと言えば、玄関の飛び石もそのうちの一つ。廊下と玄関横にあるユーティリティへと続く扉を飛び石で繋いでいます。息子さんはこの飛び石がお気に入りだそうでいつも嬉しそうにピョン、ピョンと渡っていくのだとか。「息子はこの家に慣れるまで少し時間が掛かりましたが、今ではすっかり楽しそうです。回遊性がある家なので、いつも元気に走り回っています!」と奥様。大人と同じくらい、この家での暮らしを楽しんでいる息子さんの様子が目に浮かびます。
休日は友人を招いて食事をしたり、家族でゆっくりテレビ鑑賞をしたり、おうち時間を満喫しているというY一家。大切な人達と過ごす時間を“frank”に楽しめる、そんな心地よい家が完成しました。