コの字型キッチンを中心に、壁1つない開放的な空間。『FREELY』と名付けられた、風も吹き抜けるような“自由”を感じるこの空間で新たな生活を始めたT夫妻を訪ねました。
思いがけない町”横浜”
神奈川県横浜市。最寄りの駅から十数分歩いた先にある小さな丘の上に、T夫妻とトイプードルとマルチーズのミックス犬ノワちゃんが住む低層マンションがあります。「お洒落さもだけど、“生活のしやすさ”を重視していたところが大きい」。そう語る奥様の想いから、“自由に家の中を動く”と意味を込め『FREELY』とコンセプトが名付けられた総面積95㎡の空間。奥様が単身時代から住んでいた以前のお住まいは2人と1匹では手狭に感じ、引っ越しを決意したというT夫妻。nuリノベーション(以下、nu)との出会いは、nuのインスタグラムで投稿される事例が気に入ったことや、ご主人のお勤め先がnuのご近所だったこともあり気になっていたそう。その後、nuの個別セミナーに参加し、そのままnuとのお付き合いが始まります。そしてT夫婦のリノベの始まりはなんと、真夏の炎天下に20件以上の物件を内見することでした。当初は、西東京エリアを中心に奥様の実家がある練馬区と、ご主人の職場へアクセスの良い土地で物件を探していました。しかし内見を続ける中で、西東京エリアの物件は、予算や広さなど条件に見合う物件が少ないことを知ります。「1階で庭が欲しいという条件と、広さの優先度が高かったから、それに当てはまる物件がなかった」と奥様は当時を振り返ります。所沢、大宮や浦和など範囲を広げてみるも、あまりピンと来るものはなかったそう。そんな中、「(ご主人が)横浜は割といいイメージがあるって急に言い始めて。『横浜は実家から遠いな』と思いましたが、実際は思ったよりも良い物件がありました」。そこで横浜にエリアを移し、2軒目で今の部屋に出会います。1階で庭付き、日当たりも良好、とお2人の優先度の高い条件をクリアしたこの物件にお2人は即決。「もともとワンルームにしたかったので、長細い物件より横に広い台形の物件が良くて。ここは扇型で、しかも1階なのに日当たりが良かったのが決め手です」。そう話す奥様の言う通り、マンションの1階という立地にもかかわらず、窓の多いこの部屋は外から優しい自然の光が差し込み、部屋の中は充分に明るい印象でした。
自由気まま、柔軟に
気に入った物件ではあるものの、横浜の土地自体は全く詳しくなかったというお2人。自由に外出ができないコロナ禍の引っ越し。新生活を始めるもお互いリモートワークに切り替わり、しばらくは家に篭りがちだったそう。近所の開拓も最近になって「ちょっとずつ」始めていると言います。実際に近所を調べると、近くのバス停から一本で大船へ行けたり、近場のトレイルではハイキング1時間で鎌倉まで行けたりと、周りの環境は想像以上に充実していました。「大船は結構面白いです。市場みたいな商店があって。それに神奈川は魚が安いよね」とお料理好きな奥様。この空間のメインと言ってもいいコの字のキッチンは、奥様がリノベする上で妥協できなかった場所のひとつ。お料理しながらドラマなどテレビを見ることが好きな奥様の為に、キッチンの作業スペースの真っ正面にはリビングのテレビを。さらに友人を招いて手料理を振舞うこともあるため、ご主人が呼ぶ“女将さんスタイル”に。以前住んでいた吉祥寺よりも新鮮なお魚やお野菜が手頃に手に入れやすくなり、“ステイホーム”が続いている今、お料理する機会も増えているんだとか。一方、ご主人は横浜での暮らしを「私は長野で20年、栃木で20年とずっと山側の暮らしだったので海に憧れがありました」と話します。そんなご主人の譲れなかった場所は、広い土間。東京の生活で趣味の自転車に乗る機会が減ってしまっていたものの、広い土間を手に入れた今は自転車を置くスペースもでき、隙間時間に漕いだり、外に出かけたり、趣味を再開できているそう。さらに昨年は想定外のリモートワークになり、土間には急遽ご主人の仕事スペースも。また、お2人の共通の趣味であるキャンプ道具の収納スペースも土間に確保しています。週末は愛犬ノワちゃんを連れ、関東付近のキャンプ場で過ごすことも多いというお2人。“道の駅”でその土地の食材を調達し、“キャンプ飯”を作り、お酒も一緒に嗜むという大人の休日を過ごされているそう。
2020年は奥様の独立やご主人の転職もあり、公私共に変化の年だったというT一家。まだまだ忙しさは続いているものの、徐々に新居での生活リズムが作れるようになったとか。自分仕様になったキッチンで、朝食の準備も慌てず、自分のペースでお料理も楽しめるようになってきているそう。それでもキッチンはこれからも「使いやすさを追求したい」と奥様は話します。「収納の見直しをしてもらうために、整理収納アドバイザーの方に来てもらいました。もちろん、nuさんに仕舞う物のサイズに合わせて、コンパクトで無駄の無い収納を設えてもらいましたが、さらにもうちょっと踏み込んでというか」。片付けがあまり得意じゃないと話す奥様は、インターネットで自ら見つけたという整理収納アドバイザーの方に、細かい収納方法についてアドバイスをもらったと言います。「長い目で見て、家での暮らしを過ごしやすくすることにはお金を使うという選択肢を今は選んでいるような気がしていて」と奥様。選択することが多いリノベの過程。夫婦とは言え、お互いのもつテイストは各々。もちろん、意見が合わないこともあったとか。そんな時、その道のプロの意見や考えを取り入れることにより、お2人の「落とし所」や「好きなこと」の発見、そして効率よく選択ができたとお2人は話します。「効率良く暮らしたいとか、無駄なことで悩みたくないとか。そういう考えが結構多い気がしていて。もっと快適な暮らしがしたいから自由に暮らせるワンルームという間取りにしたんだと思います」。自分達だけで全てを解決しようとするのではなく、専門家の第三者の意見を取り入れる、という柔軟な選択ができるようになったお2人は、程よく肩の力が抜けたリラックスした様子でした。
暮らしやすさを求めて
今後は、細かいところを整えつつ、リビングにハンモックを足し、グリーンをもっと増やしたいとお2人は話します。吉祥寺時代ではドライフラワーを飾っていましたが、越してきてからは海に近い土地柄もあり、湿度の問題でグリーンの方が適しているそう。今あるグリーンは奥様のマメなお父様が育てたグリーンをお裾分けしてもらったものやご兄弟夫婦からお祝いでもらったもの。お父様に代わって熱心にお手入れをしているご主人も「越してきてから緑が飾れるようになって、株分けが楽しいなって思います」と嬉しそうに教えてくださいました。思い入れのあるドライフラワーは残しつつ、各所に新たに加わったグリーン。日当たりの良い開放的なこの空間にふさわしい、フレッシュな印象を与えてくれています。プライベートと仕事に忙しいお2人は「来年(2021年)以降は落ち着いてくれるといいんだけど…」とポロリ。それでも生活の中で自分達の求めるものやアプローチ方法を知ったお2人は今後も効率良く生活を”編集”していくに違いはないはず。この隔たりのない大きな1つの空間で、T夫婦と愛犬ノワちゃんの新しい生活は、気楽に、居心地よく、まさしくコンセプトの『FREELY』のように開放的な暮らしを始めていると感じることができました。