ジョージ・ネルソン作のバブルランプがよく似合う、優美な空気感をまとったK邸。そこは洗練された空間でありながらも、ほっと落ち着くような心地いい温度に包まれていました。
決め手はフィーリング
デザイン関係に勤めるK夫妻と、元気いっぱいの2歳の娘さん。仲良し3人家族が暮らすのは、昨秋にリノベーションした築37年のマンションです。以前は奥沢の賃貸に暮らしていたKさん一家。娘さんの誕生をきっかけに、もっと広々としたお部屋に引越すことを検討したと言います。当初は賃貸で探していましたが、周りのご友人たちの影響もあり購入へとシフト。「家を買うと決めてからも、最初からリノベーション一択というわけではなく、初めは新築マンションなども内見しました。ただ、新築ならではの物件のスペックの高さよりも、自分たちらしい暮らしが送れる家に住むことの方が大切だと再認識して。ライフスタイルにあった家づくりが叶うリノベーションを選びました」と、当時を振り返るご主人。実際にK夫妻がリノベ会社を探し始めたのは、娘さんが10ヶ月の頃。小さな子供を連れて、自分たちで物件探しをする大変さは容易に想像ができたため、物件探しからワンストップで依頼できる会社に絞って探していったと言います。最終的にネットで調べた数社に連絡をとり、施工事例が好みだったnuリノベーション(以下、nu)のイベントに参加。「実際にnuが手掛けた空間を見学できるイベントに参加してみたら、デザイン性だけじゃなくて施工の仕上がりも綺麗だったのが好印象で、nuに依頼することを決めました」と奥さま。担当アドバイザーとの物件探しは、お二人の職場からアクセスが良く、子育てのしやすい落ち着いた環境を求め川崎エリアでスタート。最終的に購入したのは、見晴らしのいい高台に建つ68㎡の物件でした。「決め手はフィーリングですね。低層マンションならではの、品のあるノスタルジックな雰囲気がいいなぁと思って。希望の面積を少し下回っていたので一瞬心が揺れましたが、眺望が良くて窮屈さを感じることもなかったので、広さよりもフィーリングを優先しました」と、K夫妻は話します。
暮らし心地の追求
木、白、コンクリートがバランスよく配され、洗練された雰囲気が漂うK邸。子供の成長やインテリアの変化にも対応できるニュートラルな空間、を念頭に置いて創り上げていったという1LDKのプランは、一見シンプルでありながらも、意匠からマテリアルに至るまで細部にこだわりが光っています。「空間自体は作り込み過ぎず、ハコっぽくして家具で雰囲気を出していくようなイメージだったので、素材には結構こだわりましたね」とご主人。なかでも一番こだわったのは、空間の印象をつかさどるフローリングだったそう。約13畳のLDKに敷き詰められた幅狭×長尺の無垢オーク材は、明るくにぎやかな雰囲気を演出。シンプルな空間にリズムを生み、いいアクセントになっています。また、全体のバランスを考えた際に、天井を白く塗装するか、躯体現しにするかで悩んでいたそうですが、「白塗装だと綺麗すぎる雰囲気になっていたと思うので、躯体現しの無骨さを残して正解でした。おかげで面白い感じに仕上がったと感じています。そのあたりのニュアンスはデザイナーさんが色々と汲み取ってくれたので、ありがたかったですね」とK夫妻。木とステンレスでまとめ上げたスタイリッシュなキッチンは、使い勝手も抜群です。特筆すべきは全長4m超えのバックカウンター。内1mはゴミ箱がぴったり収まるよう設計されており、残りの3mは既製品のキャビネットのサイズに合わせて天板を造作しました。「子供が生まれて物も増えたので、以前の家の倍以上の収納を確保しました。見せる収納があまり得意じゃないので、引き出しタイプのキャビネットを選んだのも正解でしたね。キャビネットはキッチンの天板に合わせてステンレスのものを選んだのですが、素材を揃えることで統一感も生まれるし、とても気に入っています」と奥さま。キッチンの前面も全て扉付きの収納になっていて、ここにはお風呂周りの日用品などを収納しているそう。自分たちにあった収納計画で、より暮らし心地を追求できるのもまたリノベーションの魅力だということを改めて感じます。
キッチンはオープンな仕様にしたことで、リビングにいる家族とのコミュニケーションも円滑だと言います。「料理をしている様子を娘に見せたかったというか、お互いの時間を共有できるような家だったら面白いなと思って。料理に限らずなんでもそうですが、いろんなものを見せていくことで、何かに興味を持つきっかけにもなるかなと。実際に料理をしていると、娘がキッチンのそばでじっと観察していたり、たまにつまみ食いをしたりしていて(笑)。娘なりに少し料理に興味を持ってくれたのか、最近ひとりで卵が割れるようになりました」と笑顔で話します。そしてK邸を語る上で外せないのが、“見せ場”として誂えられた玄関。家の顔とも言える玄関にこだわることは、今回のリノベーションの絶対条件だったと言います。「帰ってきた時に気分の上がる家にしたかったんです。一般的なマンションの間取りのように、玄関を入ってすぐ個室の扉が並んでいる仕様があまり好みじゃなかったので、意図的に意匠をつけたいとデザイナーさんに伝えました」と奥さま。既存の倍以上にスペースを拡張した玄関は、ベビーカーなどを置いてもゆとりのある広さ。直径約1mの大きな丸ミラーや、表情のあるリブ材で壁面が装飾され、K邸のコンセプト『建装の美』を感じさせる優美な雰囲気が漂っています。右手の寝室・WICへと続く扉は壁面と同じリブ材を使用し、それぞれの表面の波模様が美しく揃うよう職人技を集結。そうすることで、扉の継ぎ目や存在感を感じさせない、意匠性の高いビジュアルを実現させています。「施工管理の方が毎回細かく現場を見てくれていて、すごく綺麗な仕上がりですよね。『もっとこうした方が良くなると思います』と、現場で色んな提案をしてくれたのも嬉しかったです」と当時のエピソードを話してくださいました。
温度のある設計
Kさん一家がここに暮らしはじめて、約9ヶ月が経過。今回のリノベーションを振り返り、担当デザイナーとの打合せを次のように語ります。「家を建てた友人から、自由設計は自分たちのイメージをどうデザイナーに共有するかが一番大変、と聞いてたのですが、担当のSさんは色々と汲み取ってくれる部分が多くて。本当に良かったなぁと思っています」とK夫妻。ご主人は自宅が完成してからも、家づくりに対する興味は高まっていて、「趣味でリノベ物件をよく見ています。特に建築家の自邸とかすごく気になるんですよね。元々は自宅リノベの情報収集のために見ていたんですが、今も楽しくて見ちゃってます(笑)」とはにかみます。それから取材中、以前の倍以上に広くなったおうちの中を元気よく走り回る娘さんの姿を見て奥さまは、「前の家は家族3人では窮屈で、子供が自由に動けるスペースもそんなに広く取れなかったので。この家に引越してきて楽しそうに走り回っている姿を見て、こんなに活発な子だったんだ!と気付かされました(笑)おうち時間も楽しく過ごせています」とにっこり。大人と同じくらい、この家での暮らしを楽しんでいる娘さんの様子をひしひしと感じました。
どこか上品で優美な雰囲気をまといながらも、住む人のライフスタイルに合わせた自由設計の枠を超える温度のある設計で、心地いい雰囲気を生み出しているK邸。これからも家族の成長やライフスタイルの変化とともにフレキシブルに姿を変えて、暮らしに寄り添っていくことでしょう。