数年前、nuリノベーションでご自宅をリノベーションしたmaruさん。
リノベをきっかけに変化したライフスタイルや、丁寧な暮らしをつむぐmaruさんの等身大の日常をお届けします。
人生を暮らすということ
早いもので今年もあと少しとなりましたね。
こちらも早いもので、私が不動産業に携わるようになって3年目となりました。
おかげさまで少しずつですが経験を重ねてきて、なんとか一人歩きができるようになり、さまざまなケースと向き合うようにもなってきました。
若い方が親元を離れて初めての一人暮らしをされる時、結婚をされて2人で新生活を始められる時などはこちらも幸せを分けていただけたような喜ばしい気持ちになりますが、家を探されるきっかけはそのような晴れやかな時ばかりではなく、もちろんですが様々なケースがあります。
先日、1人のお婆さまがご来店されて、お婆さまと言っても容姿がお若くて年齢を聞いてびっくりしたくらいなのですが、その方は1人で暮らす家を探されているとのことでした。
腰掛けていただき一緒にパソコンに向かいお部屋を探しましたが、その方のご希望やチェック項目がかなり多く、お部屋を見るたびに「ここがダメね」「もう少しこうでないと」と言われてしまい、それでなくてもご高齢の一人暮らしとなるとハードルが高いもので、心の中ではちょっとカチンと来てしまいました。
「他のお店ももう少し当たってみるわ」ということで出て行かれましたが、数日後その方はまた来てくださいました。
おっしゃる条件も緩くなっていたので、他のお店も回られていろいろと難しいことを感じられたのかもしれません。
最初の時にノーと言われていた物件でしたが、私がおすすめしていた物件を見てみたいとおっしゃっていただけたので、一緒に内見に行きました。
そうすると「あら、明るくていいじゃない」「古めだけど綺麗にお掃除されているわね」とお褒めの言葉をいただけて、私もお気に入りの物件だったので嬉しくなりいろいろとお話しをさせていただくうちに、これまでおっしゃっていた厳しいチェックポイントは、娘夫婦さんに迷惑をかけないためのものであったということに気付きました。
「これだったらいちいち娘を呼ばなくても大丈夫ね」
「本当はガスコンロがいいのだけど娘が心配するからIHにしたのよ」
「モノは極力減らすからいいのよ。処分で娘夫婦に迷惑かけちゃ悪いでしょ」と、理由はほとんど娘さんへの配慮からのものでした。
それを明るく、いいの、いいのと自分に言い聞かせるようにお話される姿に、ジンとしてしまいました。
契約の日は娘夫婦さんも一緒にこられて無事に終わりほっとした数日後、お一人でわざわざお店までご挨拶に来てくださいました。
とても嬉しかったのと同時に、3年目となり慣れが出てきたせいか、第一印象で「この人ちょっと大変かも…」などと簡単に決めつけてしまっていたことを反省しました。
そしてちょうど同じくらいの頃、今度は娘さんの立場で、お母様が住まわれていた家の片付けを済ませ、退去の手続きをされた方がいらっしゃいました。
入院先から帰るのは難しそうとのことで退去となられましたが、お母様が長年住まわれていたお家の片付けは大変だったことと思います。
お母様に代わって毎月の賃料を持ってきてくださっていましたが、これでお店に来るのも最後という日、いろいろな感情が込み上げてこられたのでしょう、涙が止まらずにおられたので、そっと肩に手をかけさせていただきました。
私も同じような状況になりつつあるので、お気持ちが痛いほどに分かります。
「暮らし」というと短いスパンで日常というような使われ方が多いと思いますが、このような経験をさせていただき、「人生そのものを暮らす」という意味で今回は使わせていただきました。
連載のタイトルでも『春夏秋冬の暮らしごと』と謳っておりますが、そんな日々の積み重ねである人生をどのように暮らし、整え、そして整理をしていくのか。
お一人、お一人の暮らしの中で、良いときも、悲しみのときも、大切な節目や区切りの時に立ち合わせていただけることに、私は感謝の気持ちでいっぱいです。
「暮らし」ってなんだろう、「暮らす」ってどういうことだろうと、改めて考えるきっかけをいただいた出来事でした。
今年も貴重な時間を拝借し、拙い文章にお付き合いくださいましてどうもありがとうございました。
皆様にとって、来年も健康で、良い一年となりますように。
今年最後の一枚は、行く年と来る年へ贈る花束で締めたいと思います。
ブラボー!なお年をお迎えください。☺︎
撮影・文:maru
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