動かせない柱はおしゃれに活用!柱を魅せるリノベーション(リノベ)4選
間取り変更を検討する際に、たびたび皆さんの頭を悩ませる動かせない柱やパイプスペース(PS)。
壁を取払いたい箇所にそういったものがある場合は、間取り変更を諦めるしかないのでしょうか?
今回は、一見ウィークポイントに見える物件の特性をリノベーションでおしゃれなデザインアイコンに昇華した実例をご紹介します。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・動かせる、動かせない柱を見分ける方法は?
・柱を魅せるリノベーションアイデア5選
動かせる、動かせない柱を見分ける方法は?
それではまず、リノベーションの前に動かせる柱と動かせない柱を見分ける方法をご紹介します。
マンションの場合と戸建の場合で注目するべきポイントが異なりますので、ひとつずつみていきましょう。
■マンションの場合
<CASE.1> PSがある場所
マンションの場合で、間取りを変更して柱が残ってしまうケースとして圧倒的に多いのがPSです。
PSとは、マンションの各住戸から排出される排水を上階から下階に向かって流すための縦管が収納されているスペースで、一般的にマンションの共用部として扱われます。
キッチン・浴室(洗面)・トイレで管を分けているケースが多く、複数の縦管が1つのPSに集約されているケースもあれば、全て別々にPSを設けているケースもあります。
また、その位置も住戸の外周壁に沿ってレイアウトされていたり、専有部の真ん中にPSが存在していたりと、マンションの構造やお部屋の間取りによってさまざまなケースがあります。
例えば、こちらの間取りのお部屋の場合。キッチンの排水管はガスコンロ前に、トイレの排水管はトイレ内に、浴室の排水は洗面台や洗濯パンと合わせて洗面室内にPSが配置されているのがわかります。
この3つのPSはリノベーションで動かすことができませんので、スケルトンからリノベーションを行なった場合、洗面室内にあったPSは専有部の中央に出てくることになります。
△上の図面のお部屋(スケルトン状態)
レイアウトを変えたとしても、それぞれ既存と同じ位置のPSに排水管を繋ぐ必要があるため、フルスケルトンからリノベーションをする場合でも、キッチンやお風呂をどこにでも配置できるというわけではないということには注意が必要です。
「レイアウトを大きく変更したいので、もともとキッチンが繋がっていた排水管にお風呂を、お風呂がつながっていた排水管にキッチンを繋ぐことはできますか?」というご質問をいただくケースがありますが、そういった工事は難しい場合がほとんど。
構造上施工が不可能な場合もあれば、マンション建設時にあらかじめ想定していない使い方をした時に異臭や漏水被害などが発生し、近隣住民の方と思わぬトラブルになる可能性もあることから、許可がおりないということも。
対応の可否や考え方もマンションごとに異なりますので、気になることがあれば担当スタッフに相談してみてくださいね。
<CASE.2> 物件が特殊な形の場合
数としては多くありませんが、物件の形が特殊な場合などには、稀にマンションでも構造柱が専有部内に出てくるケースがあります。
・リノベーション事例:「FREELY」(神奈川県横浜市)
大きなダイニングカウンターと一体的に造作したアイランドキッチンが特徴的なT邸。
LDKだけを見ると一般的な構造に見えますが、実はベッドルームの南西側が斜めに張り出した、特殊な間取りの物件でした。
上の図面(AFTER)の中で、アイランドキッチンに接するように配置されているグレーの小さな四角の表記が、壊すことができない構造柱。元々はキッチンと洋室を隔てる壁の中に埋め込まれていて見えていませんでしたが、リノベーションで間取りを変更したことでキッチン横に柱が出現。
T邸では天井や梁を躯体現しとする計画だったため、この構造柱も躯体現しの質感を残しLDKのアクセントに。
廊下側には柱に沿うようにベンチを造作し、ちょっと気分転換したいときや外出時の荷物の仮置きスペースとしても重宝する空間になりました。
このように、物件ごとの特徴を活かし、おしゃれなデザインに昇華することができるのはリノベーションの醍醐味ですね。
■戸建の場合
<CASE.1> 通し柱
戸建のリノベーションで撤去できない柱として代表的なのが、建物の1階から2階を貫いている通し柱。
通し柱は戸建の構造上、家の四隅にある場合が多いですが、上下階で形が異なる場合などにはお部屋の中に出てくるケースもありますので、しっかりと竣工図面と照らし合わせてチェックをしましょう。
<CASE.2> 筋交い
柱と柱の間に斜めに渡された筋交いと呼ばれる部材。これ自体が「柱」というわけではありませんが、こちらも家を支える上で重要な役割を担うため、基本的に撤去することはできません。
筋交いは主に、建物の横揺れに対する強度を高めるために入れられている補強材で、耐震性や耐風性を高めるために用いられています。
全ての壁に筋交いが入っているわけではありませんが、筋交いが出てきてしまった場合には安易に撤去するのはNG。デザインとして楽しむ方法があるか、別途補強することで強度を補うことができるのかをしっかりと検討して計画を進めていきましょう。
柱を魅せるリノベーションアイデア4選
それではここから、動かせない柱をおしゃれにリノベーションした実例を4つご紹介します!
これから物件探しをするという方も、ご自宅のリノベを検討しているけど邪魔な位置に柱やPSがある…という方も、ぜひ参考にしてみてくださいね!
・リノベーション事例:「SIMPLE×無機」(埼玉県さいたま市)
LDKに静かに佇む円柱の柱が特徴的なK邸。
もともとキッチンとリビングを隔てる壁の中にPSが埋め込まれていましたが、キッチンをオープンにしたことでPSが露出。動かせないのなら「普通の四角い柱」として残すのではなく、意匠として魅せる ことはできないかと考えたといいます。
そこで行き着いたのは、美術館の柱のような円柱状の柱にするという案。早速設計デザイナーと綿密にイメージを擦り合わせ、職人技を集結することで縦管を曲線状の下地組で覆ったこの円柱が完成しました。
入居後、Kさんこだわりのインテリアで彩られた室内でも確かな存在感を放つ円柱。
PSを隠すために試行錯誤の末につくり出されたこの柱が、K邸を語る上で外すことのできない素敵なデザインアイコンとなりました。
・リノベーション事例:「Colonial」(東京都中央区)
お部屋の要所に取り入れたカラフルな色使いとタイルの質感が特徴のS邸。こちらのお宅では動かすことのできないPSを隠すために、アイランドキッチンと一体的に造作したカウンターを貫くように柱をデザインしました。
図面を見ると、キッチン、お風呂、洗面室のレイアウトが大きく変更されているS邸。
一見「もともと洗面の排水を流していたところに、キッチンの排水を流しているの?」と思ってしまいますが、実はダイニングカウンターを貫いている柱の中には、洗面の排水を流す排水管が通っています。
一般的に、水回りの設備は排水勾配の関係からPSと離してレイアウトすることは難しいケースがほとんどですが、こちらの物件はマンションのコンクリート床が水回りだけ1段下がった状態でつくられている「スラブ段差」と呼ばれる構造になっていたことから排水勾配を取ることが可能となり、このレイアウトが実現されました。
・リノベーション事例:「青の共鳴」(東京都中央区)
セルジュムーユのアームランプが取り付けられた、タイル張りの柱。キッチン背面の壁の延長線上につくられたこの柱には、キッチンの排水管を通すPSが隠されています。
どうしても残ってしまうのであれば、愛着の湧くデザインにしたかったというKさん。当初から使用したいと考えていたマットホワイトの正方形タイルを全面に張り込み、主張の強すぎない個性的な柱をデザインしました。
キッチンや洗面室の壁にもサイズ違いの同じタイルを採用。デザインをリンクさせることで家全体の統一感も生み出されています。
・リノベーション事例:「beach house」(東京都世田谷区)
最後にご紹介するのは、木造3階建ての戸建をリノベーションしたS邸。
ダイニング上に配した意匠梁や、壁面に取り入れた木やブルーのアクセントウォールが、海辺の家のようなナチュラルで上品な空気感を演出しています。
そんなS邸の中で構造柱を意匠的にデザインしているのが、アイランドキッチン横の柱と筋交い。
既存の間取りでは壁付けキッチン背面にバックカウンターがあり、その側面に位置する壁でしたが、図面を確認したところ、構造上取り外すことができない柱と筋交いが入っていることがわかりました。
リノベーションではアイランドキッチンを採用したSさん。撤去できない柱と筋交いは、床と同系色のブラウンで塗装することで意匠的にデザイン。ナチュラルな風合いと視線の抜けが圧迫感を軽減し、家族のつながる開放的なLDKになりました。
最後に
柱やPSがあっても、アイデア次第で自由に楽しむことができるリノベーション。構造計算や排水経路の兼ね合いなど、できること・できないことは物件ごとにそれぞれ異なります。ご自宅や、これから購入しようと思っている物件で少しでも気になる箇所がありましたら、ぜひ個別セミナーへご参加いただき、専門知識を持ったスタッフに相談してみてくださいね。
よくあるご質問
Q1.リノベーション時、抜くことができない柱はありますか?
A.
戸建の場合は通し柱や、構造に関わる柱・筋交いは撤去することができません。別途補強材を入れることで撤去できるケースもありますが、再度構造計算を行ったりと時間とコストがかかってしまうケースも。
また、マンションの場合もPS(パイプスペース)や構造体となるコンクリートの柱は撤去することができません。
Q2.抜ける柱と抜けない柱を見分ける方法は?
A.
マンションの場合は、間取り図面を確認し「PS(パイプスペース)」として表記されているものや、外周壁と同じ表記で記されている柱は撤去することができません。また、戸建の場合は通し柱や耐力壁となっている壁を構成する柱などが、抜くことのできない柱となります。図面や実際のお部屋を見ても一目で判断できないケースもありますので、どうしても抜きたい柱がある場合は必ず担当者に確認しましょう。
Q3. リノベーションで動かせない柱やPSが出てきてしまった場合は?
A.
希望の間取りに変更する際に動かせない柱やPSが出てきてしまった場合は、意匠的に魅せるという方法がおすすめ。タイルを張ったり円柱型にデザインしたりと、アイデア次第で愛着の湧く、ご自宅のアイデンティティのような存在にすることも!