プロダクトデザイナーの夫とマーチャンダイザーの妻が、夫婦でお届けするリノベ日記。家づくりをしていく中で、どのように対話を重ね、価値観をすり合わせていったのか。クリエイター夫妻ならではの着眼点にも注目です。
グレーベージュが紡ぐ、色彩と素材の調和
こんにちは、今回は夫である私が、家そのものの色彩と素材の選定に焦点を当ててお話ししたいと思います。
そのために上の写真は引渡し直後のものを選んでみました。
まずは色彩の話から始めたいと思います。
私たちの家の大きな特徴のひとつに、家全体をグレーベージュのトーンで統一したことが挙げられます。
もともと2人が好きだった色で、当初からこの色を使いたいと考えていました。好きなアイテムがなじむ「シンプルな箱」を作りたいという大きなテーマを叶えるこの仕立ては、強い個性は出したくないけど、人と同じことも嫌だという夫婦に共通する価値観も反映されています。
グレーベージュは、白ではない、グレーでもない、ベージュでもない独特な中立色で、穏やかですが印象的な雰囲気を部屋にもたらします。
訪れる友人たちもこのトーンを快適に感じてくれているようで、私たちにとっても非常に居心地が良い環境です。
また、木材やコンクリート、金属といった素材とも自然に調和し、統一がとりやすい色だと感じています。
元々は壁だけをこの色で塗る予定でしたが、デザイナーさんから提案された天井まで同じ色で塗るアイデアに魅了され、ワントーンでの統一に至りました。
次に、素材選びにも同じくらいのこだわりを持ちました。
見た目の再現性だけではなく、素材の質感や耐久性にも配慮して、納得のいく選択を心がけました。
壁は塗りなおしができたり、塗装ならではの質感が好みだったので、壁紙はなるべく使わない方針で進めていき、床材は、フローリング、タイル、カーペットなど場所に応じて選び分けていきました。
予算的にも抑える必要のあったトイレでさえも、プラスチック製の手洗い器を避け、どうしても陶器の手洗い器を設置したいと考え、そのためにデザイナーさんには半ば無理やり叶えていただきました(笑)
前途したようなこだわりを実現するために、多くの減額案を断ってしまい予算を超過してしまいましたが、ドアをやめてカーテンにする。
そのカーテンレールも自分たちで設置する。
玄関、寝室の壁を自分たちで塗装する。
など、可能な限り妥協をせずにDIYを取り入れることでやりくりしました。
リビングと同じ塗料を教えていただき、養生のセットとその塗料を持って家の引渡しに臨み、その日から作業をして自分たちで塗装を完成させたのはとても良い思い出になりました。
もともとのマンションの特性を生かして、新旧の素材が組み合わさって自分たちの空間を作ることができるのはリノベーションの醍醐味だと感じています。
天井の躯体についた当時の面影は、クリーンになりすぎない良いアクセントにもなっていてとても気に入っています。
前回も挙げさせていただいたHOTEL K5も100年前の銀行をリノベーションしてつくられていて、内装にも当時の雰囲気や要素を感じることができます。
多様なテイストがうまくミックスされた空間に僕たちは魅力を感じているため、そういう意味でも古いマンションをリノベーションして暮らすことは最適な選択肢だったと感じています。
こうした色彩と素材の選択は僕たちが目指す「シンプルな箱」にとって、とても重要な要素です。この空間に好きなアイテムや色を取り入れることで自分たちの理想的な空間が作られているので、次回の更新ではそのことについてお話しさせていただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
撮影・文:小松夫妻
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