動かせない柱をデザインに | 柱・PSを生かしたリノベーション4選
「この柱、動かせないって言われたけど、どうすればいい?」
マンションや戸建のリノベーションでは、構造上どうしても動かせない柱やパイプスペース(PS)が存在します。
間取りを決める上で避けられない制約に思えるかもしれませんが、実は“魅せ方”次第で空間を引き立てる主役にもなります。
この記事では、柱やPSをデザインとして活かすリノベーションの考え方と実例4選をご紹介します。
「制約を個性に変える」住まいづくりのヒントがを見つかれば嬉しいです。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・動かせる柱・動かせない柱の違いとは?
・柱を魅せるリノベーションアイデア4選
動かせる柱・動かせない柱の違いとは?
リノベーションを考える際に、まず押さえておきたいのが「柱」や「PS(パイプスペース)」の位置です。
これらは建物を支えたり、配管を通したりするための要素であり、基本的には動かすことができません。
■マンションの場合

マンションで間取り変更をする際に、制約となるものの代表例はPS(パイプスペース)です。
▽PSのレイアウトの一例

間取り図上の黄色でハイライトされているのがPS。
撤去・移動は原則できませんが、柱をタイルや左官で仕上げたり曲線的な形状にしてみたりと、動かせないからこそ“魅せる柱”として楽しむこともできます。

■戸建の場合
戸建では、通し柱や管柱、筋交と呼ばれる構造部材が建物を支えています。これらは耐震上、重要な構造となるため、撤去や大きな移動はできません。
ですが、これらの構造材を意匠的に見せることで、戸建ならではの木の質感や構造の美しさを感じる空間をつくり上げることができます。

柱を魅せるリノベーションアイデア4選
ここからは、動かせない柱をおしゃれにリノベーションした実例を4つご紹介します。
これから物件探しをするという方も、ご自宅のリノベを検討しているけど納まりの難しい位置に柱やPSがある…という方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
CASE.1 | 円柱をアイコンにしたLDK
・リノベーション事例:「SIMPLE×無機」(埼玉県さいたま市)

LDKに静かに佇む円柱の柱が特徴的なK邸。
もともとキッチンとリビングを隔てる壁の中にPSが埋め込まれていましたが、キッチンをオープンにしたことでPSが露出。動かせないのなら「普通の四角い柱」として残すのではなく、意匠として魅せる ことはできないかと考えたといいます。

そこで行き着いたのは、美術館の柱のような円柱状の柱にするという案。早速設計デザイナーと綿密にイメージを擦り合わせ、職人技を集結することで縦管を曲線状の下地組で覆ったこの円柱が完成しました。

入居後、Kさんこだわりのインテリアで彩られた室内でも確かな存在感を放つ円柱。
PSを隠すために試行錯誤の末につくり出されたこの柱が、K邸を語る上で外すことのできない素敵なデザインアイコンとなりました。
CASE.2 | タイルで仕上げた“魅せる柱”のキッチン
・リノベーション事例:「contemporary×KITCHENl」(東京都国立市)

シンプルな色使いのLDKの中で目を引くのは、赤いタイルで囲われた円柱の柱。リノベーション前は真っ白な袖壁の中に隠されていたPSを、意匠柱としてアクセントにしました。

柱の形状に合わせて、モールテックスで造作したキッチン台の角もアールに。
曲線的な意匠がコンテンポラリーな雰囲気を掻き立てる、唯一無二のデザインです。
CASE.3 | 造作収納と一体化した柱
・リノベーション事例:「terracotta×KITCHEN」(東京都世田谷区)

テラコッタ色を基調としたアイランドキッチンが佇むK邸。
写真中央のタイル張りの柱は、PSを隠す意匠柱+収納の役割を担っています。

通路側に回り込んでみると、上下二段の観音開きの収納が。キッチン周りのものに加え日用品なども収まる大容量で、すっきりとしたLDKをキープするのに一役買っているそうです。
取っ手も丸くくり抜いた窪みとし、意匠的に魅せる工夫も忍ばせました。
CASE.4 | 木造戸建の魅せる構造柱
・リノベーション事例:「NATURAL×CAFE」(神奈川県茅ヶ崎市)

最後にご紹介するのは、木造2階建+LOFTの新築戸建の構造柱を魅せるリノベーションの実例。
元々LDKと個室を隔てていた壁を一部撤去し間取りを変更しました。

撤去することのできない構造柱と筋交いは、フローリングの色味に合わせて化粧直し。
構造の形状に合わせた固定棚を造作し、魅せる棚としてアップデートしました。
最後に
柱やPSがあっても、アイデア次第で自由に楽しむことができるリノベーション。構造計算や排水経路の兼ね合いなど、できること・できないことは物件ごとにそれぞれ異なります。ご自宅や、これから購入しようと思っている物件で少しでも気になる箇所がありましたら、ぜひ個別セミナーへご参加いただき、専門知識を持ったスタッフに相談してみてくださいね。
よくあるご質問
Q1.リノベーション時、抜くことができない柱はありますか?
A.
戸建の場合は通し柱や、構造に関わる柱・筋交いは撤去することができません。別途補強材を入れることで撤去できるケースもありますが、再度構造計算を行うなど、時間とコストがかかってしまうケースも。また、マンションの場合もPS(パイプスペース)や構造体となるコンクリートの柱は撤去することができません。
Q2.抜ける柱と抜けない柱を見分ける方法は?
A.
マンションの場合は、間取り図面を確認し「PS(パイプスペース)」として表記されているものや、外周壁と同じ表記で記されている柱は撤去することができません。また、戸建の場合は通し柱や耐力壁となっている壁を構成する柱などが、抜くことのできない柱となります。図面や実際のお部屋を見ても一目で判断できないケースもありますので、どうしても抜きたい柱がある場合は必ず担当者に確認しましょう。
Q3. リノベーションで動かせない柱やPSが出てきてしまった場合は?
A.
希望の間取りに変更する際に動かせない柱やPSが出てきてしまった場合は、意匠的に魅せるという方法がおすすめ。タイルを張ったり円柱型にデザインしたりと、アイデア次第で愛着の湧く、ご自宅のアイデンティティのような存在にすることも可能です。