暮らし方をつくる vol.1
こんにちは。
設計デザイナーの渡邊です。
今回から「リノベのアレコレ」にて、新連載『暮らし方をつくる』がスタートいたします。
突然ですが、nuリノベーション(以下、nu)がリノベーション済み物件を手がけていることはご存知でしょうか?
nuが今までに培ってきたデザイン力、施工クオリティを集結させ、物件の仕入れ、設計デザイン、施工、インテリアスタイリングまでを自社でトータルプロデュースした空間を提供しています。
また、リノベーション済み物件はnuのリノベ空間を体験いただくためのショールームとしても機能させております。
リノベーションを検討されている方の中には、「リノベーションには興味があるけど、まだリノベ空間を実際に訪れたことがない」という方も意外と多くいらっしゃいます。そんな方にもリノベならではの間取りや素材感、nuが自信を持って提供する高い施工力をご体感いただけるため、安心して家づくりをスタートするためのきっかけづくりとしても、お役立ていただける空間となっております。
その空間を創り上げる中で、私たちデザイナーがこだわりをもっているのは「暮らし方を添えた空間」をご提案するということ。
この連載では、私たちが提供するデザインに込められた「暮らし方」へのこだわりを、設計デザイナーの目線からご紹介できればと思っています。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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第1回目の今回は、私がデザイナーとして担当した学芸大学エリアのリノベーション済み物件についてお話したいと思います。
この物件は、築24年・約79㎡のマンションの一室。
落ち着いたライトベージュを基調に、壁に張り込んだダークブラウンのウッドパネルや随所に忍ばせた間接照明の明かりが上質な空気感を醸し出しています。
この物件が位置する学芸大学エリアは、駅前に活気ある商店街が広がる一方で、その周辺には閑静な住宅街が広がる、年齢を問わず暮らしやすい人気エリア。おしゃれなカフェや飲食店、ショップなどが立ち並ぶ土地柄、感度の高いクリエイティブな方が多く住まわれています。
私も実際に学芸大学に足を運び、街の空気に触れ、そういった感度の高い、目の肥えたお客様の感性に刺さるデザインはなんだろうと思案する中で、今回の物件のデザインを“海外テイスト”に仕上げるという考えに行きつきました。
海外の邸宅にあるような、開放感のある洗練された雰囲気を纏った間取りと設え。それによって生み出される、のびのびと活気のある上質な暮らし。そんなイメージを膨らませながらプランニングを進め、出来上がったプランがこちらです。
部屋数は、ファミリー層をターゲットにした3LDKに設定。
中でも特徴的なのは、広々としたキッチンスペースです。
3LDKの間取りのちょうど真ん中に据えられたキッチン+アイランドカウンターは、自然と家族が集まる暮らしの中心としてレイアウト。
使い勝手の良いL字のキッチンは作業スペースも広く、複数人でもお料理を楽しんでいただけるサイズ感としました。
オリジナルデザインで造作したアイランドカウンターは、調理時の作業台としてはもちろん、カウンターチェアを置けばサクっと食事を済ませたい時にもぴったり。在宅ワークやお子様の勉強スペースとしてもマルチに活用できる、家族の集いの場所となります。
このキッチンやアイランドカウンターから暮らしが広がっていく光景をイメージしながらつくり上げた、この家の主役ともいえる空間です。
また、LDKに隣接する個室のパーティションにはガラス引戸を採用。
視線を遮ることなく緩やかに空間を区切り、限られた広さの中でも広がりや奥行きを感じさせるデザインに仕上げました。
フレームは細身のブラックとし、上質なデザインの引き締め役に。
また、床のレールがいらない吊り戸式の建具を採用している点も、「暮らし方」へのこだわりの一つ。
引戸を開き切ればLDKと個室を一体的に使うこともでき、お客様の多様な生活シーンに合わせてフレキシブルに空間を使えるようプランニングしています。
それでは続いて、素材や仕上げについて。
メインの床材として使用しているのは、トーンを落としたアッシュグレー色で塗装したオークフローリング。このフローリングの色味を起点に、厳選された落ち着きのあるライトベージュの素材を家中に配し、落ち着きのある大人っぽい印象に纏め上げています。
中でも特徴的な素材は、キッチンやアイランドカウンターの腰壁に張り込んだリブパネル。
無垢材ならではの木目のゆらぎや豊かな表情、リブの美しい陰影が印象的です。
優しい風合いの天然木に塗装を施すことで少し濡れたような艶やかさが生まれ、より上品な印象になります。
ナチュラルで繊細な空間を演出する、密かに注目の集まる素材です。
玄関から廊下、洗面室、キッチンに至るまでの床材は、20cm角の磁器質タイルで統一。
玄関扉を開けた瞬間のファーストインプレッションを意識し、上質な海外の暮らしを彷彿とさせるようなシームレスな設えを追求しました。
洗面台は清潔感のある色味、素材感にこだわって造作したオリジナルデザイン。
2つ並んだボウルと大きなミラー収納で、朝もストレスなく身支度ができます。
また、洗面ボウルとトイレの手洗器は質の良い海外製のアイテムを採用。随所に海外のエッセンスを盛り込みました。
最後に、家具についてのお話です。
家具についても空間と同様、多様な価値観、暮らし方にフィットするよう、ライフスタイルに応じて変化させることができるアイテムを厳選してコーディネート。暮らしの自由度を残しました。
<INTERIOR DATA>
・sofa:arflex/MARENCO
・dining table:CARL HANSEN&SON/CH006
・chair:CARL HANSEN&SON/CH24
中でも今回、こだわってスタイリングしたのがダイニングテーブルです。
ハンス J.ウェグナーが手がけた「CH006」は、テーブルの両端に半円形の伸張板がついたエクステンションテーブルで、両端を広げた際の最大幅は235cmにもなります。
一般的な日本の住宅ではなかなか置くことができないサイズ感ですが、今回、LDKと隣接する個室を一体的にプランニングしたこの空間であれば、両端を広げた状態でテーブルを配置しても余白が残るくらいの広さ。
キッチンスペースを中心として広がる暮らしの延長線上に、そこに集う人々が時間を忘れて寛ぐことができる、そんなダイニング空間をスタイリングしました。
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そのほかにも、細部までこだわりを詰め込んだこの空間。全て挙げていたらキリがなくなってしまいそうですので、今回ご紹介しきれなかったポイントはまた次の機会に。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。