特集!造り付けの造作家具で叶えるオリジナリティのある暮らし
リノベーションの打合せの際によく使われる“造作(ぞうさく)”という言葉。造り付けやオーダーともいい、『造作家具』や『造作キッチン』のように使われます。造作はメーカーの既製品と比べてデザインの自由度が高いので、とことんこだわりたい!という方やニッチなニーズを叶えたい時などにピッタリな選択肢です。
今回はリノベーションで造り付け家具を造作した事例をご紹介しながら、造り付け家具の魅力やアイデアをお届けします。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・造り付け家具とはどんなもの?一般的な家具との違いは?
・造り付け家具の種類
・リノベーションするなら知っておきたい造り付け家具のメリット
・造り付け家具の実例4選
造り付け家具とはどんなもの?一般的な家具との違いは?
造り付け家具とは読んで字の如く、一つ一つの空間に合わせてデザインされた家具を、お部屋に造り付けて設置する家具のこと。完成した空間に合わせて購入する一般的な家具とは異なり、リノベーション工事の際に大工や家具職人が家具をつくり上げていきます。
例えば、収納棚などは既製品の中から部屋にぴったり合った家具を見つけ出すのはなかなか難しいものです。幅や奥行きが短すぎたり、長すぎたり、色が気に入らなかったりして、しかたなく我慢して使うということにもなりかねません。
その点、造作家具は部屋に合わせて設計するので、サイズや色など、思いのままに造ることができる点が魅力的です。
造り付け家具の種類
リノベーションにおける造り付け家具は、制作過程の違いによって大きく2種類に分けられます。
1つ目は、リノベーションを行なっている現場で制作する家具。現場で造るので、実際の設置位置に合わせてサイズを微調整したり、調色を行うことで他の箇所と色を揃えたりすることができます。
・リノベーション事例:「VINTAGE×TOKYO COOL」(東京都目黒区)
ランダムに配置された棚板を、一本の円柱が貫くようにデザインしたオリジナルシェルフ。廊下の突き当たりにあたる場所で頻繁に視界に入ることからも、デザイン性にこだわって造り付けの棚を造作しました。
△造作工事中の様子
棚板の両端を壁の下地に飲み込ませて固定しているため強度が高く、取り付け金具などを露出させずに施工することができる点は造り付け家具ならでは。すっきりと洗練された設えに仕上がっていますね。
そして2つ目は、工場である程度組み上げた部材をリノベーションの現場に運んで設置する造り付け家具。精巧な加工が必要な場合や大型家具など、現場では難しい作業を別の場所で行うことで、より精度の高い造り付け家具の造作が可能となります。
・リノベーション事例:「LUXURY×モダン」(東京都港区)
もともと洋室だったお部屋を、リノベーションでWICにアップデートしたI邸。当初は既製のユニット家具を購入することを検討していましたが、ミリ単位でのオーダーができなかったことなどから、造り付け家具をオーダーすることを決めたと言います。
引き出し収納やスチールパイプなど、精度を求められる部分は工場で加工を行い、最終的な立て付けの調整を現場で行うことで、使い心地へのこだわりを追求しました。
ブラックと深い色の木で統一し、まるでフィッティングルームのような高級感の漂う空間に。WICのデザインに合わせて、ドレッサーもオリジナルデザインで造り付けました。
リノベーションするなら知っておきたい造り付け家具のメリット
既製品の家具では得ることのできない多くのメリットがある造り付け家具。
代表的なメリットはサイズ・色・仕様を自由にカスタムできるという点ですが、ここからはその魅力を最大限に引き出すことのできる造作のポイントを、アイテム別にご紹介いたします。
◾️壁面収納
リノベーションの造り付け家具としてイメージする方が一番多いのが、壁一面の収納ではないでしょうか。
最近では各インテリアショップからも「ユニット収納」など、自由度のある製品も出てきていますが、一つ一つの物件で異なる幅や天井高にピッタリと合うものはなかなかありません。
また、天井高ともなると気になるのが耐震性です。既製品の家具でも、専用の部材を設置することで耐震性を高めることはできますが、リノベーションで造り付け家具を造作する場合は下地から補強を行うのでより安心。耐震用のパーツが見えることもないので、デザイン性を保ちつつ安心・安全な暮らしを手に入れることができます。
耐震性が高い造り付け収納も、「どこに何を仕舞うのか」には注意が必要です。扉つきの収納でも、棚の上の方に重量のあるものをしまうと揺れの大きさによっては扉が開いてしまい中身が落ちてくることも。設計デザインの段階で仕舞うものをイメージしながら計画を立て、安全性にも考慮してリノベーションを楽しみましょう。
上の写真は、リビングに造り付けの本棚を造作したFさん邸。漫画や仕事関連の書籍などたくさんの本をお持ちでしたが、中には大版で重量のあるデザイン書なども。
そこで腰高より上の高さには漫画や単行本、下には大きな本を仕舞えるよう、棚板のピッチを一段一段細かく設定しました。
一番下の段はかがみ込んだ時に本の背表紙が見やすいように、棚板に角度をつけて造作。本もデザインの一部として楽しむ、Fさんならではの造り付け棚が完成しました。
◾️ダイニングテーブル
LDKの中でもレイアウトに悩む方が多い、ダイニングテーブルの位置とサイズ。大きなテーブルを広々と置ければ問題ありませんが、お部屋の広さによってはそこまでゆとりのあるスペースを確保できないという場合も。
そんな時、家族構成、お部屋のレイアウトなどに合わせて幅や奥行きをオーダーできるのは、造り付け家具の魅力です。
キッチンのバックカウンターとダイニングテーブルを一体的に造作したM邸。天板の片側を壁に固定して支えているため、ダイニングテーブルは細身の脚が2本のみ。すっきりとしたシルエットをつくり出しています。
木の色や質感も、バックカウンターと設えを揃えて造作。木天井の下にピッタリと収まるよう計画されていて、細部までこだわりを感じる洗練されたダイニングに仕上がっています。
◾️ワークデスク
ダイニングテーブルよりもさらに細かな納まり、使い勝手が要求されるワークデスクも、リノベーションで造り付け家具を設える方が多いポイントです。
一見シンプルなW邸のワークスペースですが、この造り付けデスクにはご夫婦の細やかなこだわりが詰め込まれています。
お二人が並んで作業をするための最適な距離感、デスク上にコードが溜まらないよう天板に開けた配線口と、配線口のすぐ下に設置したコンセントソケット。デスクの高さは、かねてから置くことが決まっていたキャビネットの高さに合わせて設定するなど、徹底的にこだわり抜いて、造り付け家具をオーダーしました。
サイズや使い勝手など、無駄がなく自由度が高い点はとても魅力的ですが、デメリットとしてあげられるポイントも。良し悪しをしっかりと理解して、造り付け家具にするか既製品の家具を選ぶのかを見極めましょう。
◾️デメリット1:レイアウト変更ができない
造り付け家具は壁や床にしっかりと固定されていることがほとんどですので、簡単に脱着することはできません。模様替えを楽しみたい方や、暮らしに合わせて使い勝手が変化する可能性がある家具などは、置き家具でフレキシブルに対応できる余白を残しておく方法も◎◾️デメリット2:コストボリュームが大きくなりがち
造り付け家具は一つ一つがオーダーメイドなので、大量生産が可能な既製品の家具と比べて高額となるケースも。特殊な機構を要する家具などは特にコストがかかってしまいますので、全体のコストバランスと照らし合わせて既製品の選択肢も検討してみましょう。
造り付け家具の実例4選
それではここからは、nuリノベーション(以下、nu)が手がけた造り付け家具の実例をご紹介します。
Case.1 ベンチ
リノベーション事例:「trattoria」(神奈川県横浜市)
玄関にモールテックスの造作ベンチを造り付けたM邸。靴を履くときに腰掛けたり、荷物を仮置きしたりとさまざまな場面で活躍するだけでなく、背面には引き出し収納を設え、WICの一部としての機能も持たせました。
すぐ隣が洗面室なので、洗濯物を畳んでさっと仕舞うこともできます。デザイン性と家事効率も考え抜かれた、唯一無二の造作ベンチですね。
Case.2 キャットウォーク+本棚
・リノベーション事例:「MOKU×LIBRARY」(神奈川県川崎市)
キャットウォークを兼ねた壁一面の本棚。あえて天井いっぱいまで高さを設けず、愛猫が棚の上を歩けるようデザインしました。
たくさんある本も収納でき、愛猫の遊び場にもなる。ライフスタイルに寄り添った、造作ならではのアイデアです。
Case.3 ダイニングカウンター
・リノベーション事例:「ROUGH×OUTDOOR」(千葉県印西市)
躯体現しの天井にウォールナットの床材を合わせた、まるでカフェのような居心地の良さを感じるE邸では、壁付けキッチンを囲むようにL字のダイニングカウンターを造作しました。
カウンター下はたっぷりの収納スペースにすることでバックカウンターとしての役割も担う、一石二鳥の造り付け家具です。
Case.4 カップボード
・リノベーション事例:「BRITISH×アンティーク」(東京都世田谷区)
“イギリスの邸宅”という家づくりのテーマに合わせ、カップボードと吊り戸をブリティッシュライクなデザインで造作。扉の表面にはモールディングを施し、取っ手は真鍮をカスタムしました。
また、キッチン下台もカップボードとデザインを合わせて造作しています。
LDK全体の雰囲気とも見事にマッチしていますね。
最後に
住む人のこだわりを存分に感じる唯一無二の造り付け家具は、いかがでしたでしょうか。
造作家具は細部までデザインできるからこそ、設計デザイナーとのイメージ共有が大切です。理想のデザインに近い写真やラフスケッチなどの視覚的なイメージの共有から、どんな使い方をしたいのかなど生活シーンまで伝えておくと、設計デザイナーとのやりとりがスムーズです。施工事例ページの絞り込み機能では、「造作家具」の事例を一覧で見ることができます。ぜひ家づくりの参考にしてみてくださいね。
よくあるご質問
造り付け家具と既製品家具の違いは?
A.
造り付け家具とは、一つ一つの空間に合わせてデザインされた家具を、お部屋に造り付けて設置する家具のこと。完成した空間に合わせて購入する一般的な家具とは異なり、リノベーション工事の際に大工や家具職人が家具をつくり上げていきます。
Q2. 造り付け家具の魅力は?
A.
サイズ・色・仕様を自由にカスタムできるため、設置箇所にぴったりのサイズで設置したり、調色することで他の場所と色を揃えたりすることが可能。とことんこだわりたい場合やニッチなニーズを叶えたい場合などにピッタリの選択肢です。
Q3.造り付け家具のデメリットは?
A.
文字通り、家具を壁や床に造り付けてしまうため、気軽にレイアウトを変更することはできません。また、オーダーメイドであることから、同等の素材・仕様の家具でも既製品と比較してコストボリュームが大きくなるケースも。