モデルの斉藤アリスさんとお届けする、ご自宅のリノベーション日記。
物件探しから、工事中の現場のレポートまで。アリスさんと一緒に、はじめてのリノベーションを楽しく進めていきましょう!
[ Vol.9 間取り変更!? ]
前回の終わり、アリスさんから「間取りを変えたい」と衝撃の発言がありました。
昨年11月末、「今日、少し会いに行ってもいいですか?」とLINEが入ったのが始まり。
「どうしたんですか?」と返信すると、「ちょっと話したいことがあって」とアリスさん。
一体どうしたんだろう?と思いつつ、アリスさんを迎えると資料を渡されました。
現状の間取りで気になっているポイントが書かれた資料と、その上でアリスさんが考えた
新たなプランのアイデア。その資料を見ながら、下記についてお話されたのです。
Vol.6で決定していた間取りはこちら。この回では<Aプラン>と呼びます。
そして、アリスさんから提案のあった新たなプランがこちらです。
●現状の間取りでは、床や壁にモールテックスを多用しているが
このままだと費用の面でかなり不安があるということ。
(前回の記事でモールテックスの費用について触れておりますので、気になる方はチェックしてくださいね)
●フェンスがデザインのためのデザインになっていて、実用的ではないと感じるということ。
●リノベ後は、友人をたくさん呼びたいので、来客が多いことを考慮すると
現在の位置に寝室があることがプライバシー的な視点からよくないと思うということ。
●寝室とWICの間は、すりガラスなどで仕切りたいということ。
●キッチンの位置を窓側にした方が明るく、空気の通りみちを考えると換気的にもよいので位置の変更をしたいということ。
ざっくりとまとめると、この5つについて疑問や不安、ご要望をいただきました。
新たなプランでは、モールテックスで計画していた新規で造作する壁はなくしています。
プライベートな空間は家の奥にまとめ、来客の際にもプライバシーが守られるような間取りです。
「一度は決まった間取りなので心苦しいですが…。実は、決定した間取りを見た時から、フェンスの上とフェンス横にある無駄な空間、梁(ハリ)とのバランスの悪さが引っかかっていました。いろいろと考えた結果、思い切って間取りを変更するのがいいのでは?と思い立って、リノベを経験したことのある友人や、建築関係の仕事をしている知人にも相談してみたんです。その結果、このプランを思いつきました。
とは言っても、どうしてもこのプランにしたい!ということではなくて、新たなプランと現状のプランを見比べて
折衷案などで折り合いをつけたりしたいと考えています。一生に一度の買い物なので、一番納得のいくものにしたいんです。」
アリスさんの言う通り、
これは単なる間取りアプリのゲームでもなければ、この連載のための企画でもなく、実際にアリスさんが暮らす家。
本当に一生に一度になるかもしれない、大きな出費を伴うお買い物ですよね。
だからこそ、自分が納得するまでとことん突き詰めていくということは本当に大事だと思います。
そして何よりも、アリスさんのように自分が実際に暮らすことを考えて、頭の中でシュミレーションを重ねることが
実際に住みはじめてからの「こうすればよかった…」を減らしていく作業にほかなりません。
この壁は本当に必要なのか?この動線は自分にとって使いやすいのか?
挙げればキリがありませんが、そういった細かい項目をいかにサボらず、諦めず、感覚だけに頼らずに
考えられるかで仕上がりの際の感動は、想像以上になるはずです。
そして、デザイナーの鷲山とも実際に打ち合わせを重ねること2週間ほど。
鷲山からはアンサープランとして、2案(B-1、B-2)の提案がありました。
<B-1プラン>
アリスさんのご要望に近いプラン。
だた、スペース①が少し無駄になっているため、収納量としては計画中のAプランに比べると少なめ。
<B-2プラン>
B-1のスペース①を効率よく調整したプラン。
収納内のハンガーなどの配置計画を考慮すると、寝室とWICの間に当初のすりガラス部分(内窓)を設けるのには
向いていないかも!?
アリスさんは、キッチンの位置を変更したいと仰っていましたが、なぜBプランに反映されていないのでしょう?
この疑問に対して鷲山は、「キッチンの位置を窓側に変更するご提案をいただきましたが、
キッチン排水管の取り回しができないことと、そもそもマンションの管理規約により水回りの移動が認められていない事から
この位置への変更は難しいと判断しております。リビングとの一体感を考慮すると、計画中(Aプラン)の位置が良いのではないかと
思いますがいかがでしょう?」と回答。
マンションの管理規約の点はその通りの意味ですが、キッチン排水管の取り回しとはどういうことなのでしょうか。
「キッチンの排水管(共用部の配管との接続口)が、Aプランのキッチンバックカウンターの辺りにあり、
そこからキッチンが離れるほど床下の寸法を高く確保する必要が出てくるため、
その分天井高、梁下の寸法が低くなるんです。
梁下の寸法が低くなった場合は生活に支障が出てくるので現実的でないのかと判断しております。」と鷲山。
このマンションは、床下に排水管が通っているタイプで(上図の床下空間という部分参照)
水が流れるようにするには、その分の勾配が必要になってくるというわけです。
キッチンが共用部の配管(PS(パイプスペース))から遠くなればなるほど、角度をつけて排水させないと
流れが悪く、つまりの原因になるのです。
それに角度をつけた分、床の高さが上がる=天井高は低くなるので生活しづらくなりますよ、という回答でした。
なるほど、マンションは上下階とのバランスも考えて設計しなくてはいけないということがわかりました。
それからも、B-1・B-2プランと元々のAプランを比較検討しながら、アリスさんは悩みに悩んで答えを出します。
「B-2プランにします!」
おおおおお!
決まりました!!!!
打合せブースにいた全員に、一体感が生まれたような、よし!と団結したような空気感。
間取りが決定するって、ひとつ大仕事を終えたような感覚になるのかもしれません。
そして、ここから新たなスタートのはじまりというような清々しさ。
こうやってアリスさんのように自分の家に対する情熱のある人が増えていけば
もっともっと日本の住に関する意識は高まっていくのだと思います。
そうなったら、もっと選べるものも増えるし、もっと自分らしく住まうシステムが整っていくはずですよね。
この連載をお読みいただいている皆さんも、ぜひ自分の住まいをもっと楽しくして欲しいと願うばかりです。
さて、次回はタイルについてのお話です。
山のような種類の中から、アリスさんはどのように選んでいったのでしょう。
(次回更新は6/29予定です。お楽しみに!)
取材・文:山下あい
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