レースのカーテンが駆け巡る、アパレルデザイナー夫妻ならではの空間に仕上がりました。
“あお”と”みどり”の風景
「レトロな雰囲気が好みだったんです」閑静な住宅街にあって、一際目を惹くヴィンテージマンション。オーナーのK夫妻は、共にアパレルデザイナーとしてご活躍されています。42m²の賃貸物件で暮らしていたご夫妻が、今の家賃と同額でもう少し広い部屋を購入出来ると知ったのは昨年のこと。場所としては気に入っていた街並みや雰囲気であったため、同じエリアでの住み替えを決意されました。当初は新築分譲も選択肢として物件探しを始めましたが、どれも「何かが違う」と感じてしまい、気に入る物件と出会えずにいらっしゃったそうです。「それは、一目惚れに近かった」そんなお二人に、素敵な巡り会いが訪れます。敷地約2500坪のうち7割もの緑地、良好な見晴らしと個性的な間取りを持ったヴィンテージマンションとの出会いです。調べてみれば建築家・内井昭蔵氏の作品であることも知り、「住んでみたい」と強く思うようになりました。すぐさま数社へリノベーションの見積りを依頼したご夫妻でしたが、返ってくるのは「予算内では希望の内装で仕上がらない」という返答ばかり…。仕方なく別の会社を探すうち、目に留まったのが”設計料3%、リノベーションをリーズナブルに”と謳うnuのホームページを見つけました。物件にはアスベストが使用されていたため、除去費用も不安の種だったそうですが、無料相談会にて担当者がお伝えした“こちらも私たちにお任せ下さい”という言葉に心打たれ、物件ご購入を決意されることとなりました。
フクを着た家
「主人の作品が飾れる空間が欲しいんです」物件購入が決定すると、希望の内装や仕上りイメージなどのヒアリングが始まります。
その過程で、ご夫妻が自作のスケッチブック片手に伝えてくださった『ギャラリー空間』というご要望がありました。ご主人の制作された、紙や布を使った作品を満足に飾れるスペースが、今までの賃貸物件には無かったのです。そこで「ギャラリーのような広がりのある空間を目指す」というプランニング方針を決定。出来るだけ壁で仕切らず、ひとつなぎの天井となる開放的なプランを煮詰めていきました。これにより、特徴的なリビングの両サイドに並ぶ沢山の窓を活かし、採光を取ることも可能となっています。また、今回のリノベーションに設定されたのが “イエのフク” というコンセプト。空間の仕切りと開口部にはカーテンを利用し、まるで洋服のなかにいるような雰囲気を演出しています。その柔らかな空間を、ただぼんやりとさせないアイデアもプラス。フローリングをスペースごとに分けた斜め貼りとし、気持ちのよいリズムを与えています。ワークスペースには、ミシン作業が楽に出来るようワイドな机を設置。ご要望のタイル張り洗面室と浴室は造作にて設計され、花柄のアクセントがキュートな仕上がりとなっています。これらのプランニング、デザイン、そして特にコンセプトにおいては、アパレルデザイナーであるK夫妻にとって、お気に入り頂けるものとなりました。あるとき、設計担当の「人が衣替えをするように、家も同じように衣替えをして頂ければ」という考えをお伝えした事がありますが、「これから、もっといろんな場所を自分の手でアレンジしていきたいです」とのお返事を頂きスタッフ皆が嬉しい思いを抱きました。
新たな足音
「友人も魅了するワンダーランドです」竣工後、インタビューに訪れた時のこと。ドアを開けたスタッフの目に留まったのは、アンティークの脚立でした。「その脚立、お気に入りなんです。パリで見つけて担いで持ってきちゃいました」と話す元気な奥様のお腹には、妊娠五ヶ月になるお子様。リノベーションスタート時にはスタッフもとより、ご夫妻も知らなかった”新たな足音”です。「リノベーションに興味の無かった友人も、一度の訪問で魅了されました」と嬉しそうに話すお二人は、以前より家で過ごす時間が多くなったそう。子供部屋をどうするか困りながらも、天井が高いことを活かしてロフトの追加を計画中…!?家族が増える幸せと、新しい住まいを手に入れた喜びを同時に手に入れ、新しく増える家族のことでワクワクしているご様子です。自由に間取りが変えられることや、自分好みの雰囲気にアレンジすることだけが、リノベーションの魅力ではないはずです。招いた人、これから増える家族、すべての人たちとの繋がりを作り上げることができるのも、またリノベーションの持つ魅力の一つなのではないでしょうか。