ヴィンテージ家具や、味のある色味の中に、星のモチーフやフラッグガーランドなどシンボリックなアイテムを点在させたオリジナリティ溢れる空間。それは、ヴィンテージなだけでなく、マイスタンダードを確立した住まいです。
気がつけばリノベの虜
東京都品川区。商店街のすぐ近く、穏やかな空気流れるエリアにお住まいのT一家は雑誌編集者のご主人と、時短勤務をしている奥様、そして3歳の娘さんの3人家族。以前は、12年登戸の賃貸アパートで暮らしていたお二人は、そろそろ代わり映えしない日常に飽きてきて、住む場所に変化が欲しくなったそう。なんとなく家探しを始め、最初は新築物件を見ていましたが、予算が合わず良い物件がなかなかありませんでした。何よりも新築特有の小ぎれいでキッチリとした感じはキレイで良いと思うものの、自分たちの住んでいるイメージが湧かなかったと言います。安くて良い物件はないかと、中古マンションも視野に入れて探し始めたT夫妻。ちょうどその頃、ご主人がリノベーションという方法を住宅系雑誌で見付け、自称凝り性というご主人は、すぐにリノベーションの虜になったそう。その雑誌に載っていたnuの事例を見て、直感で「頼むならここが良いかも」と感じたご主人。物件探しからワンストップでリノベーションが出来るということにも魅力を感じ、奥様にも相談。二人で話し合い、nuに決めました。すぐに相談会に申し込み、早速nuアドバイザーとの物件探しをスタートしたお二人。条件は、近くに商店街があって、60㎡以上の広さがあること。そして千駄木や、谷中銀座のようなローカルな情緒漂う場所に住みたいと考えていました。また、お二人とも会社が浜松町にあるため、最寄りへのアクセスが良いところを視野に入れて探し始めます。最初に見た2件は、あまりピンとこなかったお二人。最後に見た3件目の物件が、自分たちの条件とマッチしていて即決したそう。「ここは、都内のマンションに珍しく窓からの視界が開けていて、住んだら気持ちが良いと思います。」とのアドバイザーからの一言にも納得。60㎡以上という広さ、窓が大きく日が良く入ること、そして一番嬉しかったのは大型商店街から徒歩圏内ということでした。浜松町にも30分以内でアクセス可能であるため、もう迷う事はありませんでした。お二人は、これからのリノベーションにわくわくしながら築27年61㎡の物件を購入しました。
リノベが生んだ、インテリアの達人
なんとnuに訪れた当初は、お二人ともどんな家にしたいという具体的なビジョンが全く無かったというT夫妻。最初のヒアリングの際にも、一応雑誌の切り抜きを準備しますが、「この中で選ぶなら、これかなー?」という漠然としたイメージで雑誌を切り抜いていたんだとか。笑 また、当時ドラマ「ロングバケーション」の再放送がやっていて、ご夫妻で「この部屋、雰囲気が良いよね」と話していたということもデザイナーに伝えていました。その切り抜きの束や、ドラマに出てくる部屋を見たデザイナーは、「味のあるヴィンテージ要素の空間というイメージかもしれない」と直感的に感じたと言います。とにかく、新築にはないものを求めていたお二人。デザイナーからのプレゼンテーションで提案されたプランを見てどう思いましたか?と質問すると、「漠然としていた”家をつくる”ということを改めて実感しました。不安でありながら、でもドキドキするようなそんな気持ちでした」とご主人。Tさんに提案したコンセプトは、「VINSTA」。オーソドックスなヴィンテージ感を出しつつも、新たなヴィンテージのスタンダードを確立するという、”VINTAGE”と”STANDARD”というふたつの単語が合わさったコンセプトでした。玄関を開けると、すぐにT夫妻の世界観に引き込まれます。天井から吊るされた鳥かご、壁に取付けられたアイアンのレターオブジェ、少しアッシュがかった色の花や、グリーン。リビングに繋がるグレーグリーンの扉を開けると、インテリアの細部までとことんこだわったLDKが広がります。それはまるでアンティーク家具ショップに来たかのようなイメージです。中央の白ブリックタイルを貼込んだアクセント壁を中心に、左手には壁一面のDVDとCDのラック。その奥には壁にブルーグレーのアクセント塗装をした、ご主人専用のワークスペースがあります。こだわりのヴィンテージデスクの上にアンティークの小物などが所狭しと置かれています。反対側には木で造作したキッチンの腰壁。その腰壁の前には、大きな古いトランクの上に黒板を置いた、娘さんのお絵描きスペースがあります。お母さんがご飯をつくる間、ここでお絵描きをして、「見て!」と親子の会話を楽しみます。子供部屋と繋がる一番奥の壁には、黒い造作ドアと小窓が並び、ヴィンテージ感をより一層引き立てます。リノベをするまでは、インテリアに全く興味がなかったというT夫妻。しかし、床や壁の素材を選んで行く課程で、色んな雑誌を参考にしているうちに、「こういうのがやりたい」とか、「これ格好良いね」とイメージが膨らんでいきました。特にご主人は、設計期間中にどんどん目が肥えて、使いたい素材だらけになってしまったと言います。「こんなに沢山の色や素材を使ったので、家がごちゃごちゃして見えないか心配でした」とTさん。そこでnuデザイナーは、使いたい素材全てを使っても空間がまとまって見えるよう、ひとつの面に対してひとつの素材を使うプランを提案しました。子供部屋の壁には、黒いドアと黒い小窓。そしてキッチンには木の質感、という風に。そうすることで、どの角度から見てもバランスの良い配色になっています。一番のお気に入りは、WICの壁に貼込んだブリックタイル。「白は絶対に取り入れたい色でした。また、ヴィンテージ要素のある空間にするには、壁もこのくらい気合いを入れないと、決まらないですよね。お陰様で、ここの前に置くと、何でもオシャレに見えるんです。(笑)」と奥様。家中に散りばめられた雰囲気のあるインテリア小物の数々は、ほとんどご主人がリノベ後に買い集めたものだそう。一度ハマるととことん追求するタイプという性格が、空間に現れています。リノベに出会ったことで、今では誰にも負けないくらいインテリアの達人となりました。
リノベで創るマイスタンダード
リノベをしてからお二人のライフスタイルにも変化がありました。「掃除なんて嫌いでしたが、いまは心が落ち着く瞬間となっています。いまは部屋を片付け、部屋を眺めることで一日を終えます。そして朝、また娘が散らかしたものを片付けて家を出ます。」とご主人。夜仕事でヘトヘトになって帰って来て、一人でソファに身を投げ出したとき、テレビを見るわけでもなく、なんとなく天井やブリックタイルの壁を見る瞬間に、家に帰って来たなあと思うそう。元々はインテリアにまったく関心のないお二人でしたが、今回のリノベーションを通じて、すっかりブロカント(※)な品々のとりこになってしまったと言います。以前の家は、どちらかと言うと和テイストだったというから驚きです。「好きな家具があって、それに合う家をつくったのではなく、家があり、そこに合うものを探しているのが今、という感じです。飾る土台として、とてもいい家だと思ってます。」とTさん。古いものや、新しくも味のあるものを上手にMIXしながらオリジナルな空間をひとつひとつ創り上げていっています。休日は、皆で商店街に出かけたり、娘さんのおままごとやお絵描きで一緒に遊ぶという仲良しなT一家。「将来娘が大きくなって、家族をつくって、いざ家を持つというとき、似たようなテイストだったら嬉しいですね。」と娘さんが黒板に絵を描く姿を見つめながら、幸せそうに語って頂きました。(※)ブロカント…美しい古道具の意。