aging【名詞】①経年変化。②熟成。築30年の物件に、更にヴィンテージ加工した素材を使い、つくり込んだ家。時の経過と共に空間の熟成を楽しむ、こだわりのお宅です。
aging street:古き良き街
下町で穏やかな雰囲気漂うエリア、根津。緩やかな坂を登ると、Sさん一家のお宅が見えて来ます。S一家はコンサルティング会社勤務のご主人と、自宅でWeb関係のお仕事をする奥様、そして3歳の湊人君の3人家族。湊人君が生まれたタイミングで、以前の家では手狭になってきた為、家を買うことを決断したそう。 以前の住まいは賃貸マンションで、縦に長いつくりのメゾネットタイプ。 水廻りの位置がバラバラで動線が悪く、いつも家事の捗りににくさを感じていたという奥様。そんなことから、次に住む家は平屋のように横に開けた家が良いと考えていました。インターネットを頼りにまずは戸建を探し始めましたが、 平屋となると、希望のエリアには存在しません。また、新築のデザインは、どれも万人受けするようなデザインで、 ヴィンテージ好きな二人の趣味ではありませんでした。自分たちだけでの家探しに限界を感じた頃、 偶然旧友に会い「今度リノベーションした中古マンションに引っ越すことになった」と言われたS夫妻。 詳しい話を聞くと、nuという会社でリノベーションを行い、空間を一から自由につくれるとか。 それが自分たちの価値観に合っていると感じ、リノベすることを決意。友人の紹介で、物件探しもお願い出来るnuの相談会へ。 沢山の施工事例を見たSさんは、ここなら大丈夫と安心し、nuとの物件探しをスタートします。 条件は、以前の家より広い80㎡以上で、ご主人の職場に通いやすいエリアでだということ。間取りの要望も当初から決まっていて、 部屋数を少なめにすることと、あとはとにかくリビングを広くしたかったS夫妻。 「内見の際、いつもアドバイザーの方がハッキリと伝えてくれたことで、選ぶ際に迷いがありませんでした。」とご主人。 自分たちが良いと思っていた物件に対しても、「ここはSさんの要望を満たせるリノベには向いていないと思います。」と言われ、 内見の度に見る目が養われたそう。その為、最終的には、広いリビングが実現出来る、根津のお宅を選んだお二人。 近くには「めぐりん」という100円で乗れるバスが走っていて、上野公園まで10分足らずで行けることもあり、 子育てにも良い環境だと感じたと言います。街には暖かい人が多く、玉林寺や護国院、蓮華寺など、有名なお寺も多い根津。 お二人は「古き良き街が好きなのかもしれません」とのこと。年季の入った味のあるものに価値を感じる、お二人らしい一言でした。
aging material:味のある素材
物件探しの時からブレることなく、とにかく広いリビングをつくり、そして何よりもヴィンテージの風合いが感じられる家にしたいという考えだったSさん。そしてS夫妻は、それぞれの希望がハッキリしていました。奥様は自宅がオフィスでもあるため、NYにありそうな白い塗装のSOHO空間にしたいと考えていました。お子様もまだ小さいため、仕事部屋に窓をつけて、お子様の様子をいつでも見られるようにしたい、ということも必須条件。 ご主人の使いたい素材は、木・鉄・モルタル、そして白と黒。そしてなんといっても、料理が趣味のご主人は、キッチンへのこだわりが強くありました。 そんな二人の考えを融合させたプランをデザイナーは考案しました。S一家に提案したコンセプトは「AGING」。街も空間もインテリアに関しても、年季の入ったものが好きなお二人にとって、このコンセプトは希望通りで嬉しかったそう。 3案提案されたプランの中から、当初からの希望の延長線上にある、リビングを一番広くとったプランがやはり気に入りました。 広い玄関スペースを抜けると、右手には奥様専用のワークスペース。その奥にご夫妻のウォークインクローゼットと、寝室が連なります。 ワークスペースの窓から見えるのは、ご主人こだわりのキッチンがあるLDK。リビングには、ヴィンテージ加工を施した無垢パインのフローリングが空間の深みを出す重要なマテリアルとなっています。「キッチンは、いわばボクのステージなので」と言うご主人。ご主人は、平日・休日問わず毎日ご飯をつくるため、楽しく料理が出来るようなオープンキッチンにしたいと考えていました。 取材させて頂くお宅で多く感じるのは、料理好きな人には、IHよりもガスが好きな人が多いということ。Sさんも例に漏れず、ガス派だとのことでしたが、実は購入したマンションはオール電化。 それを承知で物件を購入してはいましたが、やはりガスへの希望を捨てられず、そこをどう補おうか考えたそう。 そこで、BBQコンロを導入し、魚や肉はそこで焼くように工夫したり、アメリカ製のオーブンレンジを購入して、オーブンで加熱出来るようにしました。キッチン本体の天板は木、その他はステンレスで造作し、バックカウンターもオールステンレスの業務用で統一。キッチンの周りはモルタルで囲い、唯一無二のオリジナルキッチンが完成しました。 また、この家は、壁が斜めの構造で、解体前の家ではその斜めの壁に反してキッチンが真っすぐに置かれていたと言います。 Sさんも同じように、この家を最初に見た時には、リノベ後も壁をまっすぐにつくり直して使おうかと考えていました。しかし、Sさんの当初の希望は、広いリビングが欲しいということ。デザイナーから、空間を斜めのままつかった方がリビングを広々と使えますよ、と提案を受け、そのプランを選択しました。 恐らく、誰もが最初に見た時には斜めの壁を珍しく思うはず。でもその壁をうまく利用して、壁一面の棚を造作したことで、空間の有効活用も実現出来ているのです。 リビングへと足を踏み入れると、奥行きがあり開放感を感じるスペース。「ここは本当に斜めのまま壁を使うことにして良かったです。斜めに置いたキッチンが珍しくて気に入っています」とご主人。プランが最終的に確定し着工した後、完成までの時間がとても長く感じたため、nuの施工チームがUPしているブログを見ながら、今どの程度工事が進んだのかチェックしていたS夫妻。「ブログがUPされるのをいつも心待ちにしていました(笑)」と、工事中も楽しんで頂いていた様子でした。
aging life:熟していく生活
待ち遠しかったおよそ2ヶ月間の工事も終わり、初めて新居に足を踏み入れた時には、「とても広くて、イメージ通りだと思いました。早く引っ越したい!と本気で思いました。」とS夫妻。引越後、ライフスタイルに変化はありましたか?との質問に対して、「前のライフスタイルを崩したくなかったので、むしろ変化はしていません。前のライフスタイルをベースに、家事等がより効率的になるように・時短出来るようにリノベーションをしました。」とのお返事。奥様は「その中でも、子供部屋をつくったことが正解でした。 前の家ではリビングが子供の遊び場所でもあったので、ヴィンテージ家具で空間をつくり込んでいても、そこにPOPなおもちゃが混在していたので、空間のバランスをとるのが大変でした。 しかし、子供部屋が出来たことで、POPなものは子供部屋に置いて統一をはかれるので、気持ち良く過ごすことが出来ます。」とのこと。湊人君は今3歳、遊び盛りのお年頃。 リビングのすぐ横に繋がる子供部屋は、いつでもお互いの存在を感じられる距離にあり、お母さんも安心して家事が出来ます。 また多い時には、一度に20人もの来客があり、ご主人の手料理でもてなすというパーティー好きなS一家。リノベ後は、好きな料理をつくって、好きなお酒を飲むことがHAPPYを感じる瞬間ですと嬉しそうに語られました。 「まだまだ子供が小さいため、外に二人で飲みにいくということは出来ませんが、その代わり、リノベーションをしたお気に入りの空間で楽しめることがグっと増えましたね。」と素敵なコメント。これからも、成長する湊人君や、変化していく空間の素材を含め、生活そのものが熟す楽しみが続いていくのだろうと感じました。