木をふんだんに使ったラフな空間。文庫本、雑誌、マンガ… お二人のお気に入りの本が並ぶのは壁二面に渡る造作の本棚。本を手に取りダイニングのイスに腰掛けると、レトロなキッチンからは奥様が作った料理のいい匂いが漂ってきます。“本屋と食堂”。ここはお二人の“好き”がとことん楽しめる家。
こどもを育てるならこのマチ、このイエで
W夫妻の家があるのは大森駅から徒歩10分、のどかな住宅街の中。ご主人は食品会社の研究職、奥様は看護師として働いています。そんなお二人が家を買うきっかけになったのは、以前住んでいた社宅の更新日が迫っていた事。今更新すると次の更新は5年後で、ちょうど東京オリンピックが開催される頃。最近では東京オリンピックに伴う土地やマンションの値上がりがニュースになっています。「物件を買うにしても、今と5年後ではきっと金額に大きな差がでてくるだろう。」そう思ったお二人はすぐに物件を探すことにしました。当初3つの選択肢を考えていたお二人。3つというのは1. 築古の中古マンションを買ってリノベーションする、2.築浅の中古マンションを購入する、3.新築の戸建を購入する、ということでした。しかし、新築の戸建だと高額かつ利便性の良い場所にはすでに物件が建っているので希望の場所を選べない、また築浅の中古マンションでも希望の予算と合わない…。それならば築古の中古マンションを買ってリノベーションをしよう!と決心されたんだとか。やると決めたらすぐにでも!というお二人はさっそくリノベーション会社を探し始めます。そんなときリノベーション専門誌『relife+』でnuと出会い、まずは資料請求。パンフレットにあった「個別無料相談会」が気になり参加することになりました。他にも数社の相談会に参加されたそうですが、最終的には親身に相談に乗ってくれたnuにお願いすることに。「自分達である程度物件を探したかったんです。でも、こちらに任せきりではなく物件探しのアドバイスや、欲しい情報があればすぐに提供してくれとても助かりました。」とご主人。物件探しにおいてお二人が譲れなかった条件は最寄り駅から家までが徒歩圏内であるということ、そして将来家族が増えた時のため、子育て支援がしっかりしているということでした。その条件をもとに物件探しを始めご主人の職場に近い、大田区と品川区の2件の物件を見て回ることに。最終的には品川区にある駅から徒歩10分、築34年、60㎡の物件を選びました。決め手になったポイントは品川区の充実した子育て支援制度。さらに物件は1階で庭付き。将来子供ができたら野菜を育てて食育もできるかも!と考えたそうです。
本と食の素敵なミクスチャー
お二人の希望のお部屋はラフな素材を使用したシンプルな空間。その空間にスイーツを特集するTV番組“グレーテルのかまど”のキッチンのようなたっぷり調理スペースのある、木を使用したレトロなキッチンを置くこと。また、ダイニングテーブルは自分達で後からDIYしてみたいということ。さらにお二人ともジャンルを問わず本が大好きなので、本に囲まれるように暮らしたいという要望がありました。初回のデザインミーティングでは簡単なスケッチと、好みのキッチンや本棚の写真を持参しデザイナーに思いを伝えたお二人。そんな要望を元にデザイナーが提案したコンセプトは“本屋と食堂”。本屋のように天井から床までお気に入りの本を並べられる本棚。そしてレトロな食堂のように大きな調理台を囲んでみんなでお料理が作れるキッチン。その2つを上手く融合させた家をイメージしました。出来上がったのはコンクリート現しの天井にラジアータパイン合板を床に正方形に張り込んだ2LDK。木を使ったキッチンと本棚を置いたラフなLDKにネイビーの造作扉がアクセントになっています。本に囲まれるように暮らしたいという希望にデザイナーが提案したのは、壁二面に渡る造作本棚。300冊以上ある本がすっきり収まるよう高さを2.5mとり、文庫本、雑誌、マンガなどサイズの異なる物を収納できるよう棚の間隔に変化をつけました。また素材はあえてベニヤを使用。「最初はどうなるかなーと思っていましたが、ベニヤの木目がきれいだし、ラフな感じがお部屋の雰囲気とマッチしていてとても気に入っています!」と奥様。また本棚はLDと寝室をゆるやかに仕切る壁としての役割も果たしています。夜眠くなったら本棚の壁をくぐって寝室へ。今日の1冊を選んだらお布団へごろん。本を読みつつ眠りにつくのもお二人の至福の時間なんだとか。そして、本棚の対面にあるのはコンロ台とシンク台を分けたキッチン。コンロ台は木のテーブルにステンレス天板を載せたようなシンプルなつくり。コンロ台のオープンな棚には炊飯器、お料理本、そして果実酒が入ったビンが並べられています。扉を付けずあえてオープンにすることで、どこからでもアイテムを取り出す事ができとっても便利なんだとか。また当初キッチンは壁付けにする予定でしたが、デザイナーの提案で回遊性のあるデザインに変更されたそう。「お友達が来ても皆で広々キッチンを使えるし、コンロ台をはさんでおしゃべりしながら料理ができるので気に入っています。」と奥様。以前は全くお料理をされなかったというご主人ですが、このキッチンにしてからは“男の料理”を作れるよう日々努力しているのだとか。ラフに吊るしたたくさんのキッチンツール、そして大きな天板に木を合わせたレトロなキッチン。そこでみんな一緒に調理台を囲みながらせっせとお料理をする様子はまるで食堂のようです。そのコンロ台の隣にあるのは、お手製のダイニングテーブル。コンロ台の幅に合うように木をホームセンターでカットしてもらい、それをお部屋の雰囲気に合うように塗装されたとのこと。ダイニングテーブル完成後はさらにDIYにはまってしまい、今度はキッチンバックカウンターをDIY。「ぴたっとはまるサイズに調整するまで実は4日もかかったんです。少しずれていたりもするけれど、それもDIYの味として楽しんでいます。」とご主人。その他にもお二人のDIY熱はとどまる事を知りません。洗面室にあるミラーは奥様のお手製。木を組み合わせシート状のミラーを貼りあわせたんだとか。さらに玄関スペースには有孔ボードを使ったカバン掛けが。「ちょうどドアを塗装したネイビーの塗料が余っていたので、お揃いの色にしてみました。」と奥様。お二人のDIY家具はどれをとってもお手製だとは思えない程の仕上がりです。お二人の好きな、本と料理。それぞれを楽しめるスペースをしっかり設けながらも全体を木のラフな雰囲気でまとめた空間。DIYでより二人らしく味付けしたこの部屋は、新しいのになんだか昔からここに住んでいたかのような、そんな心地良さが感じられました。
毎日の暮らしを“丁寧”に
リノベーション後はライフスタイルに少し変化があったというお二人。「買うものが変わりましたね。物を買う時はそのアイテムが家に合うかどうかをすごく考えるようになりました。先日買ったおろし金なんか5時間かけて悩みました!これからは良い物を長く大切に使う暮らしへシフトしていきたいんです。」とW夫妻。そんなお二人に最後に投げかけたのは「今1番HAPPYを感じる瞬間は?」という質問。「二人で寛いでいる時かな。コーヒーを淹れてお気に入りのクッションに座りながらゆったりと本を読む。皆からすると本当になんでもない時間なのかもしれないけど、そういう時ほど幸せを感じるんです。」とほほえみながら語ってくれたW夫妻。木でまとめたざっくりとした印象の空間。そこに馴染むのはレトロなキッチンと、お気に入りの本が並ぶオリジナルの本棚…。クッキーの焼き上がりをチェックする奥様の隣でコーヒーを淹れるご主人。クッキーとコーヒーをお気に入りの場所へ運び、本棚からランダムに本を選んだら寛ぎの時間がスタートします。好きな物をとことん楽しめる二人だけの“本屋と食堂”の開店です。