白とオークを基調としたシンプルな空間の要所に、タイル張りの柱やフィギュア専用のニッチなどオリジナリティが溢れているK邸。縦空間を活かした造作のロフトベッドなど、面積の活用方法にも注目です。
リノベ熱高まる
東京都中央区。湾岸エリアの見晴らしのいいマンションの一室に暮らすK一家は、夫妻と愛犬おちびちゃんの3人暮らし。1年半ほど前にこのお部屋を購入し、フルリノベーションしました。「結婚を機に家を買いたいと思い始めていて。2人ともこだわりが強い方なのでせっかくなら自分たちの好きな空間にしたいと思い、リノベ会社を探しました」とK夫妻。まずは数社のHPを見比べて、好みの施工事例が多かったnuリノベーション(以下、nu)の個別セミナーに参加。「最初はとりあえず話を聞いてみようくらいの気持ちだったので、私ひとり(奥様)で参加したのですが、色々な話を聞いて『もうリノベーションしかない!』と熱が高まって(笑)家に帰ってすぐ主人にも話して、そのままnuさんで物件探しを始めました」と奥様。当初は勤務地に近い千葉エリアで70㎡以上の物件を探していたK夫妻。条件に合う物件は全て見尽くしましたが、外観の雰囲気など中々夫婦揃って納得できる物件に出合えず、一度は物件探しから離れてみることに。そしてそれから約3ヶ月後、担当アドバイザーからの連絡をきっかけに物件探しを再開しました。引き続き千葉エリアを見ながらも『どうせなら都内も見てみようか』とシフトチェンジし、ご実家がある中央区でいくつかの物件を内見。そこで今のお住まいである築11年、総面積約57㎡のこの物件に出合ったのだそう。「湾岸エリアならではの青い空がひらけている開放的な景色が気に入って、夫婦揃ってここに即決でした。土地柄、都心だけど道が広かったり、住人の方の雰囲気も明るい感じがしたりと好印象でした」と奥様。「千葉と東京では同じ予算でも買える広さが違うので、当初希望していた広さより狭くなってしまうのは懸念しましたが、そこはデザインの工夫で軽減できると思い購入を決めました。逆に眺望は変えられない部分なので、妥協しなくてよかったなと思っています」とご主人が続けます。
全てがオリジナル
設計デザインのポイントとなったのは、限られた空間をいかに広く見せるかということ。コンパクトさを感じさせないスッキリとした空間づくりを念頭に置いてデザインされたK邸には、随所にこだわりが散りばめられています。そのうちの1つが、リビングに設けられた扉付きの壁面収納。「隠す収納を徹底して空間を広く見せたかったので、大きめの扉付き収納をデザイナーさんにリクエストしました。日用品や書類、本などかなりたくさん物が入っているのですが、扉を閉めれば一気に片付くので便利です」と奥様。収納は扉を閉めると壁と一体化するミニマルなデザイン。収納とキッチンの面を揃えているため、スッキリとした佇まいに仕上がっています。そして隠す収納とは対照的に、リビングの一角にはフィギュアを飾るための魅せる収納も用意。「昔からレトロなフィギュアなどが好きで色々コレクションしていたのですが、前の家では特に飾れるスペースがなかったので。せっかくならと思い、フィギュア専用の棚を数センチ単位でオーダーしました」とご主人。魅せるものと隠すものにメリハリをつけることで、必要以上に物が溢れ出ていないスッキリとした空間を実現させました。それからK邸のアイデンティティとなっているのが、正方形のタイルをあしらった柱。この柱の正体はリノベーション時に動かすことのできないPS(パイプスペース)で、あえてデザイン柱として目立たせより愛着が湧くよう設えました。「タイルの仕上げは絶対にマットにしたくて。艶がないほうがこの空間には似合うなという感覚的なものなのですが、たくさんサンプルを見て熟考したので満足な仕上がりです」と笑顔で話す奥様。個性がありながらも、控えめなデザインでLDKに溶け込んでいるオリジナルの柱。長方形のタイルにはない、正方形ならではの整然とした印象も相まって、空間全体をスッキリと見せています。
洗面室にも、柱にあしらったタイルのサイズ違いを採用しているK邸。「ホテルライクな洗面台にしたくて」という奥様の希望通り、白い磁器質タイルを基調とした生活感を感じさせない空間が広がっています。なかでも特にこだわったのが壁面に造作したニッチ。よく使うアイテムの中からおしゃれなパッケージを厳選して、ショップのように飾っているそう。「置く物のサイズを全て測って、それに合わせてニッチを造ってもらいました。やっぱり毎日使う場所なので、かわいい空間だと気分が上がりますよね。あと、洗面台の高さも私たちの身長に合わせて標準より90mmほど高くしたので、すごく使いやすいです」と奥様。その他にも、こだわりが全面的に反映されているのがベッドルーム。そこには縦空間を有効活用した造作のロフトベッドがあつらえられていて、「寝室をどうするか決めかねていた時に、小上がりの事例をみていいな!と思って。デザイナーさんにこういうのがやりたいです!と写真を見せました」と奥様。ベッドルームはあえて扉を設けず、必要に応じて個室化できるロールスクリーンを設置。普段はオープンな仕様にして、奥行きのある見通しのいい空間に設えました。「二人とも自分の部屋が欲しいタイプではないので、寝る場所もオープンな感じでいいよねという話になって。ちょうどここは玄関の隣で来客の目にも触れるので、ビジュアルには結構こだわりました」とK夫妻は話します。奥様の憧れだったという黒格子をはめ込んだ内窓は、玄関からの視線を軽減できるよう磨りガラスを設置。階段や手すりにまでこだわって造作したロフトベッドには、大容量の床下収納を設けました。「ここにはシーズンオフの洋服や家電を収納しています。手前の収納はマットレスを持ち上げなくても物が出し入れできるので、出番が多い物はこっちに仕舞っています」と奥様。LDKだけでなく、洗面室やベッドルームなど。どこを切り取っても、お2人の「好き」が投影されたオリジナリティ溢れる空間が広がります。
幸せの共鳴
リノベーション後は自宅に友人を招いてご飯を食べたり映画を観たり、賃貸時代よりも広くなったリビングでおうち時間を楽しんでいるというK夫妻。休日には近所のお台場や豊洲などに遊びに行くことも多いそうで、「マンションで電動自転車を貸し出しているので、よく近くに自転車で出かけたりもします。周辺が充実しているので、以前よりも積極的に出かけるようになってとても楽しいです。眺望が物件購入の決め手ではあったんですが、周辺環境的にもこの物件を選んだおかげで暮らしがより豊かになった気がします」とK夫妻。朗らかに話すお2人の表情からは、この街での新しい生活を存分に楽しんでいる様子がひしひしと伝わってきます。そして最後に、リノベーションで創り上げた我が家での暮らし心地について尋ねてみると、「自分たちの身長や収納する物のサイズに合わせて寸法を決めていったこともあって、毎日の暮らしがとても快適です。それに自分たちのこだわりをとことん反映した家なので、朝起きるたびに幸せな気持ちになるというか。やっぱりどんな家に住むかって、ポジティブに過ごすためにもすごく大切なことだなって改めて感じました」と笑顔で締めくくってくださいました。
窓から見える四角く切り取られた青空と、自分たちらしく彩った唯一無二の住まい。ふたつの特別な要素が共鳴し合い、この先も穏やかな時間を重ねていきます。