オークの明るい表情を程よく引き締めるグレーの壁と、そのコントラストを温かく照らし出す間接照明の灯り。そこは愛猫と暮らすご夫婦のこだわりと優しい仕掛けが散りばめられた住処でした。
巡り合せを信じて
東京都江東区。古き良き下町情緒と現代文化の洗練された気配が混ざり合うその街に、A夫妻が暮らすマンションはあります。当時住んでいた賃貸の更新が近づいたタイミングで「次に引越すならそろそろ家を買いたいね」と夫婦の意見が一致したことから、本格的に家探しをスタートさせたA夫妻。「猫を飼いたいとずっと思っていて。賃貸だと中々ペット可の物件がないので、その点も家を買いたいという気持ちを後押ししました」。当初は新築で検討していましたが、たまたま訪れた友人宅でリノベーション空間を体感し、中古マンションを買ってリノベーションするという選択肢を検討し始めたといいます。早速、物件探しからワンストップで依頼できるリノベ会社に絞り何社かのイベントに参加、そんな中で出会ったのがnuリノベーション(以下、nu)でした。「初回の個別セミナーを担当してくださったアドバイザーの方が、私たちの家づくりに対する想いを言葉にできない部分までうまく汲み取ってくれて。リノベーションは担当者とのフィーリングが大事だと思っていましたが、まさにその通りで『この人と家づくりがしたい!』と感じました」と奥様。担当アドバイザーはA夫妻にいくつかの物件をご紹介。その中の一つに、当初の予算を少しオーバーするものの職場までアクセスがよく、街の雰囲気もお二人の空気感にぴったりだと直感したとある物件がありました。「とりあえず行ってみようか」と訪れたこの物件が実は今のお住まいで、マンション自体の雰囲気もさることながら落ち着いた周辺環境も魅力的で、思い切って購入を決断したといいます。「全体の予算感やスケジュールの段取りなど、アドバイザーさんがちょうどいいリード感でサポートしてくれて。私たちが住まいに求めるものやこれからのライフプランなどにも踏み込んで提案をしてもらえたことで、購入を思い切ることができました」と微笑むご主人。「歩いて行ける範囲に大きなショッピングモールがあったり、家の周りには昔ながらの美味しいお弁当屋さんやレストランがあったり。街歩きには困らないよね」と奥様も続けます。
心が豊かになる設計
デザイン打合せの中でA夫妻が特にこだわったのは、“生活のしやすさ”でした。「水回りが汚れていると気になるけど、掃除はあまり得意ではなくて。なるべく掃除する箇所を減らす工夫をしました」と話す奥様。例えば、トイレはタンクレスを採用しましたが、トイレ内に手洗い器は設けず正面にある洗面室を兼用することでお掃除ポイントを一つ削減。洗面室はアクセスのしやすさを重視して扉をつけないセミオープン仕様としました。実は、以前住んでいた家で最も多かったのが朝の身支度がバッティングすることによるケンカだったというお二人。そのため、この家ではご主人が洗面台を使っていても奥様が身支度を進められるよう、洗面室内にカウンターを造作しました。また、扉を付けない仕様は寝室に併設したWICにも。「物が収まりきらないことでストレスを感じたくなかったので、収納はなるべく多く取りました。その分寝室はミニマムになりましたが、WICに扉をつけなかったのでWICの奥行き分、寝室を広く感じられています」。そんな寝室の天井にはシーリングソケットに取り付けるタイプのプロジェクターが。お部屋の中央に取り付けるのがセオリーであるシーリングソケットを、投影距離に合わせて予め奥の壁寄りに設定したといいます。「寝る前はベッドに横になって海外ドラマやライブ映像を見るんですが、これが想像以上に良くて。まるでプライベートの映画館にいるようで幸せを感じます。リノベーションでやってよかったことの一つですね」。徹底的にストレスフリーを追求したことで生まれた、心の豊かさを育む時間。取材中、実際に壁に映像を投影してくださったご主人の横顔からは満足感が溢れ出ていて、こちらまで幸せな気持ちが伝播してくるようでした。
明と暗のいいとこ取り
明るく開放的なLDKにしたかったというご主人と、シックな雰囲気がお好きな奥様。素材や色味の選択の際は、お二人にとってのちょうどいいバランスを追求しました。空間を構成するのは、優しい木目が特徴的なオーク。キッチンやフローリングなど、気に入ったものを選び取っていくと自然とオーク材で揃っていったといいます。そんな木の温かな質感を引き締めるのは、壁に取り入れたさりげないグレー。リビングの一面にはさらにワントーン落としたグレークロスを取り入れることで、LDK全体が上品な空気感を纏った空間に。「壁はグレー、天井は白としたことで明るすぎず暗すぎずのいいとこ取りができました。また、マンション周辺が開けているので昼間はたっぷり陽が入って気持ちがよく、夜は夜景がすごく綺麗で。メイン照明を消して間接照明だけを付けると、また違った表情になるんですよ。私たちの間では“バーモード”と呼んでいます(笑)」と冗談まじりに教えてくださいました。
また、空間を彩る家具はリノベーションを機にほとんど全て新調したというA夫妻。「昔から北欧家具への憧れは漠然とありましたが、組み合わせのセンスには自信がなくて…。奥さんがインスタグラムやネットから情報を集めて提案をしてくれたので、最終的には二人で納得したアイテムを揃えることができました」とご主人。それまではインテリアに強いこだわりはなくネットで購入した家具がほとんどだったというA夫妻ですが、リノベーションをきっかけにショップに足を運び、実物に触れながらインテリアを選ぶ楽しみを知ったといいます。中でもお気に入りは?と尋ねると、お二人揃って「ソファ!」という答えが。リビングに悠然と佇む『ハンス・J・ウェグナー』の3シーターソファはショップで一目惚れした一品で、ファブリッククッションをオークのフレームが包み込むデザイン。ダイニング側から見た背面のシルエットにも北欧家具ならではの洗練された雰囲気を感じます。
幸せの3条件
この家を語る上で外せないもう一人の住人は、一ヶ月前にやってきた茶トラ猫の女の子、ジェマ。「もともと猫を飼うつもりでしたが、こんなに早く出会えると思っていなかったのでこれもまた運命ですね。保護猫だったこの子を引き取る際はnuさんのHPに掲載されている我が家の施工事例ページのURLを送って『猫用の家を造って待っています!』という熱い想いをアピールしました(笑)」。その言葉通り、この家にはジェマが安心して暮らせるたくさんの仕掛けが施されています。玄関正面にあるおウチ型のトンネルを潜ると、そこには猫用トイレがすっぽりと収まっていて、プッシュ式で扉が開くのでお手入れもしやすく、いつも清潔な状態を保つことができます。また、壁にあけた猫穴を通れば、玄関横のワークスペース以外は全て自由に行き来ができるんだとか。
「かわいいでしょ!」と、この家でのびのびと暮らすジェマの写真やムービーを見せてくださったA夫妻。家の居心地が良くなったことと家族が加わったことも相まって「家にいる時間が増えたね」と顔を見合わせてにっこり。居心地のいい家、豊かな周辺環境、ジェマとの暮らし。3つ揃った幸せの条件に包まれて、二人と一匹の穏やかな時間がこれからも続いていくことでしょう。