
モールテックスやモルタルの中に、木のあたたかみが点在するワンルーム。余計なものがなく統一された静かな空間には、内面に向き合うマインドフルネスな暮らしがありました。
ふと何かを変えたい
「ふと何かを変えたいと思ったことがあったんです。直近で結婚の予定もなく、思い切って住まいを変えてみるのもありかなと。それに、賃貸の家賃って掛け捨てなので、払い続けることに抵抗があって。もういっそ、購入しようかなって」。
そう話すのは、この家に住むNさん。以前のデザイナーズ賃貸での暮らしを通して、こだわりの建築物に暮らす喜びを感じるようになり、家具への興味も増したと言います。
「せっかくなら、自分の好きな空間に住みたいじゃないですか。でも、近年の不動産バブルで新築は価格が跳ね上がっているし、新築を買っても気に入らない部分があったらリノベするかもしれない。だったら、はじめからリノベにしようと」と、Nさんは振り返ります。
リノベ経験者が書いた会社比較ブログなどを読み、nuリノベーション(以下nu)を含む4社を候補に挙げたNさん。各社に相談に行ったところ、営業スタッフの大きな差に気づいたと言います。
「nuさん以外の会社は、割と自社システムの説明に終始していて。ちょっとシステマチックだったんですよね。一方、nuのアドバイザーさんは僕の話をしっかり聞いてくれて、1対1で丁寧にコミュニケーションを取ってくれる安心感がありました。それと、nuさんは物件探しから引渡しまでワンストップで一貫してお任せできるので、スムーズそうだなと。そもそもデザイン面で一番好みだったのはnuさんでしたし、僕の強いこだわりも叶えてくれる頼もしさを感じたので、早々にスパッとnuさんに決めましたね」
こうして、アドバイザーと中古マンション探しをはじめたNさん。以前の住まいと同じ沿線、かつ通勤が1時間以内と条件を定め、最終的に5軒を内見しました。この築40年の物件は内見当時まだ以前の住人が住んでおり、この家での生活をリアルに感じられたことが大きかったそう。家の中も綺麗にされていて、大切に住まわれている様子に安心感を覚えたNさん。窓からの日の入り方も綺麗なこと、坂が多い街ながら駅までの道の勾配が許容範囲だったことも決め手となり、納得して購入に踏み切ったと言います。
「物件の詳細は自分で調べればいいんですけど、忙しい毎日の中では、しっかり時間を取ることが難しくて。nuのアドバイザーさんが物件情報を事前に細かく調べてくれて、管理状況や修繕積立金の状況も見てくれて。『ここは良いですね』『ここはやめましょう』と善し悪しをハッキリ言ってくれたこともありがたかったです。やっぱり専門家だなって。何より、こちらからの連絡に対してレスポンスが本当に早い。例えすぐに明確な回答をできなくても、一旦『〇日までにご回答します』と返事をくださいましたし。特に物件探しは時間の勝負なので、すごく安心できましたね」。
静かな世界
家ではとにかくゆっくり暮らしたいー。多忙な毎日の中でそう願っていたNさんは、抜け感のある広々ワンルームで、情報量が少なく全体の印象が統一されている内装を希望しました。
そんなNさんに対してデザイナーは『ハレとケ』というコンセプトをご提案。忙しい日常を忘れ、洗練された“非日常”を愉しめる空間をイメージして空間をつくりあげていきました。
「以前の賃貸はベニヤ張りの壁で、家具もチークやウォールナットなど色の濃い樹種が混在していました。それはそれで面白みがあったんですが、新居は木材を明るい色味に揃えてみたいなと。それに、今回色々なリノベ会社の事例を見て、リノベって下手するとDIY感が出ちゃうことに気づいて。色んな素材を混ぜるとよりDIY感が強くなるけれど、それは今の僕の好みではないので、その点でも素材の種類を絞りたいと思いました」。
そこで、内装の基調はグレーで、造作収納や家具で木のあたたかみを取り入れることに。躯体現しの天井やモールテックスの床で構成したワンルームに、白味のあるバーチ材で造作収納をあつらえました。
リビング・ダイニングは、<decoる>で購入したマレンコのソファ、カールハンセン&サンのテーブル、持ち込み予定のコーヒーテーブルやYチェアなどを置く前提で設計。生活感を出さないためにキッチンは個室型にして、ダイニング側の壁に壁面収納と観音扉を設置しました。コーヒーグッズをディスプレイでき、キッチン・ダイニング間の配膳もラクに。「友人が来たときにも、料理や飲み物の受け渡しに便利です」と、Nさんは話します。
キッチンはステンレス素材で統一し、天板の高さはNさんの身長に合わせてH900mmと高めで造作。個室型でリビングからの視線を気にしないで済むため、調理器具の出し入れがしやすいオープン収納を選択しました。また、水や油がはねてもサッと拭けるよう、床は塩ビタイルを採用し、暮らし心地を追求しました。
そして、この家の主役とも言えるのが、玄関とワンルームを隔てる大型の木製収納棚。洋服を均一間隔で掛けたり、バッグやバンカーズボックス(収納箱)を置いたりするだけで、ショップのように洗練された一画に。あえて背板のないデザインで造作したことで、洋服や収納ボックスが程よく視線を通すパーテーション代わりに。見せたくないモノの収納用に、別で扉付きの納戸もつくりました。
「設計デザイナーさんのアイデアで、ブラインドを窓枠を超えて壁一面に付けてもらったのも良かったですね。いかにも『窓を隠しています』って感じがなく、意匠の一部になってくれて。それと、リビング壁に長尺のカウンターを造作してもらったのも良かった。本当は本棚をつくってもらおうと思ったのですが、それだと高さが出てしまって空間のスッキリ感が無くなってしまう。それで『いっそのこと、テレビ下のカウンターをのばして本も置けるようにしませんか?」と設計デザイナーさんが提案してくれて。インターネットのルーターとかも収納できて、すごく便利ですよ」とNさんは微笑みます。
カウンターの長さは、なんと全長7m超。テレビ下からベッドエリアまで長さを確保したことでヘッドボードとしての役割も果たし、多機能かつアイコニックな要素として活躍しています。
そのほか、滞在時間が短いトイレ・洗面室・浴室は既製品を使ってコストコントロールを徹底しました。
内なる愉しさ
こうして、様々なこだわりを詰め込んで完成したN邸。余計なものをそぎ落としたワンルームは、実面積67.20㎡よりもずっと広く感じられます。ダイニングテーブル・ソファ・ワークデスク・ベッドが空間を緩やかにゾーニングしていて、それぞれのエリアに役割を与えています。
賃貸時代は家に合わせて暮らしていましたが、今はストレスフリーに。使いやすいキッチンのおかげで自炊の頻度も上がり、食費の節約も叶ったと言います。この空間にはあえて余白と可変性を残しているので、今後造作棚を追加したり、心地よい程度の雑然さを足したりしていく可能性もあるそうです。
「とにかく、専門家の皆さんと一緒につくれたのが良かったですね。自分が求めているものだけでつくっていたら、たぶん今幸せに暮らせていないと思います。プロの視点や意見を取り入れながら形にしていけたからこそ、今の幸せがあるなと」。
コーヒーを淹れてダイニングテーブルでぼんやりしているとき、夜にスピーカーで音楽を流しながら雑誌を広げる時間が、最高に至福。忙しい日常や仕事をすべて忘れて頭の中をからっぽにする時間は、まさにマインドフルネスだと言います。
「これからは、『消費』ではなく『生活』を愉しみたいですね。以前はたくさん店がある賑やかな街に住んでいたので、街に振り回されながら消費する暮らしをしていましたが、今は落ち着いた街ということもあるし、何より家に居る時間が増えたので、自分に必要なものは何かを考えるようになりました。これからは、料理にせよ何にせよ、この空間での暮らしを愉しんでいきたい。環境に与えられたものではなく、内的な愉しさを見出していきたいですね」
…何かを変えたい、その気持ちから始まったNさんのリノベーション。どうやら、変わったのは家と暮らしだけではないようです。
Interview & text 安藤小百合