ワークスペースのコンクリートブロック、ブラックの格子、モルタルのキッチン腰壁…。工業的で男らしい雰囲気を醸し出しながらも、どこか繊細さが感じられる”industrial” なお部屋からお二人の新しい暮らしが始まります。
プライオリティの探求
埼玉県草加市。賑やかな駅前を通り抜け、住宅街に茂る青々とした木々を横目に歩いていくとH さんのお宅が見えてきます。ご主人はシステムエンジニア、奥様はイラストレーターのお仕事をされています。インドア派というお二人は家にいる時間が長いため、お部屋の居心地の良さに対するプライオリティは高め。以前住んでいた世田谷区の賃貸も十分な広さがありましたが、奥様が子供を授かった事をきっかけに「もっと広々とした空間でより自分達らしく暮らしたい」と考え始めたのだそう。今より広めの賃貸に住み替える、マンションを買うなど暮らし方について悩んでいたH 夫妻。そんな時不動産に詳しい奥様の友人が親身に相談に乗ってくれたと言います。「会社のお昼休みに資産や不動産について色々教えてくれて、リノベーションについてはその時に知りました。」と奥様。ご友人のアドバイスも参考にしながら希望の予算内で一番自分達らしい家を手に入れられる方法を考えた結果、中古物件を買ってリノベーションをするという答えにたどり着きました。リノベーションをすると決めたらまずは会社探しです。リノベーション情報サイト「リノベりす」でリノベ会社診断というものを見つけ、物件探しからアフターサービスまでワンストップでお願いできる会社を検索しました。診断の結果、希望する条件にヒットしたのは3 社。その中でも当時奥様が勤めていた会社がnu オフィスの目の前にあったことから、仕事帰りに「個別無料相談会」に参加してみることに。リノベーションについて雑誌で少しずつ情報を集めていたお二人でしたが、nu アドバイザーの分かりやすいプレゼンを聞いてリノベーションに対する興味がより高まったそう。またゆくゆくは” 物件を賃貸に出したい” ” 子供部屋をつくりたい” など自分達の将来のことに対しても、熱心に聞き入ってくれたnu アドバイザーの姿勢に魅力を感じnu を選びました。そんなH 夫妻の物件探しの条件は、まずお互いの職場がある六本木と大宮から50 分以内の場所にあること。また駅から徒歩10 分以内というのも条件の一つでした。2~3 ヶ月物件を探し、最終的に条件に合う物件を2件現在住まわれている草加市に見つけたお二人。どちらも駅近でしたが、広さと物件価格から考え、最寄り駅から徒歩5分、築14年、78.10㎡の物件を選びました。
わける×つながる
光が部屋全体に抜けるような開放的な空間にしたいと考えていたお二人。しかし、お部屋のテイストはなかなか決められなかったといいます。まずは自分達の好きな物、素材、お部屋の写真をシートにまとめデザイナーに見てもらうことに。そのシートからお二人のイメージを汲み取りデザイナーが提案したのは「industrial」というコンセプト。お二人が作成したシートにはブラックの内窓、鉄、コンクリートブロックなど男らしく工業的な要素が多くまとめられていたため、このコンセプトがH夫妻にぴったりだと考えました。そして完成したお宅は、ほぼ間仕切りや段差のない開放的な1LDK+WIC。塗装したコンクリート現しの天井、床に無垢オークを張り込んだお部屋にはラフな雰囲気が漂います。そして約78㎡のお部屋の中心にあるのは、ブラックの格子とガラスで造作した壁が工業的な雰囲気を醸し出すワークスペース。ガラスを合わせたおかげでワークスペースには日差しがたっぷりと差し込みます。「自分だけの篭れるスペースを作りたい!」という想いが強かったご主人。一方「出来るだけ個室は設けず、つながりのある空間にしたい!」というのが奥様の希望でした。そんな二人にデザイナーが提案したのは、ガラス張りのワークスペース。空間を仕切り篭れる個室を設けながらも、ガラスを用いることで開放感をプラス。お二人両方の意見を取り入れたい!というデザイナーの想いから生まれた提案でした。このアイディアにお二人は大満足!ワークスペースの壁はグレーで塗装し、木でデスクと棚を造作。お仕事柄2台のモニターを使うご主人の為にデスクの横幅は広めに取り170cmに調整。ご主人にぴったりのワークスペースが完成しました。ここは仕事以外にも、趣味を楽しむ部屋として活用しているご主人。お気に入りのアイテムを飾り、休日は篭って本を読むのが至福の時間だそう。「キッチンで料理をしながらいつもガラス越しにワークスペースで仕事をする夫の気配が感じられるので、安心できるんです。デザイナーの方が上手く私たちの想いをカタチにしてくれました。」と奥様。そんな奥様は大のお料理好き。家にいるほとんどの時間、キッチンで過ごすことが多いのだそう。「毎日お料理をするので使いやすいキッチンが良いけど、見た目はかっこ良くしたい!」そんな要望を受けデザイナーが提案したのは、幅240cmの広々としたシステムキッチンに腰壁をモルタルでつくったプラン。機能性を重視しつつ、リビング側からは造作キッチンのように見えるようデザイン性もプラスしました。また光や風を感じながら気持ちよくお料理ができるようにオープンキッチンに。この広々と快適に使えるキッチンにしてから、ご主人も熱心にお料理や奥様のお手伝いをするようになったのだそう。そんなご主人のお気に入りポイントはワークスペースの他にもう一つ。それはキッチン、WIC、廊下をひとつながりにして回遊性をもたせたこと。「”部屋は廊下を挟んで両側に設ける”という考えを持っていたので、WICを個室化せずあえて廊下に設けるという斬新なアイディアに最初は驚きました!でも、実際暮らしてみると生活動線がとてもスムーズだし、空間にムダがないのでこれにして大正解です!」とご主人。朝はダイニングテーブルで朝食をとり、食器を流しに置いて、WICで着替えて、出かけるといった流れがとてもスムーズだそう。一方奥様のお気に入りは壁にホワイトタイルを貼った洗面スペース。「以前から愛用していた丸いミラーに合うように洗面をデザインしてもらいました。水栓もお掃除しやすいように壁付けにしたところもこだわりポイントです。」と奥様。タイルも目地の色も何十種類もの中から「一番ミラーが際立つものを」という想いで時間をかけて丁寧に選んだのだそう。男らしい雰囲気が漂う空間の中でも、ここだけはミラーに合わせて可愛らしいテイストにしたかった奥様。「毎日ここでお化粧すると、とっても気分があがるんです。」と嬉しそうに話してくれました。男らしいざっくりとした工業的なデザインの中には、丁寧で繊細なこだわりが隠れていました。
二人の“ 想い” 続く“ 未来”
リノベーション後初めて足を踏み入れた時、「明るい!」と思わず声に出してしまったというお二人。広々とした空間には光が全体に行き渡り、まさに「開放的なお部屋で暮らしたい」という想いが叶えられている、と実感したと言います。リノベーションをしてからというもの、居心地の良さにさらにインドア派になったというH夫妻。「”いつか賃貸に出す”つもりでリノベーションをしたのに、実際に住み始めると、ここまで自分達の暮らしに合った家を今は絶対に手放したくないという想いでいっぱいです!」と奥様。そんなお二人に「今一番幸せを感じる瞬間は?」と問いかけると「部屋を見渡せるこのソファでくつろぎながら、もうすぐ生まれる子供の話をしている時かな。最近は名前を考えていて“あこ”がいいかな?“ひなこ”がいいかな?なんて二人で話してます。」と照れながらも教えてくれました。いつもお互いの気配を感じられる、”industrial”な家。コンクリーブロックや、ブラックの内窓など男らしいざっくりとした雰囲気が漂いながらも、随所に繊細なこだわりが散りばめられていました。