自分の好きな要素だけを盛り込んだこの家で、好きな音楽を聞き、好きなお酒を嗜む。Jさんの嗜好を120%落とし込んだこの空間には、遊び心と気品が混ざり合った、ゆったりとした時間が流れていました。
ホームタウン
都内屈指の人気エリア、恵比寿。駅徒歩1分という好立地に佇むタイル貼りの趣深いマンションの一室に暮らすのが、この家の主人Jさんです。インテリアが好きで、かねてから家を買うのであれば中古マンションを買ってリノベーションをしたいと考えていたというJさんは、早速ネット検索で気になったいくつかのリノベ会社の個別セミナーに参加。施工事例やスタッフの雰囲気から、一番フィーリングが合いそうだと感じたのがnuリノベーション(以下、nu)だったといいます。「担当してくださったアドバイザーさんの対応がとても丁寧だったこと、推しの強いセールス色がなかったことも好印象でした。また、自分が家を買おうと思っているエリアにオフィスを構えていらっしゃるという点も、決め手の一つでしたね」。Jさんが物件探しの舞台に選んだのは、目黒・恵比寿エリア。職場から程近く、土地勘があったという理由に加え、「お酒がとても好きで、以前はよく恵比寿や麻布などで同僚と飲み歩いていました(笑)そのせいか、住んだことはないはずなのに、そのエリアがすっかりホームタウンという感覚で。自分の肌に馴染んだこの街で家を探そうと決めていました」と語ります。人気エリアということもあり、物件探し中には目星をつけていたお部屋がタッチの差で売れてしまったことも。そんな中、タイミングを同じくして販売に出されていた今のお住まいと運命的な出会いを果たします。「理想としていた真四角の物件で、一目見てリノベーションがしやすそうだと感じました。元々買おうとしていた物件と比べてもひと回り広く、結果的によりリノベーションが楽しめる箱を購入できました」と嬉しそうに話します。こうして、約57㎡・南向きの暖かな陽が差し込むこのお部屋での、Jさんのリノベーションが始まりました。
心の通じる距離感
コンクリートの質感やシックな色をふんだんに取り入れたハードな箱を、アートやグリーン、こだわりのインテリアが彩る、まるで隠れ家バーのようなJ邸。せっかくリノベーションするのであれば、とことん理想を追求しようと決めていたとJさんはいいます。「設計・デザインの打合せはとても楽しかったです。でも私は好みがうるさいし細かいしで、デザイナーさんは大変だったんじゃないかな?(笑)」と、はにかみながら当時を振り返るJさん。担当デザイナーとはざっくばらんに意見を言い合える距離感だったようで、「こちらが希望した内容でも、使い勝手やデザイン的にそれがベストではない場合は、デザイナーさんがじっくり検証した上でより良くなる方法を提案してくれて。私自身、色々なデザインを見すぎて迷走しかけていた時期もあったので、本来のイメージからブレないように舵取りをしてもらえて、安心して家づくりを楽しめました」。そんな2人の関係性が垣間見えるのが、キッチンとパントリーのレイアウト。ここはお料理が好きだというJさんが最もこだわった空間でもありました。元々“対面キッチン+バックカウンター”のレイアウトに慣れていたというJさんは、今回のリノベーションでもそんなキッチンの配置をイメージしていましたが、担当デザイナーが提案したのはキッチン台の背面を壁とし、食器や家電は全てパントリーに収納するというレイアウト。そうするとお料理中の動線が変わることから、使い勝手と空間の見え方については時間をかけて悩んだんだそう。「Ⅱ型キッチンの場合の図面も書いていただきましたが、デザイナーさんが『生活感はとことん隠した方がこの部屋の雰囲気にあっている』と提案してくれて、最終的にこのレイアウトに落ち着きました。おかげでキッチンはスッキリ見えますし、使い勝手も慣れてしまえば全く問題ありません」。ステンレス天板のシンプルなアイランドキッチンと、吊り棚に飾られた酒瓶やグラス…。その背景には、モノクロのポートレート作品が映えるアクセントウォールを設えました。厳選された要素のみを空間に置くことで、生活感を感じさせない洗練されたLDKに仕上がっています。
キッチン背面のアクセントウォールには、たくさんのサンプルの中から色味や質感にこだわって選んだ濃いネイビーのポーターズペイントを塗装しました。キッチンの床に採用したグレーの濃淡が美しい20cm角の磁器質タイルは、エントランスからキッチン・ダイニングスペースまでをひと続きに張り込んだお気に入りの素材だといい、それぞれの素材が持つムラ感が、ハードな空間をより奥行き深く演出しています。一方で、リビングにはラフな木目のオークの床材を採用。「初めは全面タイルでもいいというくらいこのタイルが気に入っていたんですが、コストバランスなどの関係でフローリングと張り分けました。メリハリが出て、これはこれで気に入っています」とJさん。
当初は家具もインダストリアルテイストで新調することを視野に入れていましたが、最終的には元々持っていた家具をそのまま使っているんだとか。そのほとんどが、時間をかけて集めてきたというチーク材やオーク材のアンティーク家具で、使い込まれた木ならではの落ち着いた風合いが空間に馴染んでいます。ダイニングチェアは、購入した際に座面だけ張り替えたりと少しずつリメイクも加えられていて、一つ一つの家具との出会いを懐かしそうに語るJさんからは、家具への愛着がひしひしと伝わってきます。「置いてみたらしっくりきて」という言葉通り、ハードな素材で構成された空間とアンティーク家具が共鳴し合い、J邸特有のゆったりとした空気を生み出していました。LDKと寝室をつなぐ内窓越しにのぞくポスターやペンダントライトも例に漏れずアンティークの品だといい、「ポートレートやポスターは昔から好きで、リノベーションしたら絶対飾りたいと思っていたんです。これからも、やりすぎない程度に数を増やしていきたいです」と楽しそうに語ってくださいました。
みんなの“行きつけ”
リノベーション後、この家を訪れた友人は声を揃えて「お店みたい!」と驚いていたそう。職場から近いこともあり、「夜中にいきなり同僚が転がり込んでくることもある」というほど、みんなの行きつけとなりつつあるJさん宅。最近は仕事終わりに、そんな気の置けない友人数人で集まり、家飲みを楽しんでいるといいます。TVボード横に飾られた一枚の書は、そんな家飲み仲間の一人で、趣味で書を嗜んでいるというご友人から貰い受けたものなんだとか。力強く書かれた「花」の周りを白い蝶が舞う書道アートで、「趣味というか、もはやセミプロですよね(笑)自宅に置くには大きくて邪魔だからと私にくれたんですが、なんかいいなって。気に入ってます」とにっこり。
自然と同僚が集まってきてしまうというのにも納得がいくような、心の落ち着くJさんの物腰とこの空間。好きなモノを好きなだけ楽しむ、大人の余裕に満ちたこの空間で、Jさんの日常はこれからも回り続けていきます。