思いきって1ROOMの床全面に敷いたモルタル。造作の靴棚やモルタルの壁がシンプルで無機質な空間をゆるやかに仕切ります。グリーンやお気に入りのインテリアをオリジナルのモルタルポットに詰め込んだようなお部屋が完成しました。
やすらぎの街で見た眺望
Kさんのお宅があるのは東京都江東区。川が流れるのどかな街の中にあります。以前はオーストラリアに住んでいたKさん。2年前に帰国しその後は1年程賃貸に住んでいました。しかし、このまま賃貸にお金を払い続けるのはもったいないし、なにより年齢のことも考え、そろそろ落ち着いて暮らしたいと感じるようになりました。希望していた予算内でより自分らしい家に暮らせる方法を探し、気になったのはマンションを居住者全員で創り上げるコーポラティブハウスやリノベーション済み物件、そして中古物件を買ってリノベーションを行う3つ。リノベーション済み物件は内装のキレイさは申し分ないですが自分らしさを100%反映することは難しく、一方コーポラティブハウスだと計画から居住まで2年以上かかってしまいます。それならと中古物件を買ってリノベーションすることを決めました。まず手始めにネットで「リノベーション」と検索し、たまたまヒットしたnuリノベーションのHPを開いたKさん。施工事例のページを一目見た瞬間からnuのデザイン性に惹かれると同時に、その数の多さから安心感も感じられました。その後はすぐに「個別無料相談会」に参加。相談会の話の中でnuならワンストップサービスで物件探しからアフターサービスまで一括して任せられることが決め手になりnuを選びました。会社が決まれば次はいよいよ物件探しです。物件探しにおいて譲れなかった条件は3つ。1つ目に日当りが良く、お部屋からの見晴らしが良いということ。2つ目にゆったりとした雰囲気が漂う清澄白河にあるということ。そして3つ目に間取りは1ROOMにしたいということから、壁を壊せるようラーメン構造の物件が良いということでした。Kさんはこの3つの条件をアドバイザーに伝え当てはまる物件を20件ほど探し出してもらいました。その中で出会ったのは築32年、71.28㎡のスッキリとした白い外観が印象的な物件。場所は希望していた清澄白河で、マンションの前には川が流れていて視界を遮る物がなかったため眺めも抜群でした。当初は購入するか非常に悩み、全部で3回も内見に行きましたが「こんなに迷うのはこの家に惹かれているという証拠!ここ以上に良い家はきっと見つからない!」そう決心し購入を決めました。
シンプルの中に際立つディテー
「できるだけシンプルに」それがKさんの考え方。極力無駄なものは省き、部屋に置くのは選び抜かれた必要なものだけ。Kさんはその考え方をお部屋づくりにも活かしたいと思っていました。お部屋の凹凸や間仕切る壁は極力なくし、オープンな空間に。また床には質感が好みのモルタルを敷き、そこにグリーンをたっぷり置きたいと考えていました。そんなKさんにデザイナーが提案したのは「MORTAR POT(モルタルポット)」というコンセプト。モルタルで囲った空間にインテリアやグリーンがより一層映える、ギャラリーのようなお部屋をイメージしました。「初めて図面を見た時はびっくりしたけど、その一方で嬉しいサプライズでした。だって『オープンな空間にしたい』と言ってみたものの、お風呂とトイレ以外仕切りがなく、本当に突き抜けるような開放感のあるデザインだったからです。デザイナーの方の思い切った提案がすごく気に入りました。」そのデザインをもとに完成したのは約70㎡の床全面にモルタルを敷いた1ROOM。男性らしい無機質な雰囲気が漂う中にも、グリーンやお花、そして明るい色使いが女性らしさをプラスしています。玄関に足を踏み入れるとまず目に入るのは木の造作靴棚。扉に取手はつけず、押して開けるタイプにすることでよりシンプルな印象に。また靴棚の部分だけモルタルで床を3cm上げ、その上に棚をON。こうすることで地面との間に余白ができ、まるで靴棚が浮いているかのような軽さが演出されます。その右手にある引き戸の先には、洗面スペースと浴室を合わせたオープンなバスルーム。広いバスタブでゆったりとバスタイムを楽しみたいという思いから、浴槽は造作しKさんのお好みの広さに。全面には丸いホワイトの磁器質タイルを張り込んで自分だけのくつろぎ空間をつくり上げました。また引き戸はドア枠や取っ手など凹凸になるものは一切付けず、指をかけて戸を引くようなシンプルなデザインになっています。ダイニングとモルタルの壁で仕切ったWICは、壁の上部に間接照明を埋め込みました。「部屋の中心にあるWICの照明を付けると、柔らかい光が部屋全体に行き渡ってとても落ち着けるんです。」とKさん。普段はこの間接照明だけをつけて雰囲気を楽しみます。ゆったりと掛けられた服の中から、今日の一枚を選んでリビングへ。窓から入る風がたくさんのグリーンやお花を揺らす風景はまるで森の中にいるような気持ちにさせてくれます。「グリーンは友人がこの部屋に合うように選んでくれたんですよ。鉢も床とお揃いでモルタルにしました。」辺りを見渡すとダイニングテーブルやキッチンにも陶器に入った小さなグリーンが。この陶器、実はKさんのお手製。陶芸教室でレクチャーを受けながら、少しずつ作品を増やしています。毎朝コーヒーを淹れるというキッチンのデザインはKさんが最後まで迷ったポイント。「アイアンの太さ、タイルの形など細かいディテールがなかなか決まらなくて…。デザイナーの方からも色々提案してくれたおかげで今の形に落ち着きました。時間をかけた分本当にお気に入りのデザインです!」最終的に選んだのは、ステンレスの天板に、華奢なブラックのアイアンを合わせたスタイル。壁にはヘキサゴンのホワイトタイルを目線の高さまで張り込みました。キッチンのアクセントになると同時に、油汚れもさっと掃除できるので実用性もバッチリです。床全面にモルタルを敷いた開放的な1ROOM。シンプルにまとめた空間からは、至る所にディテールに対する強いこだわりが感じられました。
時間をかける楽しさ
リノベーション後は家にいる時間が格段に増えたKさん。「最近友達とパジャマパーティーをして、一緒にお酒やお料理を楽しみました。家にいる時間が本当に自分にとって心地良いから、自然とお部屋で過ごす時間が増えるんだと思います。」1人でいるときは、リビングのソファでブランケットにくるまって映画を楽しむのが至福の時間です。そんなKさんが今一番HAPPYを感じる瞬間は「朝の時間」。以前まで朝というのはベットから飛び起き、顔を洗って、身支度をするというKさんにとっては「忙しい時間」でしかありませんでした。しかしリノベーション後は朝の時間が楽しみに。「早く起きて、まず川沿いをランニングするんです。帰って来たら、朝食を作りちゃんとイスに座って食べる。一つ一つの作業を丁寧にすることで、なんだかココロが満たされたような気持ちになるんです。」とKさん。自分で選び作りあげた空間を大切に使おうという気持ちが1つ1つの動作を丁寧にさせ、ライフスタイルまで変えていきます。見渡す限りモルタルが広がる1ROOM。そのシンプルなモルタルポットの中には、Kさんの“こだわり”がたっぷり詰め込まれています。インテリア、食器、グリーン…ひとつひとつをじっくり手に取って見たくなるような丁寧な暮らしのキホンが散りばめられていました。