
アールで縁取られたダウンフロア、心地よい生活感で彩られたキッチンのニッチ収納。“曖昧さ”から始まった家づくりが最終的に迎えた、2人らしい家づくりの最適解とは?
憧れが見えた
「ダウンフロアのあるお宅の事例を目にしたとき、床に座ってくつろぐ生活が具体的にイメージできて、これを私たちの家でも実現できたらいいなと思いました」。そう語るのは、中古マンションを購入し、リノベーションをして暮らすIご夫妻。
もともとご主人の勤務先が全国転勤であったことから家を持つことは考えていなかったそうですが、転職をきっかけに生活の拠点が東京となったことで、家を購入することが自然と選択肢にあがってきました。
土地勘のない東京での物件探しは大変だったと言いますが、広さや価格、交通利便性などの現実的な条件と、都会的というよりは落ち着いた環境を求めてエリアを選定。約10軒の内見を経て、この物件と巡り合ったのだそう。
「春にはやわらかな風が入ってきて、小鳥のさえずりにも癒されています」というご主人の言葉通り、取材中にも時折可愛らしいさえずりが聞こえる I 邸。窓からは見渡す限りの青空が広がり、都心にいることを忘れてしまうような心地よさに包まれています。
当初は別の会社でリノベーションを進める予定だった I 夫妻ですが、打合せが始まると不安に思うことがあったそう。
「リノベーションの初回打合せで、どのメーカーのキッチンにするのかなどの具体的な話から始まったので、私たちのイメージしていた家づくりと、なんか違うなと感じて。そもそもこの家でどんな時間を過ごしたいか、というようなコンセプトから空間をつくっていきたいと思っていたんです。このまま進めたら、理想とズレた空間になっ てしまう気がして」。
そこで急遽リノベ会社を探し直す中で候補に挙がったのが nuリノベーション(以下、nu)。スケジュールがタイトで断られることもあった中で、「大丈夫です、 任せてください!」と笑顔で対応してくれたアドバイザーの姿が印象に残ったと言います。
「不動産はお願いしていなかったのに、ローンのことまでセカンドオピニオンとして相談に乗ってくれて。 HPで施工事例もたくさん見ていたので、施工実績の多さも信頼感に繋がりました」と、声を揃えるお二人。
中でも nu に決める最大のきっかけとなったのが、冒頭で触れた “ダウンフロアの施工事例” との出合いだったそう。
「nu さんの『antique× ダウンフロア』という事例を見て、こういう空間で暮らしたい、と直感的に思いました。憧れの暮らしがリアルにイメージできたのは、大きな決め手になりました」 。
憧れの暮らしの一片を見つけた I 夫妻。その憧れをカタチにするために、nu との家づくりがいよいよスタートします。
曖昧から始まる家づくり
「リラックスできる空間にしたいというイメージはあったものの、ダウンフロアをつくりたいということ以外は具体的なイメージは何も決まっていなかったんです」と、当時を振り返るIさん。
空間全体のイメージを固めるためにネットや雑誌で施工事例を探す中で、Youtubeで目にしたとあるデンマーク人女性の自邸に惹かれたと言います。
「壁一面がニッチ収納になっているお宅で、壁自体のデザインはシンプルなんですが、そこに置かれたキッチンツールや食材のストックなどの “生活感”が心地よくて。変に飾らずに、ありのままを受け入れて暮らしているように感じられたんです」と、奥様。
動画のお宅はニッチ周りを白の塗装で仕上げていましたが、I 邸ではメンテナンス性を考慮してタイルを採用。7.5cm角のマットホワイトという条件でたくさんのサンプルを取り寄せて、最終的にキッチンと洗面の壁面に同じタイルを採用しました。
「ニッチの奥行きや高さはタイルの割り付けに合わせる必要があるので、実際のタイルを並べてグラスを仕舞う感じをシミュレー ションしたりして、何枚分がちょうど良いかを検証しました」。
こうして検証を重ねたニッチは当初のイメージに近く、奥様の手がしっかり届く実用的な高さになっていて、レンジフードの高さもこの割り付けに合わせて設定されています。
生活感を自然に受け止めつつ、ガラスやステンレスなど置くものの素材感を揃えることで統一感が生まれているニッチ収納。
「買い物に出かけた時も “これをニッチに置くとどうかな?”と話したりしています」 と、笑顔で教えてくれたご主人の言葉からも、お二人が思い描いた“生活感を楽しめる空間”がしっかりとカタチになっている様子が伺えます。
洗面スペースも、こだわりの詰まった場所のひとつ。二人が並んで作業できるよう約120cmの横幅を確保し、カウンターキャビネットを造らず壁にボウルを直付けにしたのは、ご主人のこだわりだったそう。
「もう少し小ぶりな方が雰囲気が良いかなと思ったんですが、実際に使うイメージをしたら、やっぱり利便性も大切だねとなって。実際生活してみると、すごく使いやすくて気に入っています」とお二人。
収納が限られている分、タイル一枚分壁を前に張り出させて、ちょっとしたものが置ける場所を確保。
「洗面もそうですが、玄関やLDK など、家族が共有で使うスペースはなるべく広く取ろうと決めていました」というお二人。 憧れだったというダウンフロアも約 7.2 畳が確保されており、家にいる時はだいたいここで過ごしているというほどお気に入り の空間になっているそう。
「ダウンフロアの広さは最後の最後まで調整していたけど、ちょうどいいサイズ感になったよね。先日も友人が子供を連れて遊びに来てくれたんですが、みんなで過ごしていても窮屈さを感じなかったし、しっかり広さを確保しておいて良かったねって話してたんです」。ダウンフロアの角はお二人の希望でアールに。直線的な空間の中にやわらかさを加えるだけでなく、ルーフバルコニーへの通路としての通りやすさも考えられたデザインです。
また、I 邸ではもう一箇所、寝室横の壁にもアールを取り入れています。これはデザイナーからの提案で、玄関から廊下にかけて通路幅が狭まるため、アールを取り入れることで柔らかな印象を加えました。
そのすぐそばには、悩みに悩んでセレクトしたという
お二人の “こんなふうに暮らしたい” というイメージと、その根底にある “暮らしの本質” を丁寧に紐解きながら、デザイナー と一緒にじっくりとつくり上げていった空間。その随所に、日々の暮らしを愉しむお二人の温かな思いが宿っています。
初めから完成を目指さない
インテリアやグリーン、ほどよく生活感のある日用品が並ぶキッチン周り。気取りすぎず、どこか肩の力が抜けたような心地よい空気が漂う I 邸は実はまだまだ完成系ではないそうで、ダイニングセットをはじめ、これから迎え入れたい家具がいくつもあるのだとか。
「ダウンフロアには、ゆくゆくソファやパーソナルチェアを足してもいいなと思っていて。それと、今回予算の関係で見送ったリビング収納を造作するのもありだよねって話していて…」と、今後も少しずつ空間に変化を加えながらこの家での暮らしを楽しんでいきたいと話すお二人。「最初に家全体のイメージを決めるのもいいけど、本当に気に入ったものだけを少しずつ揃えていく方が、私たちらしい空間になっていく気がするんです。リノベーションも、イメージがかっちりしていないからこそ、一つひとつの選択を楽しめたなって感じていて」。
「よく 2 人で『リノベの打合せ、楽しかったね』って話すんです。私は割と悩みやすいタイプなんですが、 デザイナーさんが毎回 根気強く付き合ってくれて。うまく言葉にできないイメージや思いなども上手に汲み取ってくれて、入居後もイメージしていた通りの空間になりました」と、奥様。 「たくさん悩むのは大変だったけど、ライフステージや趣向の変化に合わせてこれからも空間づくりを楽しみたいと思っています。nuさんは” 工事が終わったらおしまい” ではなく、今後も気軽に相談できるのが心強いです」と締めくくってくれました。
「初めから完成を目指さなくてもいい」。そんな 2 人の穏やかなスタンスでつくり上げた空間。
新しいインテリアが加わったり、 ライフスタイルが変化したり…。変わり続ける I 邸の暮らしは、まだ始まったばかりです。