玄関扉を開けると同時に目に飛び込むのは、回遊性抜群の開放的な空間と洗練されたデザインの造作洗面台。緻密に計算された“居心地の良さ”に包まれて過ごすO邸を訪ねました。
妻の熱い思い
こちらまでHAPPYな気持ちにさせられる温かい笑顔が印象的なO夫妻が暮らすのは、1年前にフルリノベーションをした約83㎡の空間です。実はO夫妻、リノベーションにかける思いが夫婦で対照的だったそうで、「私は大学で建築を学んでいて、元々建物を見て回ったりするのが好きだったんです。だから家を買うなら絶対、自分の好きなように空間作りができるリノベーションがいい!と思っていて。結婚するタイミングで『家を買おう!』と主人を説得しました」と奥様。それに対しご主人は「僕はそういったことにはあまり興味がなかったので…(笑)」と控えめに笑います。
それでも奥様の熱い思いに背中を押され、リノベーション会社探しをスタートしたO夫妻。ネットやSNSで情報を収集し、数社に資料を請求。さらに気になった会社には実際に足を運び、担当者と直接会ってフィーリングを確かめていったといいます。
「“やるとなったら徹底的にやる”というのが僕のスタンスなので、会社選びや物件探しには積極的に参加しました」と話すご主人。nuリノベーション(以下、nu)に依頼することを決めたきっかけについて尋ねると、お二人揃って「人で選びました!」というアンサーが。「担当してくださったアドバイザーさんは、体格のいい見た目とは裏腹にとても物腰が柔らかい方で(笑)。話していて『この人なら信頼できる』と感じたんです」と当時を振り返ります。
その後始まった物件探しは「自分たちで徹底的に調べて、納得して選びたい」というO夫妻の思いもあり、まさに三人四脚。まず、お二人が条件に合う物件をリストアップし、その中からアドバイザーが管理状態の良し悪しやリノベとの相性を確認して、実際に内見する物件を絞り込んでいったといいます。そうして出会った今のご自宅は築24年・リフォーム歴が一度もない物件で、「内装に年季が入っていたからか、相場より少し価格が安かったんです。素人の私たちからすると買うべきかどうか判断できなかったですが、アドバイザーさんからの助言もあり、安心して購入を決断することができました」とご主人。
想像を超えたプラン
足を踏み入れてすぐに“普通とは違う”と感じさせるO邸のレイアウト。『この先にはどんな空間が広がっているんだろう』とワクワクさせられるような回遊性のある間取りは、初めからイメージしていたわけではなかったといいます。「プレゼンテーションでは、私たちの要望を落とし込んだスタンダードなAプラン、そこにデザイナーさんからの提案を加えたBプラン、発想を飛躍させたCプランといったように、バリエーションを持たせて提案してほしいとお願いしました」という奥様は、この物件でどんなことができるのかを様々な角度から検討した上で、本当にやりたいことを見極めたかったといいます。そんなO夫妻が選んだのは、提案されたプランの中でも一番捻りが効いていたというプランC。一目見て、個室やLDKの扉が廊下に面して並んでいるという一般的なレイアウトとの違いを感じたといいます。「どうせだったら自分たちにとって本当に使いやすい空間を追求したいと思って、思い切ってこの回遊的なプランにしました。家に入った瞬間に開放感を感じられて、とても気に入っています」と奥様。玄関の左右にはそれぞれご主人のワークスペースと土間収納を配置し、どちらもオープンな造りでありながら壁で絶妙にゾーニングすることで整った印象を演出。廊下だけでなく、ワークスペースからはWIC・脱衣室を通り抜けて、土間収納からはパントリーを抜けてLDKにアクセスできるという3つの動線を確保しました。
また、ワークスペースの左手側に配置した寝室は床を25cm上げた小上がりのような設えになっていて、「仕事中に腰掛けて休んだり、ゴロンと本を読んだりできるようにと提案していただいたんですが、これが大正解で」とご主人。釣りが趣味で、ルアーだけでも200個以上コレクションがあるというご主人は、ケースの中を整理したり古くなった釣り針を付け替えたりと細々した作業に没頭することもしばしば。そんな時に、この高すぎず低すぎすの段差がちょうどよく、今や釣具のお手入れの定位置となっているといいます。「約4Jのミニマムな空間で、かつ段差を設けた分天井が低くなってしまうので、圧迫感が出ないよう壁や扉をつけず厚めのカーテンで仕切りました。これも正解だったよね!」と奥様も笑顔で続けます。
玄関正面の造作洗面台も、奥様のこだわりが詰まった空間。ご実家も洗面台と脱衣室が分かれている造りだったという奥様は使い勝手の良さを実感していたこともあり、今回のリノベーションでも絶対に洗面台を廊下に配置したいと考えていたといいます。「ただ玄関正面に来る位置だったので、デザイナーさんから『生活感を出さずに綺麗な状態を維持するのは大変かも…』とアドバイスをいただいたんです。家族構成が変わったり…と今後のことを考えると確かに大変そうだと思い、脱衣室にも洗面台を設けました」と奥様。「サブの洗面台ができたことで、ここはインテリアとしても楽しむことができてお気に入りです。来客時のおもてなし空間としても活躍しています!」とにっこり。
そんな洗面台があるエントランス側の床にはグレーの塩ビタイルを敷き詰め、上り框や見切り材には真鍮を採用。照明やドアノブの素材感とリンクし、家全体の空気を引き締めます。一方LDの床には節のあるラフな木目のオーク材を張り、エントランス側とのメリハリを演出。木目の表情だけでなく、踏み心地や足触りも重要!というデザイナーからのアドバイスを受けて、一枚一枚裸足でサンプルを踏んで選んだといいます。
また、ガラス付きの扉と内窓で区切られたリビング横のフリースペースはライフスタイルの変化などを考慮して予め扉を2つ付け、部屋を増やせる造りに。「奥の部屋だけ暗くなってしまうのは嫌だったので、光が遮られないようにとにかくガラス面を多くして、光を内側に取り込めるようにしました」とご主人。
光を取り入れる工夫はLDKから土間に通じる導線にも。キッチンからパントリー、パントリーから土間への通路には扉をつけずカーテンで目隠しができるようになっており、カーテンを開け放つとエントランス側の窓から差し込む光がLDKまで届き、なんとも言えない開放感を演出しています。
風通しのいい時間
この取材の2週間前に結婚式を挙げたというお二人。最近は式やお引越しの準備でバタバタしていて、友人をまだあまり家に招けていないんだとか。「ちょうどこの後も友人が遊びに来るんですが、これからはもっと来客が増えると思うので、楽しみです」とお二人。
初めはあまりリノベーションに興味がなかったというご主人も、リノベ後のご自宅は自分専用の空間もあり、「居心地がいいです」と満足げな表情。「デザイン的な部分はよくわからないから、妻にお任せしていました。“おしゃれにしといて〜”って感じで(笑)。この人のセンスなら間違いないので」と、奥様に全幅の信頼を寄せるご主人。そんなお二人は山登りや美術館巡りが共通の趣味だそうで、思い出の品々やアート作品が家中に飾られ、お二人ならではのインテリアを形作っています。
一緒に楽しむ時間と、お互いを尊重して別々に楽しむ時間。計算し尽くされた回遊動線で繋がった風通しのいい空間には、これからも二人のとっておきの時間が流れていきます。