3年間スウェーデンで暮らした家族が、帰国して暮らす日本のお宅をリノベーション。家での暮らしをとことん楽しむスウェーデンの考え方のもと、丁寧に作り上げたお部屋のお話です。
生活をよくするデザイン
お仕事の都合で、約3年間スウェーデンに滞在していたNさん家族。渡航前、およそ10年前に購入して暮らしていたマンションを、帰国のタイミングでリノベーションしました。N家族が暮らしていたのは、スウェーデン南部のルンドという街。ルンド大学という北欧最大の大学があり、街に住む人はほとんどが学生か大学関係者なんだとか。そんなスウェーデンでの滞在前、Nさんたちが暮らしていたのが文京区にあるマンション。東西南に窓があり、光も風も存分に通り抜けるお部屋でした。新築当初の内装はダークブラウンを基調としたシックなテイスト。「内装に合わせたテイストでインテリアも揃えて。それはそれでよかったんですけど、私は当時から北欧のインテリアが好きだったので少しだけ悶々としていたんです(笑)」と奥様は話します。そんなお部屋から一度離れることになり、スウェーデンでNさん家族が住んだのは大学の学生寮。寮でありながらも、さすが北欧と思わせるようなすっきりとシンプルなデザインのお部屋で日々を過ごす中で、お2人はあることに気がつきました。それは真っ白な壁が想像以上にお部屋を明るく見せてくれるということ。曇りの日が多いスウェーデン。日照時間が短いという問題をデザインの力で解決しているのでした。対してダークトーンを基調としていたNさんの東京の家。物件として十分な採光がありながらも、それを生かしきれていないと感じるようになりました。明るく気持ちのいい北欧スタイルの部屋。日本でもそんなお部屋で暮らしたいと、2人はリノベーションを検討し始めました。
遠距離設計
nuリノベーション(以下、nu)との出会いは、奥様がお1人で一時帰国したとき。色々なリノベ会社を検討している最中、たまたまご実家の近くで行われていたnuの完成見学会に足を運んだことがきっかけでした。実際のリノベ空間を目の当たりにしながらアドバイザーの説明を受け、「リノベってこんなに色々なことができるんだ!」と感じたという奥様。スウェーデンに戻ってご主人にそのことを伝え、nuでリノベすることを決めてくださいました。「窓口が一つで完結するワンストップのnuは、海外からやり取りをしなくちゃ行けない僕たちにぴったりだったんです。」とご主人。そう、Nさん家族が帰国したのはリノベの完成後。設計の打合せはほとんどをテレビ電話やメールで行いました。国をまたいだ設計打合せは、デザイナーにとっても初めてのこと。スウェーデンのお宅をリアルタイムでカメラに写して見せていただくなど、打合せは想像以上にスムーズだったとデザイナーは話します。設計を通してお2人がとにかく大切にしたかったのは『白い壁とシンプルな間取り』。そして部屋をすっきり保つための大きな収納をしっかり確保することもポイントでした。最大の変更点は間取り。2つに分かれていた部屋を大きな1つのリビングにしました。「子どもの頃から図面を書いたり見たりするのが好きで。リノベーションでも『こうしたい!』という希望を図面に起こしてデザイナーさんに提案していました。」と奥様。リノベ前はリビングの扉を開けると壁があり、壁の対面にあるキッチンにまず目がいってしまうことが悩みでした。個室をなくすことで壁もなくなり、扉を開けた瞬間から奥の窓まで一気に視界が開けるようになりました。そうして実現した白い壁とシンプルなつくりの大きなリビング。取材当日は晴れ間のない曇り空でしたが、照明がついていないとは思えないほど明るく光に満ちていました。入り口近くに置かれたダイニングはマルニ木工のHIROSHIMAシリーズ(右上写真)。滑らかな質感が美しいダイニングセットを、ルイスポールセンのPH5 mini(右下写真)がやさしく照らします。
最後まで悩みに悩んだというのがキッチン。新築時から備え付けで入っていたキッチンは海外製のグレードが高いものでした。解体してしまうには惜しいくらいの設備を残すかどうか、デザイナーと一緒に最後まで悩んだそう。キッチンを考える上でポイントになったのが収納。キッチン入り口側に造作した大きな収納棚には、奥様が北欧で買い集めたという食器が所狭しと並んでいます。「大きい収納がどうしても欲しかったので、そうなるとキッチンの幅を狭くしなくてはいけなくなったんです。」と奥様。L字型で動線的な不便さを感じていたキッチン。思い切ってフルリノベーションし、以前より幅を狭めたⅡ型のキッチンを新設することになりました。そして壁には白いタイルをヘリンボーン張りに。こちらはインテリア誌”ELLE DECOR”のスウェーデン版で見かけた張り方を参考にしたんだそう。「特集されていたデザイナーのお部屋がとにかく好みで。高級な北欧インテリアとIKEAの家具が雑多に並んでいるのに、どこかまとまっているんですよね。スウェーデンにはそんなお部屋がたくさんあって、開けっ放しの窓から覗く部屋がとてもおしゃれだったりして、歩くのが楽しかったんです。」と奥様は話します。奥様が話すスウェーデンのお部屋と同じように、選び抜かれた名作家具とIKEAのインテリアが共存し、馴染みあうN邸。広々とした空間だからこそ、その一つ一つのデザイン性が存分に発揮されています。
流れるスウェーデン時間
「スウェーデンでは、インテリアを買う場所としてセカンドハンドのお店が根付いていて、引っ越す時や買い換える時は要らないものをそこに渡すのが当たり前なんです。とにかくなんでも置いてあって、アラビアの食器を見つけたり、誰かが書いた下手な習字まで売ってたり(笑)使う人にどんどん回っていく、モノを大切にする考えはいいなと思います。」揃ってそう話すN夫妻。いつまでも魅力の衰えない名作家具を何年もかけて愛し、必要以上のものは持ちすぎない。そんなシンプルな暮らし方は、完成したN邸にも現れていると感じました。「リノベーションの前と後で生活は変わりましたか?」との質問に「生活自体は変わっていないですが、気持ちは全く変わりました。」と奥様。朝リビングに入った瞬間にすっきりとした大きな空間が目に入ると、とても気持ちがいいんだそう。「スウェーデンでは、お客さんを自宅に招くことが最大のおもてなしなんです。日本人って、知り合いでも家に上がるのって結構気を使うじゃないですか。それがないお部屋にしたいなと思っていました。」とご主人。スウェーデンの友人が遊びに来た時には、第一声に「ここはスウェーデンだよ!」と言われたと笑いながら話します。お2人が生活の中で肌で感じたスウェーデンの美学に則って作り上げたお部屋。ここにはゆったりと穏やかな北欧時間が流れています。