限りなく彩度を落とし、素材の質感を重視した1LDK+WICプラン。お子さんとのびのび過ごせる街で物件を購入し、“自分たちらしい暮らし”を楽しむM夫妻を取材しました。
溢れ出た気持ち
東京都練馬区。駅徒歩3分の好立地なマンションに暮らすM一家は、共働きのご夫妻とお子さん(0才)の3人家族。リノベーションのきっかけは、お子さんを授かる1年ほど前に遡ります。当時、目黒区の賃貸に住んでいたM夫妻。街の雰囲気は気に入っていたものの、職場へのアクセスの悪さがネックになり引越しを検討していたそう。「新しい家の理想の内装や間取りについて夫婦で話し合っていくうちに、どんどん希望が出てきて、『私たち、意外と家へのこだわりが強いのかも』と感じました。それなら自分たち好みの家づくりが叶う、中古マンションを買ってリノベーションという選択肢もありだなと思ったんです」と奥様。まずは情報収集がてら、リノベーション専門誌『中古を買ってリノベーション』に載っていた数社にアポを取り、nuリノベーション(以下、nu)のコンセプトルーム見学会にも参加。実際にnuが手掛けたリノベ空間を見て、「リノベするならnuさんがいい!と直感的に感じました」と当時を振り返るM夫妻。そしてその見学会から約1年後、妊娠をきっかけに本格的にリノベーションを始める事を決め、再度nuのアドバイザーに連絡を取ったのだそう。そんなお2人が最終的に購入したのは、練馬区の約80㎡の物件。「職場へのアクセスの良さと、子育てに適した落ち着いた雰囲気のエリアを重視して探しました。ここは広さも十分だし、職場にも割と近いのですぐに夫婦で気に入って。見学会に参加した時に比べて、息子ができた事で今後の暮らしのイメージも明確になり、自分たちにぴったりな物件を選ぶ事ができました」とご主人。リビングの大きな窓からは朝陽が綺麗に差し込むそうで、気持ちの良い1日をスタートできるのもこの物件の魅力だと教えてくださいました。
アートの映える部屋
彩度を落とした穏やかなグレーで纏め上げられたM邸。約18Jの開放的なLDKは、家族やゲストが心からリラックスできるみんなの憩いの場です。「どういう家にしたいかを考えた時に、家族や友人とゆっくり過ごす事ができる広いリビングが欲しいなと思っていて。友人を招いて料理を振舞ったり、息子や息子の友達をのびのびと遊ばせてあげられるような、そんな空間をイメージしていました」とM夫妻。そんなお2人のリクエスト通り、既存の和室を壊してリビングを拡張。大人4人掛けのソファを置いても余裕のある、開放的な空間が生まれました。そして空間全体はグレーで統一し、シンプルで洗練された雰囲気を演出。「アートの映える部屋にしたかったので、内装は極力シンプルに仕上げたくて。アートが飾ってある海外の家を参考にするうちに、この雰囲気に辿り着きました」と奥様。要所に飾られたアート作品と空間がマッチし、インテリアの一部としてM邸に溶け込んでいます。クロス選びは悩みに悩んだそうで、「世の中にこんなに“グレー”が存在するのか!と思うくらい、ありったけのサンプルを出してもらいました(笑)グレーって冷たい印象になりがちだと思うんですが、クールさの中にも温かみは残しておきたかったので、そこを基準に壁や床の色を決めました」と当時を振り返ります。そしてM邸を語る上で外せないのが、テレビボードの背面の壁に忍ばせた間接照明。「オフィスやショップのディスプレイで見かけてから、ずっと良いなと思っていて。いつか自分の家にも取り入れたいと考えていたんです」とご主人。やわらかな光が壁面に陰影を生み出し、ワントーンのシックな空間を、表情豊かに見せてくれます。
シンプルな設えのリビングの中で一際目を引くのは、存在感のあるカウンター。キッチンは既存の壁付けタイプを使用予定だったため、リビングを向いて作業ができるカウンターは絶対条件だったそう。「息子の様子を見ながら料理ができるし、カウンターがあるおかげで作業スペースが広くなって食事の支度もスムーズです。キッチンを中心に生活が営まれていくようなLDKに憧れていたので、このスタイルにして大正解でした」と奥様。カウンターの側面は素材の質感を優先し、モルタルで無骨な風合いを表現。天板には日常的な汚れに強いメラミンを採用し、意匠性と機能性の両方を叶えました。「こうやって一つひとつの素材をカスタムできるのは造作ならではの魅力ですね」と奥様もにっこり。カウンターの内部は“隠す収納”になっていて、生活感の出やすいゴミ箱が収納されています。また、家電やキッチンツールもパントリーや扉付き収納に仕舞われ、要所に生活感を感じさせない工夫が。“アートの映える部屋”というテーマに一貫した、M邸のこだわりを感じます。キッチンの隣には洗面室を配置し、キッチンと廊下の2方向からアクセスが可能。また、WICにもリビングと寝室の両方から出入りすることができ、家全体に回遊性を持たせています。「身支度をする時に、行ったり来たりしなくて済むようにしたいとデザイナーさんに伝えて、最終的にこの間取りを提案してもらいました。回遊性があると近道にもなって、便利ですね」とM夫妻。玄関を入ったらすべての部屋を1ストロークで廻れるような、シンプルな動線を確保し、ストレスフリーな暮らし心地を追求しました。
“これから”に馳せた想い
M一家がここに暮らし始めて、約半年が経過。引越して来てすぐにステイホーム期間が到来し、お家で過ごす時間も長くなったそう。「設計中は全く予想していなかった事ですが、完全在宅ワークに切り替わったので、書斎が大活躍しています!(笑)リビングから一番離れた場所にあるので、WEB会議などもやりやすくて。今は僕がメインで使っていますが、妻もここで仕事をしたり、将来的にはここで息子が受験勉強をしたり、家族みんなで活用できそうです」とご主人。そしてその書斎とリビングを結ぶ廊下には、等間隔にスポットライトが設置され、画廊のような雰囲気を放っています。これはアートが趣味の奥様のリクエストで、「リビング以外にも気軽にアートを飾れる場所があったら良いなと思って画廊っぽい感じにしてもらいました。これから何十年先もこの家で暮らしていくので、ゆっくりと時間をかけながら、この家に似合う素敵な作品を探していきたいと思います」とインタビューを締めくくってくださいました。
ワントーンで纏め上げたシックなM邸。ギャラリーのような静謐さの中にも、自然と心が和らぐ大らかな空気が漂っていました。