お子様の誕生を機にマイホームの購入を考えはじめたTご夫妻。「せっかく家を買うなら、出来上がっている空間に自分たちが合わせるのではなく、自分たち好みに空間をカスタムしたい!」そんな想いからはじまったリノベーション。コンクリート、畳、木、そして空間を引き締めるブラック…個性のある素材が際立った1LDK+WICプランです。
新たな家族を迎え入れるために
東京都調布市。つつじヶ丘駅から10分ほど歩いた閑静な住宅街にT家族のお宅はあります。T一家は会社員のご主人と奥様、今年お生まれになったお子様との3人暮らし。以前は新丸子の30㎡ほどの賃貸に約3年住んでいましたが、奥様の妊娠を機に新しい家の引っ越しを考えはじめたのだと言います。「子供が生まれた時のことを考えたら、この部屋は家族3人で暮らすには手狭だと感じました。それで引っ越しを検討していたのですが、せっかく引っ越すなら次は賃貸ではなく家を購入する方が資産にもなるし良いんじゃない?と2人で話していたんです。」と奥様。それから本格的に家の購入を視野に入れ、最初は中古や新築のマンションをいくつか内見したというお2人ですが、「ここがいい!と思える物件には中々出会うことができませんでした。大学で建築を勉強していたこともあって空間へのこだわりは強い方だったので、決まり切った間取りや既製のものにあまり魅力を感じられなかったんですよね。それならせっかく自分たちが暮らす家だし、間取りや内装を好きなようにデザインしたいなって。そう考えた時にリノベーションなら一から自由に空間を創りあげることができるし、満足できるんじゃないかと思ったんです。」とご主人。それからネットでリノベーション会社をリサーチし、ヒットしたnuの個別相談会に参加。物件探しから設計までトータルで依頼できるという点に魅力を感じ、nuでリノベーションすることに決めたと言うT夫妻。そんなお2人がアドバイザーに提示した物件条件は家族3人がゆとりを持って暮らせる70㎡以上の広さで、将来売却する可能性も考慮して比較的築浅の物件であること。職場に1時間圏内で通えるエリアであれば、広さや築年数などの希望条件を満たしているものを重視して探していたと言います。そして約2ヶ月の間で数十件内見し、最も魅力的だったのが築16年、約73㎡のつつじヶ丘のお住まい。「予算に対して築年数や広さの釣り合いが一番取れていたのが今の家でした。場所的にも職場まで30分ちょっとで着きますし、渋谷や新宿にも同じぐらいの時間で行けるのでちょうど良い距離だと思っています。あと、元々物件に備わっていたガラスブロックも結構ポイントが高かったですね。デザイン的にも魅力的だし採光も取れるし、リノベーション時に上手く活かせたら良いなぁと考えていました。」ご主人。また、「営業の方が親身になって物件を探してくれたことがとても印象に残っています。内見時にはここの壁は壊せる、壊せないなどリノベーションを前提とした説明をしてくれたので、その後の設計についても想像しやすかったです。」と当時を振り返るお2人。いよいよリノベーションをスタートさせます。
随所に散りばめた“黒“
「空間に対してのこだわりは主人の方が強いので、空間全体のテイストは主人が、スペックや使い勝手の部分は私が決めました。」と奥様。そんなご主人がイメージしていたのは「木、コンクリート、黒。この要素を中心に、きれいだけど素材感のある空間にしたくて。それぞれの素材を際立たせながらも、黒が空間を引き締めているような家にしたいと思っていました。あと、ガラスブロックを活かしたいということも伝えました。」とご主人。それから多くの靴を所有していたため、それらを仕舞うことができる広い土間が欲しいという事やLDにひらけたオープンなキッチンにしたいなど具体的なポイントも含めデザイナーにイメージを共有していきます。そんなT夫妻にデザイナーはVINTAGE×SOZAI」というコンセプトを提案。ヴィンテージのような上質で個性のある素材で構成した空間に、ご主人の好きなブラックをバランス良く散りばめていく、そんな空間をイメージしました。こうして出来上がった空間は、ガラスブロックから差し込む自然光がなるべく広い範囲に行き届くよう極力壁を省いた1LDK+WICのプラン。玄関扉を開けるとギャラリーのような土間と小上がりの畳スペースがお出迎え。土間に設けたシンプルでオープンな靴棚には、お気に入りのスニーカーたちを魅せるように収納しています。壁の仕上げはインスタで見つけたお宅を参考に有効ボードを施し、靴だけでなくアートを飾る場としても役立てているのだとか。隣り合う小上がりは腰をかけて靴の脱ぎ履きができたりと、土間との関係性も抜群です。実は小上がりに初めから和の要素を取り入れたいと考えていたわけではなく、当初は「小上がりをどこかに取り入れたい」とふんんわり考えていたというお2人。実際に具体的なデザインをつめていく中で「畳でも緑系だけじゃなくて黒系のものもあるんですよ」というデザイナーからの提案に、「黒系の畳なら和の要素が際立ちすぎることもなく空間に馴染みそうだし、いいなぁと思ったんです。」とご主人。黒を取り入れることで、モダンで上質な雰囲気が感じられます。また、小上がりは完全に個室化せずにリビングの一部として取り込みたいというご要望だったため、建具はつけずに必要に応じて仕切れるロールスクリーンを設置。壁や扉はないものの、小上がりスペースの天井にだけ施した木の天井のおかげで、LDK空間と緩やかにゾーニングできるようになっています。リビングの床には木の節目を存分に感じられるよう幅広のオーク材を乱尺張りにし、天井の一部は味わいのあるコンクリート現しで仕上げました。LDの中心に位置するカウンターキッチンは、腰壁を木、天板をモルタルのような風合いのモールテックスで造作。食事もここで済ませられるよう天板は奥行きを約1.2mを確保し、カウンターとしての機能も兼ね備えています。キッチンに立つとリビング全体を見渡すことができ、「料理をしながら子供の様子を見ることができるので安心です。子供が歩けるようになったら、きっともっと目が離せなくなると思うのでLDに対してオープンな配置がマストでした!」と奥様。キッチンからリビングに視線を向けると、ガラスブロックを通じて部屋に光が降り注ぐ様子を心地良く感じることができます。ちょうどそのガラスブロック壁の下にはモルタルを敷いた縁側が。「コンクリートの無骨な雰囲気が好きなので、玄関土間以外にもモルタルを取り入れたかったんです。ただあまり広い範囲だと冷たい印象になると思ったので程よい範囲で。」とご主人。植物やスーツケースが置かれた縁側は、ちょっとしたギャラリースペースのように使われていました。ガラスブロックから差し込む優しい太陽の光と快い風が駆け巡るT邸。そこは木、コンクリート、畳…それぞれの素材が存在感を放ちながらも、随所に施した黒が統一感とメリハリを感じさせる空間に仕上がっていました。小上がりスペースの畳は色の薄いものと濃いものを交互に敷いた。カウンターキッチンでは料理中の奥様との会話を楽しむことができる。LDの一部天井は物件自体の素材を活かし、コンクリート現しに。
余白のある暮らし
ちょうどお部屋が完成したのと同じ頃にお子様がお生まれになり、3人家族となったT家。「リノベーションをしてからは、ちょうど子供が生まれたということもあって家に友人や知人が遊びにきてくれる機会も多くて。今の家は以前の賃貸の倍以上の広さがあるので来客があっても窮屈を感じないですし、この空間を見て皆がリノベーションっていいね!って言ってくれるんです。たまに両親が泊まりに来るのですがその際は小上がりに布団を敷いて寝てもらったり、ロールスクリーンを下ろせば個室化できるので便利ですよ。」とにっこり笑う奥様。以前はご主人の趣味の靴などが所狭しと並んでいたそうですが、「今は土間に十分仕舞えるスペースがあるので、部屋がスッキリしてます。靴が好きなので魅せて仕舞える点もポイントですね。」とご主人。靴だけでなくアート作品も集めているそうで、リノベーションしてからは部屋が広くなった分余白が生まれ、アートを飾れる場所をつくれたことも嬉しいと話してくれました。これからはその余白に家族やお子様の写真が増え、たくさんの素敵な思い出が飾られていくことでしょう。