市松模様に張ったオークのツヤありフローリング、自分の手にフィットする造作のキッチン、ずっと昔から使っている手に馴染んだレコードデッキ…手で触れた感触が心地良い、ぬくもりを感じるアイテムを詰め込んだ“CRAFT”な男子リノベ部屋です。
探し求めたフィット感
住みたい街として絶大な人気を誇る三軒茶屋。そんな三軒茶屋から徒歩10分の場所に都内で金融関係のお仕事をされているTさんのお宅があります。Tさんは仕事柄海外の事業に関わる事も多く、以前は香港の賃貸マンションに住まわれていました。しかし、あるときふいにマンションに高い賃料を払い続けることに対して疑問を感じたそうです。しばらくはそのマンションに住み続けていたTさんですが、その後仕事の都合で日本に住む事になりました。当時は下北沢にあるマンスリーアパートで暮らしていましたが、決められた間取りでの生活がどうもしっくりきません。「やっぱり、もっと自分にぴったりの空間で暮らしたい!」そう考えたTさんは賃貸ではなく中古のマンションを購入してリノベーションをすることを決めたそうです。海外生活が長いTさんは、海外では既に主流であるリノベーションに対してまったく抵抗感はなかったとのことでした。むしろ新築の決まりきった仕様があまり好きではなく「自分にとって本当に暮らしやすい環境を作るなら絶対リノベーションだ!」と考えられていたそう。そんなTさんがnuと出会ったのは、あるWEBサイトでした。nuという名前をそこで知りなんとなくHPを覗いたら、事例のデザインに惹かれたそう。その場ですぐに問い合わせをしたのだとか。その後相談会を経て、担当アドバイザーの方と物件探しをスタートします。物件を決めるのにあまり時間はかからなかったそうですが、Tさんがどうしても譲れなかった条件は2つありました。1つめはこれまで暮らしていた大好きな下北沢まで徒歩で行けること、2つめは既存の壁を取り壊し開放的な1ROOMに出来る物件であることでした。最終的にTさんは築44年、40㎡の三軒茶屋にある物件を購入。下北沢まで徒歩12分の距離にあり、間取りを自由に変更出来るつくりであることが決め手だったそうです。さらに平米数に対しての価格の安さや、景色の良さ、料理好きのTさんには隣に大きなスーパーがあることも購入する際の大きなポイントになったとのことでした。
自然にみんなが集まる家
「長年住んだカナダでは、よく友達を自宅に招いてホームパーティーをしていました。みんな集まったらすぐ乾杯して、僕も料理をふるまいつつ一緒に飲むみたいな感じで。みんなが自然とキッチンに集まって来て、おしゃべりしながら食べ飲みするのがすごく楽しかったんですよ!」とTさん。そんなTさんの要望はお酒と料理が楽しめる“60年代のアメリカンBAR”のようなテイストにしたいということでした。スッキリとした空間に、ごちゃごちゃ飾り付けるのがお好きなんだとか。それと大のお料理好きなTさんが1番こだわりたかったのはキッチン。料理も洗いものもしやすく、かつ訪れたみんなが自然と集まってくるようなオープンなキッチンにしたかったそうです。そんなTさんにデザイナーが提案したコンセプトは“CRAFT”。新しいけど、長年使っていたような、手なじみの良い素材やアイテムを空間につめこんだ家というコンセプトです。「正直、自分の中でこうしたいというイメージが明確に決まっていたので、デザイン打ち合わせは3時間ぐらいで終わるんじゃないかと思っていました!」とTさん。しかし実際打ち合わせを始めてみると、あれもこれもとお部屋に対するこだわりが増えていき結局3時間どころではなく週一回の打ち合わせで3ヶ月かかったそう。そして出来上がったのは、どこか懐かしさの漂う空間にキッチンが映え1ROOM。玄関に敷き詰めたのは印象的な白く丸いタイル。これは、Tさんがnuの他の事例を見て惚れ込み、取り入れたもの。その先に広がるのは市松模様に張ったツヤのあるオークフローリング。あえてツヤのあるものを選び、60年代のアメリカンBARのようにしたのがTさんのこだわりポイントです。1ROOM空間を希望していたTさんですが、料理好きということもありキッチンの使用頻度は高め。そのため、デザイナーからのアイディアは、匂い移り等を考慮してキッチンと寝室をコンクリートブロックの壁で仕切るということでした。最初Tさんは「室内にコンクリートブロックの壁?」と感じたそう。しかし、イメージパースを見てデザイナーの話を聞いているうちに空間のアクセントになっていいかも!と思い決断されました。「コンクリートのラフな印象が空間に合っているので選んで良かった」とにっこり。さらに、寝室は明るい空間にしたいという要望に対し、デザイナーはコンクリートブロックを寝室側だけ白で塗装する事を提案しました。ウッドブラインドから入る朝日が白い壁に反射するので、とっても明るい空間で目覚めることができるそう。そして、コンクリートブロック壁をはさんだ反対側にあるのはTさんが1番こだわった壁付けのキッチン。みんなが集まれるようなオープンな作りで、木の簡素な枠組みに傷がつきにくいステンレス天板を合わせました。そのキッチンから聞こえてきたのは「ピザ食べていかない?」という声。答えるより先にTさんは寝かせておいたピザ生地に野菜やチーズをトッピングし始めます。タイルのキッチン壁に取付けたのはキッチンハンガー。フライパンやトングなどのツールは引き出しに収納するのではなくここにフックをかけて吊るします。使いたい時にはすぐに手が届き、片付けるのも楽々。全てのツールがラフにずらっと並んだ様はまさに男のキッチンです。Tさんがお料理をしている間ずっと流れていたミュージック。音がする方を見てみると、そこには使い込まれたレコードデッキがありました。「次なんの曲が良い?どんなテイストが好き?」というTさんからの質問に「オススメで!」と答えると選んでくれたのは、聞き覚えのある懐かしいソウルミュージックでした。
出来上がったピザをオーブンから取り出し、皆に振る舞うTさんは本当に楽しそう。好きな物や、人に囲まれる暮らしの素晴らしさが部屋中に溢れていました。
そこにあるべき物
リノベーションをして以前よりもたくさんの友達を自宅に呼ぶようになったというTさん。得意の料理を振る舞って時には朝までお酒を飲むのだとか。みんなもお酒を飲みながら料理を手伝ったり、おしゃべりしたりとTさんにとってそんな時間が何よりも楽しいそうです。今はレコードで音楽を聞いているTさんですが、リノベ前はスペースが狭かったため、レコードは泣く泣く倉庫に入れていたとのこと。「リノベ−ション後はスペースができたから、レコードは一番目立つリビングに置いています!なんだかあるべき物があるべき場所にもどってきた感じですね。」そう話すTさんはなんだかとても嬉しそうでした。1人で居るときはオールドファッションのウィスキーをいれて、お気に入りのソファに座り、静かに本を読むのも至福の一時だとか。インタビューの終盤、話題の中心はTさんの将来について。いつかは自分の料理を出せるお店を開きたい!というTさん。お店が出来たらスタッフみんなで行く事を約束し、その後もいろんな話で盛り上がります。ツヤありのフローリングを市松模様に張った空間。そこにあるのは手に馴染む造作のキッチンや、使い込まれたレコードデッキ…手で触れた感触が心地良い、そんなアイテムをたくさん詰め込んだCRAFTなお部屋から今夜も夜遅くまで楽しそうな声が聞こえてくるのでした。