東京都墨田区。夫婦の地元にほど近い場所で、新たな生活を切り拓いたH夫妻。お二人が創り上げた新居は、木の温もりが全面に感じられる、心あたたまる空間でした。
“あの部屋”をたどって
木の温もりに包まれた、朗らかなマンションの一室。ここに暮らすH夫妻は、一昨年前の夏、築18年のこの中古物件をリノベーションしました。当時住んでいた賃貸の更新、消費税8%への増税というタイミングが重なり、家探しをはじめたH夫妻。約6年間暮らした以前の家は少し変わった間取りだったそうで、「最初は戸建や新築マンションも視野に入れていましたが、画一的な間取りやデザインに魅力を感じられなかった」とご主人。どうしようか悩んでいたところ、外出中にとあるリノベ会社の看板で“リノベーション”という言葉を知り、中古マンション+リノベを選択肢として捉えはじめたのだそう。そこから手はじめに、ネットでヒットしたリノベ会社3社に資料請求。シンプルで見やすいパンフレットに好印象を覚えたnuリノベーション(以下nu)に連絡を取り、その後個別セミナーへ参加。「アドバイザーの方のお話は初心者の私たちにも分かりやすく、安心できました。あとから気づいたのですが、nuの『本屋と食堂』という事例が大好きで、ピンタレストで保存していて。サイトをたどったらnuの事例だったことに気づいたんです。そういうこともあって、いろんな意味でここの会社だ!と思いました」と奥様。物件探しはお二人の地元、葛飾区がある23区東部を中心に、京成線、浅草線に絞って検索。最終的に購入したのは、以前住んでいた駅から2駅隣に建つマンション。管理体制の良さや川沿いというロケーションも気に入り、即決だったといいます。「以前住んでいた駅の雰囲気が気に入っていたので、こんなに近くで良い物件に出会えて嬉しかったです。車で15分くらいで以前の最寄駅に行けるので、今でもよく買い物に行ったりご飯を食べに行ったりします」とH夫妻。そして無事に物件を購入し、いよいよデザイン打合せ。偶然にもH夫妻の担当デザイナーは、あの『本屋と食堂』を担当したデザイナーでした。
モクとシロ
デザイン打合せで活躍したのはPinterest。「Hさんのアカウントをフォローするので、好きな空間のイメージをピンしていってください」という担当デザイナーの元、お気に入り画像をストックしていった奥様。「言葉で伝えるのは難しいので、画像で好きなテイストやイメージを読み取ってもらうのがスムーズでした。デザイナーさんへのイメージ共有はPinterestで、それとは別に自分の考えをまとめるためにノートにコラージュしたりもしてましたね」と当時を振り返る奥様。そんなH夫妻が集めた“好き”から出来上がったのは、木と白で構成された温かみのあるお部屋。磨りガラスの引き戸を開けると、驚くほどに広い約20畳のLDKがひろがります。「廊下は必要ない」というH夫妻の要望から、元々あった個室と廊下の壁を取り払い、大空間のLDKを実現させました。シンプルですっきりとした空間にインパクトを与えているのは、横幅5m超えのワイドスパンキッチン。「元々はアイランドキッチンを考えていたんですが、『壁付けキッチンにして、窓のある辺を全てキッチンにするのはどうでしょうか?』とデザイナーさんに提案してもらい、それに私がのっかたというか(笑)新築ではこんなデザインないだろうし、壁が全部キッチンって潔くて面白いなぁと思ったんです」とにっこり笑う奥様。かっこよすぎる雰囲気にならないよう、ステンレスと節が多めの木を組み合わせラフな印象に。壁にはマット素材の白タイルをあしらい、清潔感を演出しています。キッチンの窓は二重窓にするため今回新たに木枠で造作し、デザイン性を高めました。「イメージは古い家のキッチンにある出窓みたいなかんじです。土手を歩いている人の目線が気にならないよう磨りガラスにしたのですが、実際に生活してみると意外と目が合ってしまってあまり開けられないので、窓のビジュアルそのものを楽しんでいます(笑)」
キッチンに立ち空間全体を見渡すと、リビングのとなりにつづく畳スペースが垣間見えます。ガラスの引き戸で仕切られたリビング横の畳スペースは、家族の憩いの場所。「床でゴロゴロする場所が欲しかったんですが、それならふかふかのカーペットよりも畳が良い!と思っていて。それでこの空間をつくりました。天井は『寝転んだ時に、天井にやさしい色があると良いと思う!』というデザイナーさんからのアイデアを元に、うすい山吹き色にしたんです。デザイン的にもこの部屋だけ和風というのも嫌だったので、天井に色を入れたことで北欧っぽい和室に仕上がりとても気に入っています」と奥様。デザイン面以外にも畳スペースが孤立しないよう、リビングのフローリングを一部取り込み、リビングと畳スペースの視覚的なつながりを意識。建具もガラスの面積の広い引き戸を選び、リビングとの関係性を大切にしています。また、これらの建具は全てオーダーメイド。モクとガラスのバランスは、3Dパースやメジャーで実際の数値をイメージしながら数センチ単位で検証し、このビジュアルに落ち着いたそう。「昔からモクとガラスでできた建具の雰囲気が好きで、自分の家にも取り入れたいと思っていて。パースでは何度も見ましたが、初めて完成した家でこの建具を見た時、本当にカタチになってる!と感慨深かったです」と奥様。「僕もこの建具越しに見るリビングの景色、気に入っています」とご主人がつづけます。休日は畳に寝転んでぼーっとしたり、ご主人は趣味の音楽に没頭したり、リラックスした時間を過ごせているというH夫妻。畳スペースで音楽を聴いているご主人に、『起きてる~!?(笑)』とリビングから奥様が声を掛けることも良くあるそう。お互いが好きなことをしていても、こんな風に家族がつながっていられる安心感。そしてふんだんに散りばめた木の温かみも相まって、H邸には朗らかな空気感が漂っていました。
一緒に創り上げる喜び
玄関に造られた小さなベンチ。気になって尋ねてみると、「楽器が置ける場所があったら便利そうだと思って」とご主人。実は学生時代の部活がきっかけで、現在も吹奏楽をつづけているというH夫妻。ご主人はクラリネット、奥様はトランペットを担当し、月1.2のペースで仲間との演奏を楽しんでいるのだとか。そんなお二人には共通の友人も多く、リノベーション後一度に10人くらいが遊びに来たこともあったそう。「やっぱりこのくらい広いと、大人数でも全然余裕ですね。来客の時は畳スペースも開放して、みんなに好きな場所で寛いでもらうようにしています。私たち夫婦含めお酒が好きな人が多いので、おつまみを何品か作ってみんなでワイワイしたり、楽しかったです」と奥様。最後に今回のリノベーションを振り返り、「こちらの要望だけを聞くのではなく、色々と提案してもらえるのが面白くて、デザイン打合せが毎回楽しみでした。あとこれ、最後にスタッフさんたちから貰ったメッセージカードです。すごく嬉しくて、これを読むとリノベーション当時の気持ちを色々と思い出しますね」と、笑顔で締めくくってくださいました。