余白を残したシンプルな空間を彩るのは、手仕事のぬくもりを感じるプロダクトやアートの数々。子育てにうれしい工夫を散りばめた家でおおらかな暮らしを営む、Nさん一家を訪ねました。
夢が現実に
埼玉県朝霞市。都心へのアクセスも良好な緑豊かな街に暮らすN一家は、約72m²のマンションの一室をリノベーションして昨年から暮らしています。元々インテリアが好きで、いつかリノベーションをしたいと考えていた奥様。まだ家を買う予定がなかった頃から、その“いつか”のために準備をしていたそう。「息子を妊娠中に時間があったので、ずっとやってみたいと思っていた家づくりの資料を作りはじめました。いつかリノベをする時に、デザイナーさんに見せられるようにInstagramやPinterestで好きな空間の画像を集めたり。この作業を事前にしていたことで、家に対するイメージが明確になりましたね」。
2019年に息子さんが生まれ、3人での暮らしがスタート。家族が増えて部屋が手狭になったことで「そろそろ家を買ってもいいかもね」と、いよいよリノベ会社を探しはじめたN夫妻。nuリノベーション(以下、nu)を知ったのは、すでに数社の話を聞きにいった後のことだったそう。「リノベって自分たちのスタイルに合わせてゼロからつくれるところが魅力だと思っていたのですが、なかにはパッケージ型のリノベ会社もあって、リノベってこんなもんなんだと思ってしまって。そんな時にインスタでnuさんを知って、個別セミナーに参加しました。nuさんはデザインの自由度もそうですが、担当のアドバイザーさんが『もう少し話を聞いてみたい』と思わせてくれる、やわらかな雰囲気を持ち合わせている方で。そこから具体的に話が進んでいきましたね」と奥様。
物件探しの舞台は、奥様の地元・朝霞。元々は杉並区に住んでいましたが、実家が近くにある安心感や、子供と遊べる公園が点在している周辺環境が気に入り、このエリアにこだわって探していたそう。そんなN夫妻が最終的に購入したのは、ご縁とタイミングが重なったことで巡り会った、同市内に建つ築16年の物件でした。
「実はここ、私の親友の実家なんです。なかなかいい物件が出てこなくて、親友にもその話をしていたら『実家 を売ることになった』と聞いて(笑)。友達として何度も遊びにきていた家だったので、眺望やご近所関係なども わかっていて安心して購入できました」。
ピースフルな暮らし
奥様が思い描いたのは、「家族が健やかに暮らせる家」をつくること。家に帰ったときに明るい印象を持って欲しい、と白とオーク系の内装で纏め上げた明るく柔らかな空間を創り上げました。約20畳のLDKは、家族が思い思いの時間を過ごすことのできる開放的な空間。キッチンの前には息子さんが思いっきり遊べるおもちゃスペースを、リビングの一角には大人の秘密基地のようなヌックを造作し、自然と家族が集まってくるような楽しげな雰囲気で満ちています。
実は、ヌックはご主人たっての希望でつくったスペース。「秘密基地みたいな場所で漫画を読めたらいいな」というご主人のリクエストに対し、奥様がヌックを提案したのだそう。「ヌックは全部好きにしていいよ!って入口の寸法から内装まで全て夫に任せました。ヌック天井のクロスは電気を消すと星が光って見える種類なのですが、それも夫が自ら選んだもので、打合せ中もすごく楽しそうでした」と奥様。入口は高さ1.3mでほどよい篭り感があり、趣味の漫画に没頭するには最高のスペース。ここで息子さんと一緒に絵本を読んだりもしているそうで、家族みんなのお気に入りのスペースになっています。
一方、奥様のこだわりが全面に反映されているのがダイニングキッチン。お気に入りの器がたくさん収納されていて、N邸のコンセプトが“料理と器”であることにも頷けます。『artek』の円形テーブルをキッチンの隣に置くことが前提だったため、省スペースにもレイアウトしやすいII型キッチンを採用。「II型は今まで使ったことがなかったので、すごく新鮮です。使い勝手も良いし、コックピットみたいで気に入ってます」と奥様。キッチンは木で造作した腰壁で覆い、家具のような美しいビジュアルに仕上げました。実は最後の最後まで腰壁のデザインを悩んでいたそうですが、「迷走していた時に、デザイナーさんがこのデザインを提案してくれて。施工の仕上がりまで細かく指示してくれたおかげで、満足のいくキッチンがつくれました」と、笑顔で話します。
「なるべく家事の負担を減らして、子供と向き合う時間を増やしたくて。そういう意味で、ほぼ子育てベースで 考えた家です」。そう話す奥様の想いが最も具現化されているのが、水回りの家事動線です。キッチンの先には パントリー、ランドリースペースとお風呂、WICをひと続きに配置。水回りを一箇所に集約し、最短距離の動線 でアクセスできるようレイアウトすることで以前よりも効率的に家事ができるようになったんだとか。「ご飯を作りながらお風呂を沸かしたり、そういうのが五歩くらいでできるのが楽ですね。ランドリースペースは玄関廊下からもアクセスできるので、帰宅したらお風呂に直行することができます。回遊性を持たせておいて本当に正解でした」と奥様。
また、ランドリースペースには、玄関廊下に設けた洗面台とは別にスロップシンクを設置。スロップシンクとは、 靴洗いなどの汚れ物にも対応できる底の深い流しのことで、奥様の希望でデザイナーにリクエストしたそう。「 息子の靴や洋服を手洗いする機会が多くて、以前はお風呂の中でやってたんですけど結構大変で。そういう家事を楽しんでやれる仕組みをつくりたくて、スロップシンクを取り入れました。実際は息子の物だけじゃなくて 、布巾を漬け置きしたり、自分の洋服も気軽に手入れするようになったり。設置してよかったなと思うことばかりですね」。
それから、N邸のアイコニックとなっているのが廊下に設けた造作の洗面台。Pinterestで見つけたイメージを元に奥様がスケッチを描いてデザイナーにリクエストするなど、熟考して完成しました。「私の中で、リノベーションってリアド(モロッコ伝統の宿泊施設)のイメージなんです。外観は普通なのに、中に入ったら別世界が広がってるみたいな。特に我が家の洗面は玄関を入ってすぐの場所にあるので、来客にもインパクトを与えられるようなデザインにしたくてこだわりました」と教えてくださいました。
何も予定がない日曜日
前職では海外出張が多く、これまでに20カ国ほどを訪れた経験がある奥様。その審美眼によって選ばれたハイセンスなインテリアたちが、N邸を彩っています。なかでもテレビが掛けてある壁面には、奥様の好きなものや憧れが詰まっているのだそう。「家具はリノベ時に新調したものがほとんどで、特に『artek』のヴィンテージ シェルフはリノベしたら絶対に設置したいと思っていたものの一つです。空間自体は白ベースのシンプルな箱なので、そこにちょっと古いものや手仕事を感じられるアートや民藝品などを足して、中和していくイメージでインテリアを考えていきました。ただ、夫はシンプルでスッキリしてるのが好きなので、二人が心地いいと思えるギリギリを攻めています(笑)」。
そしてインタビューの最後に、奥様がひっそりと教えてくれたのは今回の家づくりの裏テーマ。「何も予定がない日曜日でも、家にいるだけでなんか幸せだなと思える家をつくりたいという想いがあって。今回の家づくりでは、それを叶えることができました。この家にはヌックやみんなでゴロゴロできる広いリビングなど、それぞれにとって居心地がいい場所があるので。“みんなにとって居心地がいい”を成立させるのは、出来上がっている家を買うのではなかなか難しいと思うので、やっぱりリノベを選んでよかったと思います」と、幸せに満ちた表情で締めくくってくださいました。
家族を思いやる温かな雰囲気が充満し、ふんわりとしたやさしさに包まれたN邸。これからどんな風に色を重ねていくのか、数十年後のN邸の暮らしぶりが楽しみです。