お互いが心地よい距離感で過ごせる、開放的なリビングが広がるA邸。和と無機質な要素が融合したオリジナルテイストに暮らす、家族の穏やかな暮らしとは。
“ハレの日”の代わりに
都心から電車で約30分。緑が豊かな東京郊外に暮らすAさんは、ご夫婦と娘さん、猫ちゃんの3人と1匹暮らしです。結婚を機にマイホームを購入し、築20年・約68㎡のマンションをリノベーションしました。「本当は結婚式を終えてから家を買うつもりだったのですが、コロナ禍で結婚式が挙げられなかったので。その分の資金をマイホームに充てて、予定より早く住宅購入に踏み切りました」と、奥様。家づくりの選択肢としてリノベーションを選んだのも奥様たっての希望で、「前職でインテリア関係に少しだけ携わっていた影響で、家具が好きになりました。いつか欲しい憧れの名作家具などもあったので、注文住宅のように自由な家づくりができるオーダー型のリノベーションに惹かれていました」と話します。
思い描いたマイホームを創り上げるために、リノベーションのパートナーに選んだのは、nuリノベーション(以下、nu)。「nuさんにお願いした決め手は2つあって、デザインのテイストが好みだったこと、アドバイザーの方とのフィーリングが合いそうだなと思ったのが理由です」。当初は奥様の実家へのアクセスを考慮し、横浜方面で探していましたが、ペット不可だったりと条件に合う物件が中々見つからなかったそう。そこで、エリアに固執せず、愛猫と家族がのびのびと暮らせる70㎡前後の物件を条件に探し始めたところ、今の稲城市の物件に出合いました。「ここは広さもクリアしてるし、正方形の物件だからリノベーションにも向いているなって。エリアは妥協しましたが、ここにしてよかったと思います。馴染みのない土地ではありますが、2駅使えて便利だし、とにかく自然が豊かなので子育てにもぴったりな環境ですね」と、奥様。「春には近所の川沿いが桜で満開になるんですよ」と笑顔で語るその姿からは、新たな土地との出合いがAさん一家の暮らしをより豊かに彩っていることをひしひしと感じます。
全体の20%
ご夫婦ともにインドア派だというAさん。家でのんびりすることが好きなため、お互いがゆっくりと過ごすことのできる広いリビングはマストでした。そんなAさんに設計デザイナーは、「SHARING」というコンセプトを提案。それぞれの趣味の時間も、家族団欒の時間も、日常のあらゆるシーンをみんなでシェアできる広いリビングを中心に暮らしが広がっていく。そんな空間をイメージして創り上げられたA邸には、約20Jの開放的なLDKが設えられ、ほんのり和の要素を感じる粋な雰囲気に包まれています。
リビングの一角にはご主人のワークスペースを配置し、造作の格子で緩やかにゾーニング。「普段は主人がここでPCゲームをしていて、私がソファでくつろいでいることが多いのですが、格子があるおかげでお互いがちょうどいい距離感で過ごせている気がします。相手の姿が直接的に見えていなくても、一緒にいる雰囲気は感じられるので」と、奥様。今はフルリモートのご主人のワークスペースとして使用していますが、将来的にはここをご夫婦の寝室にして、現在の寝室を子供部屋にする想定なのだそう。また、格子のデザインは奥様がかなり頭を悩ませた部分だそうで、「何度もPinterestでイメージ画像を探しましたね。和の要素が欲しくて格子をオーダーしたのですが、和要素は空間全体の20%程度に抑えたい!とデザイナーさんに伝えて、縦格子のみで組んだシンプルなデザインで造ってもらいました」と、当時を振り返ります。
奥様の理想とする“和と洋のちょうどいい塩梅”を追求して、リビングの天井はコンクリート現しに、キッチンの腰壁にはモールテックスを塗装。無機質な要素をバランスよく配分して、A邸ならではのオリジナルテイストを創り上げていきました。
A邸のアイデンティティーとなっているのが、リビングに設えた意匠柱と造作のベンチ。この柱の正体は、リノベーション時に動かすことのできないPS(パイプスペース)で、「せっかくならPSをデザインとして活かしたいとデザイナーさんに伝えたら、このベンチ一体型の意匠柱を提案してくれました」と、奥様。ベンチの脚には直径20mmの円柱を使用し、できるだけスッキリとさせたミニマルな仕様を追求。 意匠性はもちろんのこと、大人数の来客の際にはゲストがベンチに腰を掛けることができ、実用性も抜群なんだとか。アイコニックなビジュアルと、柱に飾られたモノクロの時計が相まって、まるでカフェにいるような大人の遊び心も感じられます。
また、ベンチの背面には、大容量のファミリークローゼットを配置。洋服や家電、食料の備蓄など、全てここに仕舞える広さを確保し、収納を1箇所に集約しました。「魅せる収納は苦手だったので、隠す収納をつくってもらいました。おかげでリビングを常にスッキリした状態に保てるので、重宝しています」と、奥様。クローゼットには寝室側からもアクセスすることができ、LDK→WIC→寝室→玄関、と一筆書きで家中を回遊することができます。また、LDKにゲストがいる際は寝室側からクローゼットの物を取ることができるので、来客に見せたくない部分を上手に隠すことができて便利なのだそう。デザイン性だけでなく、実用性をしっかりと伴わせた家づくりができるのもまたリノベーションの醍醐味です。
憧れと暮らす
お引渡しの2ヶ月後に娘さんが誕生したAさん一家。引越しに、家族の誕生にと忙しい日々を送っていたそうですが、リノベーション後はゆったりとした気持ちでキッチンに立つ時間が多くなったと奥様は話します。「賃貸時代と比べて倍の広さになったので、本当に使いやすいです。おかげで料理をする時間が好きになりました」とにっこり。キッチンに立つと、ダイニングに飾られたGeorge Nelson(ジョージ・ネルソン)の名作『Bubble Lamp』が真っ先に目に飛び込んできて、奥様がずっと憧れだったというお気に入りのアイテムがより魅力的な空間へと昇華してくれています。
また、今回のリノベーションは、インテリアが大好きな奥様が主導となってデザインを決めていったそうですが、ご主人が唯一こだわったのがお風呂だったそう。「主人はサウナが好きなので、お風呂だけは主人に決めてもらいました。その他は全部私のやりたいようにやらせてくれたので、設計中に夫婦間で揉めることはなかったですね(笑)。リノベーションをすること自体にも賛成してくれていたので、そこはよかったなって思っています」と、笑顔で取材を締めくくってくださいました。
憧れを憧れで終わらせない、家づくりへの情熱を持った奥様と、そばでやさしく見守るご主人。そこにはお互いがちょうどいい距離感で過ごすことのできるA邸ならではの、心地よさが充満していました。