燦々と降り注ぐ陽光が空間をやさしく照らす、ピースフルなS邸。在宅ワークのご夫妻ならではの“お互いがちょうどいい距離感でつながる間取り”の最適解を導き出しました。
自分たちらしさを求めて
都心から電車で30分強。東京・多摩地区の南部に位置する、自然豊かなベッドタウンにSさんのご自宅はあります。ご夫妻ともにソフトウェア系のエンジニアとして働いていて、コロナウイルスの流行によって在宅ワーク中心の生活に切り替わったことが家を買うきっかけになったそう。
「元々1LDKの賃貸に住んでいたんですが、お互いの仕事部屋を確保しようと思うと部屋数が足りなくて。賃貸への引越しも検討しましたが、いつかは家を買いたいと思っていたので、先延ばしにして家賃を払い続けるよりも“いま”買おうと思ったんです」と当時を振り返るSさん。
また、家賃がもったいないという理由以外にも購入の後押しとなったのが、“自分たちらしい家に住みたい”という奥様の想いでした。賃貸物件では叶わなかった生活動線に合わせたオーダーメイドの間取り、家具が映える内装など、間取りから素材に至るまで全てにこだわって家づくりがしたいと熱望し、フルリノベーション前提で約69㎡の物件を購入。パートナーにはnuリノベーション(以下、nu)を選び、計画を進めていきました。
「数社の話を聞きに行きましたが、nuさんの施工事例の雰囲気が一番好みだったことが決め手ですね。実際に設計打合せではデザイナーさんに色々と提案をもらって、採用させていただいた部分も結構あります」と奥様。
それから、「個別セミナーに参加して、割とすぐにnuさんにしようって決めた記憶があるよね。理由を言語化するのが難しいけど、担当者の方とのフィーリングがあってたってことだと思います」とご主人が続けます。
実は以前住んでいた賃貸も、今のお住まいと近しいエリアだったそう。治安の良さやスーパーが点在してる点など、暮らしに根づいた街の雰囲気が気に入っているそうで、「ここはまさに穴場って感じだよね」と微笑むお二人。ゆったりとした時間が流れるこの場所で、新たな暮らしがスタートします。
“koko”の居場所
「在宅ワークに切り替わって家で過ごす時間が大半になったので、それぞれの居場所をきちんとつくりたいと設計デザイナーさんにはお伝えしました。ちょうどいい距離感でお互いが自由に暮らすために、個々のスペースがあるような家が理想でしたね」とSさん。
そんなお二人に設計デザイナーが提案したコンセプトは『koko』。life、work、hobby…。それぞれの目的を持った要素を“個々=koko”に点在させて、空間をつくり上げていきました。
こうして出来上がったのは、個々のスペースをしっかりと確保した2LDKプラン。洗面スペースは、お互いの生活サイクルに干渉しないよう廊下沿いに独立させました。カウンターはL字で造作し、一辺には実験用シンクを埋め込んだ洗面スペースを、もう一辺には奥様専用のメイクスペースをレイアウト。コンセプト『koko』に則り、それぞれの居場所を確立させました。「仕事部屋以外に、狭くていいから自分だけの空間が欲しいと思っていたので、デザイナーさんが提案してくれたこのメイクスペースは絶妙に篭り感があって気に入っています」とにっこり。天板は耐久性に優れたメラミンで造作しているため、傷や汚れにも強く、使い勝手も好調だそう。クローゼットを併設しているため、身支度がこのスペースで完結できるのもS邸ならではの利点です。
また、リビングからいちばん離れた場所にはご主人の個室を配置し、パーソナルなスペースを確保。「仕事の時間以外も、自分の部屋でまったりすることが多いです。以前は寝室しか個室がなかったので、自分だけの空間があるのは嬉しいですね」とご主人。自分たちのライフスタイルにあったオーダーメイドの間取りによって、心地よい距離感で暮らせている様子がひしひしと伝わってきます。
白・木を基調としたLDKは南側のバルコニーからたっぷりと陽が注ぎ、明るくて気持ちのいい場所。白やアッシュのニュートラルな質感を、要所に用いたブラックが引き締める調和の取れた空間です。
「ナチュラルな雰囲気が好きなんですが、ほっこりしすぎないように、キッチンの飾り棚のブラケットやリビング扉の枠にブラックを取り入れてアクセントにしました。リビング扉は面がガラスのおかげで玄関まで光が届くし、機能的にも意匠的にもすごく気に入っています。実はやりたいことを詰め込んだら予算オーバーしてしまって一瞬この扉を諦めようかなとも考えたんですが、頑張って残した甲斐がありました(笑)」と微笑む奥様。
キッチンの腰壁のデザインは、逆にクールな印象になりすぎないように熟考。当初は全面をモルタルで塗装したいと考えていたそうですが、腰壁の5分の1をモルタルで塗装し、残りは表情のあるリブパネルで装飾しました。「デザイナーさんから提案いただいて、木を融合させたこのデザインに落ち着きました」。ハードさと温もりのいいとこ取りをしたようなデザインが、シンプルな空間の中で目を惹くポイントになっています。
また、料理中の手元が隠れるように、腰壁は少し高めに設定。冷蔵庫やゴミ箱も予め収納場所をプランニングし、スッキリと整った空間で暮らせるよう配慮しました。
ハートフルな暮らし
この家での生活がスタートして、もうすぐ1年。住み心地を尋ねてみると、「とにかく暮らしやすくなったよね、ストレスフリーというか」と顔を見合わせるお二人。賃貸時代に抱えていた悩みや不便に思っていたことが全て今回のリノベーションで解決できたそうで、まさにQOLが向上した日々を過ごされている様子が伺えます。
また、賃貸から持ち家に変わったことでインテリアに注がれる熱も高まっていて、LDKの家具の主役にもなっている〈MOMO NATURAL〉のNESTA SOFAは、引越しの際に新調したアイテムの一つだそう。「ずっと新しいソファが欲しかったのですが、家を買うまでは我慢しようと思っていて。窓の側に置く予定だったので、少しグレーっぽいブラインドの色味を考慮して、このファブリックを選びました」と奥様。ベースの家具は引き続きナチュラルを保ちつつも、「アートや家具の脚などでカラフルさも足していきたい」と今後の展望も教えてくださいました。
また、ソファの隣に置かれたNychairも、くつろぎの時間を過ごすのに欠かせないアイテムだそう。実はこれ、ご主人が学生時代に買った10年もので、「とにかく座り心地がいいと聞いて手に入れたんですが、僕は座り心地さえよければ満足なので、生地の色や仕様は奥さんに選んでもらいました(笑)いつもセンスのいいものを選んでくれるので、この家のデザインもおまかせでしたね」と、奥様に全幅の信頼を寄せるご主人。
それぞれが自由に過ごせるkokoな距離感がありつつも、ハートフルな雰囲気で満ちているS邸。そこにはお互いを思いやるご夫妻の穏やかな空気が流れていました。