コンクリート・タイル・塗装など異なる質感のグレーの中に、造作食器棚のモクがアクセントになった空間。どこを切り取っても“映える”暮らしが、夫婦にもたらした変化とは。
憧れが現実に
「インスタグラムで見ていたとみこさん(※)が、nuリノベーション(以下、nu)で自宅をリノベしていたんです。しかも、nuのHPで連載ブログも書いていたので、はじめからnu一択でした。中古マンション購入からワンストップでお願いできるのも、私たちの性格的に助かるなって」。
そう話すのは、都内に住むHさんご夫婦。以前は賃貸暮らしをしていましたが、とにかく狭くて使い勝手が悪かったこと、奥様が制作しているカリグラフィーを撮影するのにふさわしい家に住みたかったことから、マイホーム取得に踏み切りました。
「防犯面・ゴミ出し・駅徒歩・予算など色々考えると、戸建ではなくマンションだなと。でも、最近の新築マンションは天井が低くて、値段の割に狭い。新築特有の白い壁も好きじゃないし、大きい食洗機やパントリーも欲しかったので、やっぱり中古マンションリノベ一択だねって」と、奥様は振り返ります。
こうして、恵比寿のnuオフィスに相談に行ったHさん。不動産屋によくある体育会系の接客をイメージしていたものの、嬉しい誤算だったそうです。
「すごくやさしい感じで、『一緒にやっていけたらいいですね~』みたいな(笑)。コンセプトルームもすごく素敵で、モールテックスのキッチン、ヘリンボーンの床、ロフト、造作洗面など、色んな実物が見られてリノベ後の暮らしが想像できました。あとはやっぱり、とみこさんのインスタグラムとブログをずっと見ていたので、安心感がありましたね」と、ご夫婦は話します。
希望エリアと条件を明確にしていたおかげで、物件探しもスムーズに進行。約半年かけて、厳選した3軒のみを内見しました。最終的に購入したのは、築30年・75.60㎡の高層階に位置するお部屋。天井が高く、窓も大きくて、日当たりも眺望も抜群。しかも、駅まで徒歩5分で通勤もラクと、すべての条件を満たしています。
「実は低層階にも空室があって、この部屋よりも価格が安かったんです。少しでも出費を抑えたかったのでそっちも内見したんですけど、高層階と全然日当たりが違って…。悩んでいたら、nuのアドバイザーさんが値下げ交渉をしてくれて、最終的に希望額で購入できました。申請資料の面倒もみてくれたし、すごく寄り添ってくれましたね」と、ご夫婦は振り返ります。
(※)とみこさん:WEBを中心に活動しているフリーランサー。nuのHP内で『365日心ときめくリノベと暮らし』を執筆。
4種のグレー
奥様が希望したのは、2LDKの間取り、LDK横のワークスペース、調理家電も仕舞えるウォークインパントリー、WIC。そして、撮影で作品が映えるグレー基調の内装でした。そこで、メイン空間となるLDKのクロスは6色のサンプルの中から気に入ったグレーを厳選。壁を背景にして撮影するときに作品の邪魔をしないように、極力シンプルな平面の壁で構成しました。
天井はコンクリートの躯体現し、床はグレーの塩ビタイルを採用。キッチンの腰壁はソイルペイントで仕上げ、表情のあるグレーに。4面ともグレーながら、異なる質感が楽しめる空間に仕上げました。
「最初はモルタル床にしようと思っていたんですが、経年変化でヒビが入る可能性もあるから管理が大変と聞いて。諦めていたら、設計デザイナーさんが『モルタルに似たグレーのフロアタイルを使いましょう』と提案してくれたんです。とみこさんもブログでフロアタイルは掃除がしやすいと書いていたので、即採用しました。それと、白ではなくグレーの巾木を提案してくれたんですが、これがすごくいい。巾木と言えば白だと思っていたし、自分たちではそこまで気が回らなかったので」と、ご夫婦は声高に話します。
グレーで纏め上げたクールな空間を、奥様が質感にこだわって選んだ<トレジュール>のオーダーカーテンが美しく波打ち、平面で構成されたLDKにやわらかさとリズムを与えています。
この家の主役は、上質さと温もりを感じさせる框組みの食器棚です。
「こういう框組みの家具が欲しかったんです。好きなインテリアのケーキ屋さんがあって、そこの家具を真似て造作してもらいました。当時、設計デザイナーさんにその家具の写真を見せたら、『こういう感じですね~』とすぐにイメージを捉えてくれて。次の打合せのときには、もうイメージパースが完成していました」と、奥様は目を輝かせます。
パースを忠実に再現し、細部にまで美しさが宿った食器棚は、まさに職人技の賜物。3種のモールディングがあしらわれた豊かな表情が、直線で構成された空間とのコントラストで一層引き立てられ、主役にふさわしい存在感を放っています。
そして、LDKの入り口とワークスペースの建具は、高さのあるガラス戸に。すべての建具の高さとパントリー入り口の高さを揃えることで、横ラインのズレを無くしました。視線が上と横に誘導され、空間がより広く感じられるといいます。ガラス戸のおかげで視線と光が最大限に抜け、ワークスペースも開放感が抜群。日中は照明を付けなくても過ごせる、明るい空間が完成しました。
生まれたゆとり
この家に住んで1年2カ月。グレーが基調のスッキリとした箱に、温かみのある木や布のインテリアが配され、絶妙な温度感の空間に仕上がっています。
「とにかくストレスフリーで、QOLが上がりました。料理しやすくなったし、パントリーとWICのおかげでモノを押し込めるようになって、視界的ストレスがなくなりましたね。私の場合、新築によくある折れ戸や観音開きのクローゼットだと閉められなくなるので、扉無しのウォークイン型は正解でした(笑)」と、奥様は笑います。
洗面台を廊下に設置したことで、脱衣所でドライヤーをする奥様と洗面台で歯磨きをするご主人のバッティングがなくなり、水回り渋滞が解消。コンセントをたくさん配置したおかげで、電源難民も解消されました。「部屋がかわいいから綺麗にしてあげたい」と、あれほど嫌いだった掃除がすっかり好きになったのだとか。
家具はこの家に合わせて一新し、カリグラフィーの撮影小物としても活躍しています。nuのインテリアサービスdecoるで購入したダイニングチェアCH36が、特にお気に入りだと言います。
「いい自然光が入ってくるので、壁も映える、家具も映える、どこで撮っても映える(笑)。撮影回数が増えて、カリグラフィーの集客のためのInstagramの投稿回数も増えました。以前は友人からの依頼が多かったけど、最近はインスタグラム経由で新規の方から依頼が来るようになったんです」と、奥様。
この家で撮影するようになってから、ビジュアルの世界観が統一され、仕事の方向性や道筋が明確になったと朗らかに語ります。また、街中のお店の壁や内装も目に付くようになって、モノの見方や世界が広がったのだとか。リノベで変わったのは、暮らしだけではないようです。
「住んでしばらく経つけど、後悔ポイントが一つもないんです。nuのスタッフさんがおかしいことは素直に言ってくれたり、巾木のように細かい部分にまで配慮してくれたりしたからだと思います。予算的に難しいことも、ちゃんと代替案を提示して、最大公約数を教えてくれて。私たちのつたない表現から色々な思いを拾ってくれましたね」と、奥様。ご主人が続けます。
「身の丈をはるかに超す良い家が生まれたなって。のびのびした空間だから、仕事から遅くに帰って来ても疲れが上手く取れている気がします。大きい食洗機も入れたし、掃除もしやすくなったから、家事が時短できて、仕事したりのんびりしたりできる時間が増えました。何より、妻の機嫌が良くなったのが良かったかな(笑)」。眼下の川で泳ぐ鳥や、季節ごとに色が移ろう木々を眺めるのも至福というHさんご夫婦。リノベで生まれた時間とココロのゆとりを、これからもより楽しんでいくことでしょう。
Interview & text 安藤小百合