表情豊かなオーク床とリブパネル、リズミカルな有孔ボードに、不思議な存在感の箱収納…。ユニークで機能的な空間での暮らしは、ある1本のドラマから始まりました。
猛烈なトキメキ
「たまたま『魔法のリノベ』(※)というドラマを観て、中古リノベのことを知りました。『色んなことができて予算内に収まる…。それ、いいじゃん!』って、猛烈にときめいてしまって(笑)」。
そう熱く話すのは、M邸の奥様。ご主人と2歳の娘さんと共に、東京に隣接するベッドタウンにお住まいです。
娘さんの成長に伴い、マイホームを検討し始めたMさん。田舎育ちのご主人は戸建て以外考えられなかったそうですが、コンパクトな暮らしの方がラクなこと、将来の維持管理のこと、何より奥様が前述のドラマにときめいたことを総合的に考え、マンションに落ち着いたといいます。
「新築マンションも3軒だけ内見しましたが、大体全部一緒だし、狭い空間に小さい部屋がギュッと詰め込まれている感じで、やっぱり違うなって」と、奥様。中古マンションの実態を確認しつつ、住むエリアを確定するためにまずは知り合いの不動産屋と一緒に勤務地周辺の物件を内見しましたが、やっぱり住み慣れた土地がいいと判断し、当時の居住エリアで探すことにしました。
「そろそろリノベ会社も決めないと」と、奥様がインターネットでリサーチしたところ、物件探しからリノベーションまでワンストップで依頼できる会社があることを認識。nuリノベーション(以下、nu)を含めた4社に資料請求しましたが、nuのアドバイザーと話をした日に一気に運命が動き出しました。
「『予算的に無理』という空気を一切出さず、『予算内でできる限りやりましょう!』と言ってくれて。誠実だし、最後まで変な勧誘が無かったのも良くて、『もうここに決めよう!』と夫に強くすすめました。デザインも清楚で、ナチュラル過ぎずスッキリしていて、色々やりすぎていない感じが私好みでしたね」と、奥様は振り返ります。
こうして、nuのアドバイザーと一緒に、3日間かけて8軒の中古マンションを内見したMさん。最終的に購入したご自宅は、JRと私鉄の2路線が使えること、近くに景色のいい高台や公園があることに加え、アドバイザーの助言が決め手になったと言います。
「『築21年だけど管理が行き届いているし、お部屋も綺麗な四角形でリノベしやすい。絶対におすすめです』と言い切ってくれました。『奥様がしたいコレはできます、アレはできません』とか、『コレだと大体いくらだから、予算には収まらないです』とか、こちらが判断するための尺度をパキッと教えてくれて。濁したり微妙な表現をしたりせず、明確に言ってくれたのが本当にありがたかったです。自分たちでは分からないことばかりでしたから」と、ご主人。こうして物件を購入し、いよいよ設計デザインの打合せが始まりました。
(※)魔法のリノベ:関西テレビ放送、原作 星崎真紀
魔法の箱
Mさんが望んだのは、カッコよすぎず、子どもがいても住みやすい程度にスッキリしたデザイン。また、以前の賃貸では手狭で不便さを感じていたことから、広々キッチンとたっぷり収納はマスト条件でした。
そんなMさんのリクエストを実現するために、LDの床材に選んだのは表情豊かなオークのフローリング。壁にはグレーのクロス、躯体現しの天井には白塗装を施し、ちょうどいい塩梅のカッコよさを追求しました。また、間取りはデザイナーが提案した3プランの中から、子ども部屋が最大限広くて日当たりがいいプランを採用したそう。
「私が田舎育ちだからだと思いますが、子ども部屋には日光が入って当たり前だと考えていて。大人は帰宅したらご飯を食べて寝るだけだけど、子どもは自室で過ごす時間が長いから、まずは子ども部屋の条件を優先するべきだと」と、ご主人。今後娘さんが好きにアレンジできるように、壁はシンプルに白で仕上げました。
「子どもと一緒に料理をしたい」という奥様の夢を叶えるキッチンエリアは、家族3人が一緒に立っても余裕の広さを確保。ネイビーのタイル床で空間を引き締め、リビングが見渡せる対面式キッチンを採用しました。腰壁にはリブパネルを採用することで、すっきりとしたデザインに心地よいリズムを生み出しています。
「魚は専用のロースターを使っているので、コンロはグリルレスにしてもらいました。スッキリした見た目で気に入っていますし、冷蔵庫をリビングから見えない位置に配置してもらったのも良かった」と、奥様。思い切り料理が楽しめるようガスコンロは4つ口のものをチョイス。広々としたステンレスの作業スペースが、母子のクリエイティビティを引き上げてくれます。
この家の主役は、LDと玄関土間の間に設置した「箱」。その正体は、立体全面を収納として使えて、お出かけ前の身支度がここで完結する、箱型の超便利ブース。ここに仕舞っているのは、娘さんの洋服と幼稚園グッズ、ご夫婦のハンカチや靴下、一軍のバッグたちだそうで、たしかに、玄関にあると助かるアイテムたちばかりです。LD側の外壁には奥様の希望で有孔ボードを採用し、娘さんの写真や作品を飾れるディスプレイ機能を付加しました。
「最初は『箱収納?何それ?』って感じでしたが(笑)。もう、めちゃめちゃいい。回遊できるし、本当にありがたいです」と、奥様。有孔ボードには計画通り娘さんの写真と作品が飾られ、シンプルな空間に彩りが添えられています。
その他にも、寝室の横にWIC、リビングに2カ所の収納を設け、これから物が増えても安心できるだけの収納量を確保。週2回ほど在宅勤務だというご主人のために、1.4畳のワークスペースも設けました。コンパクトな空間ながら、手持ちの本60冊以上が収まる本棚と、出窓を活用した棚を造作し、必要な機能がギュッと凝縮されています。
浴室とトイレは、元の位置のまま内部を新調。「水回りは毎日使う場所だから、妥協せず考えぬきました」と話す奥様の言葉通り、掃除をラクにするために浴室の壁はマグネット対応にして全てのバスグッズを“掛ける収納”にしました。トイレは狭い空間だからこそ、ネイビーの壁とヘリンボーンの床で遊びゴコロをプラス。洗面台はあえて玄関を入った左正面に設置して、帰宅後の手洗い動線をスムーズにしました。
ゆとりが生む優しさ
こうして、ご夫婦の希望を詰め込んだ2LDK+WS+P+WICが完成。当初イメージした“ちょうどいいスッキリ感”の中に、ユニークさも感じられる空間に仕上がりました。
入居から5ヶ月目の暮らし心地を尋ねてみると、「生活の質がグッと上がりました」と嬉しそうに微笑むMさん。
「賃貸時代は空間にも心にもゆとりがなくて、インテリアを飾ったり、空気を入れ換えて気持ち良く過ごしたりすることまで気が回らなかったけど、今はモノの住所が全部決まっているから片付けもスムーズだし、こまめに掃除できています。そして何より、動線が格段に良くなったのは感激! 照明とスイッチの位置も生活動線に合わせて計画してもらったので、ストレスがありません。起きてから寝るまでずっとラクですね」と、奥様は目を輝かせます。この空間に合わせてセミオーダーしたオーク材のテレビ台とダイニングテーブルも、すっかり居心地が良さそう。
「娘と一緒に料理をしながら成長を感じるとき、家族3人でご飯を食べているとき、ものすごく幸せを感じます」と、奥様。ご主人が続けます。
「リビングで娘と走り回っているときが一番幸せかな。一方で、ワークスペースの存在はやっぱりありがたいです。仕事にも集中できるし、意外と広く感じるし、見た目以上に快適。1人の時間ができたからこそ心に余裕ができて、妻に優しくできるようになりました(笑)」。
娘さんも時々こっそり自室にこもり、『おさるのジョージ』の人形を相手におままごとに興じているそう。家族の良好な関係を、それぞれのプライベート空間が支えているようです。
「nuさんは、本当に人がいい。最初から無理とは言わず、できる方法をちゃんと考えてくれました。優しく引っ張ってくれるから、優柔不断な妻でもスムーズに決められましたね。予算や条件で悩んでいる人も、まず1回相談してみたらいいんじゃないかな」と、ご主人。
まさに、nuの『魔法のリノベ』で想像以上の暮らしを手に入れたMさん。目の前にある幸せを慈しみながら、今日も優しい時間を過ごしています。
Interview & text 安藤小百合