[2018.11.22]
森美術館で開催中の「カタストロフと美術のちから展」。
ずっと行きたいと思って、先日ようやく行ってきました…!
この展示は、「世の中でおこった(おこっている)惨事に対して、美術には何ができるのか」
ということをテーマに催されています。
震災やテロや事故などといった負の現象を、正に転ずる足がかりとしての作品もあれば、
そのまま負として映し出し作品にしているものもあり、
良くも悪くもたくさんのエネルギーに満ち溢れていた展示会場でした。
仕事終わりの友人と行ったため入館したのが夜だったということもあり、
どっぷりと「暗さ」に浸かってきました。
堀尾貞治「震災風景 1995年」
阪神淡路大震災の風景を描いた作品。
ありのままを映し出す写真ではなく、作者の目と手を通して主観的に描かれた絵だからこそ
圧倒的な説得力と迫力があり、写真よりもリアルでした。
展示序盤の作品だったのですが、早々に心を持って行かれてしまいました。
平川恒太「ブラックカラータイマー」
遠くから見るとただの黒い円盤が整列しているように見えますが、
これらは黒く塗りつぶされた電波時計。
そこに、福島第一原子力発電所事故後に現地で従事した作業員108人の肖像画が黒い絵の具で描かれています。
近くに寄って見るとカチカチカチ…という108個の時計の音が重なって聞こえ、
この作品の題名が「ブラックカラータイマー」である意味がよくわかります。
他にも見ごたえのあるたくさんの作品に加えて、
1時間以上もある映画仕立てのインスタレーションまであり見応えはたっぷりです。
夜の1,2時間では全然時間が足りず、閉館ギリギリまで在廊して急かされて帰ったので、
心残りしかありません。行かれる際には、半日費やすことをお勧めします。笑
この展示に行きたいと思っていたのは、
以前Noah PurifoyというアーティストのJunk Dadaという作品を見たからだったのです。
カリフォルニアにJoshua Treeという砂漠があるのですが、
そこにぽつぽつと置かれたjunk(廃材)の塊のような作品たちは、
彼の受けた、もしくは目の当たりにしてきた差別や悲惨な出来事をモチーフとして制作されたものです。
真夏の砂漠のど真ん中で、自分と作品がひたすら向き合うだけというこの空間は、
上記の展示以上に鑑賞するのに気力が要るものでした。
だからこそ、強烈に印象に残っているのかもしれません。
美術は、その名の通り美しいもの・よいとされるもの・ポジティヴなものを扱うことが多い(求められる)からこそ、
ネガティヴな出来事を主題とした作品のよさはさらに際立ち、魅力的に感じられます。
みなさまぜひ、六本木へ。
お時間が許せば、ぜひぜひ、Joshua Treeへ。
rnc