リノベーションの人気素材・モールテックスの魅力を徹底解説!
今やリノベーションには欠かすことができない人気素材「モールテックス(MORTEX)」。今回はモールテックスの基礎知識から、家の中のどこに採用される例が多いのかなど、その魅力を徹底解説していきます。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・モールテックスとは
・モルタルとの違い
・モールテックスの魅力3選
・モールテックスの施工方法
・モールテックスの注意点
・モールテックスの採用例
モールテックスとは
モールテックスとは、モルタルに特殊な樹脂を混ぜることで柔軟性を増した薄塗り可能な左官塗料で、ベルギーの<BEAL社>が開発した素材です。
BEAL社といえば、人工石を研ぎ出して仕上げる左官材「ビールストーン」を製造販売している会社でもあり、革新的な建築素材を多く世界に送り出しています。
△(左)モールテックス (右)ビールストーン
モールテックスの歴史は意外に長く、実は20年ほど前には開発されていました。
日本に入ってきてからはまだ10年も経っていませんが、その魅力から今では多くのリノベーション空間で採用されています。
モルタルとの違い
土間打ちされた玄関など、無機質な素材を使った空間はモールテックスの登場以前から人気の高いデザインでした。当時はモルタルを使っていましたが、さまざまなデメリットがあり、採用できないケースが多かったことも事実。
<モルタルの懸念点>
・水分が抜けていくため経年でヒビ割れが生じやすい
・薄塗りができず、造作家具には不向き
・床に採用する場合は遮音を取ることが難しい
その点、モールテックスはモルタルに樹脂を混ぜ込んだことで上記のデメリットをカバーすることができ、扱いやすさが格段に上がったことで室内デザインに採用することができるようになりました。
モールテックスの魅力3選
モールテックスには、大きく分けて3つの魅力があります。
魅力1 | 柔軟性の高さ
モールテックスが人気の理由の一番大きな要因は、その柔軟性の高さではないでしょうか。
特殊樹脂が混ぜ込まれていて薄塗りが可能になったことから、従来のモルタルでは実現できなかった細かな納まりにも柔軟に対応することが可能になりました。
魅力2 | 耐水性の高さ
モルタルと同様に、耐水性にも優れているモールテックス。洗面台造作の際にはカウンターだけでなく、洗面ボウル自体もモールテックスで仕上げることができるなど、デザインの幅が大きく広がったことも魅力の一つです。
魅力3 | 自由度の高さ
モールテックスには、豊富なカラーバリエーションがあります。最もメジャーなグレーから、ピンク・グリーンなどのカラフルなものまで。濃淡も選べることから、思いのままのデザインを楽しむことができます。
モールテックスの施工方法
続いては、なかなか見る機会のないモールテックス施工の様子をご紹介。
ご自宅のリノベーションでモールテックスを取り入れる際も、施工過程を知っているとより愛着が増すかも!?
早速見ていきましょう。
手順1 | 下地の準備
モールテックスは柔軟性・密着性が高いため、さまざまな下地に施工することができます。
多くの場合はベニヤなどの木下地ですが、時にはタイルの上に直接施工する場合も。既存タイルの凹凸が大きい場合は電動工具で研磨して、なるべく平滑にしてからモールテックスを施工します。
手順2 | プライマーの塗布
下地の準備が整ったら、モールテックスをいきなり塗るのではなく、まずは「プライマー」と呼ばれる下塗り剤を塗布します。乾燥時間は8時間ほど。
手順3 | モールテックス塗装
プライマーが完全に乾いたら、いよいよモールテックスを塗っていきます。
まずは一層目を塗り、8時間ほど乾燥。一層目が完全に乾いてから二層目を塗り、表面を仕上げていきます。
モールテックスは、完全に乾く前に水分が入ってしまうとその箇所だけ白く浮き出てしまうことも。そのため、二層目を仕上げてから48時間以上の乾燥期間を置き、完全に水分を飛ばします。
手順4 | 研磨
表面をサンダーで研磨し、モールテックス自体の施工は完了です。
手順5 | 塗膜の塗布
使用頻度の高い場所、汚れや熱が加わる可能性のある場所にモールテックスを採用する場合は、表面を保護するためにオイルやポリウレタンニスを塗り、保護膜をつくります。
オイルは表面の質感を残しつつ保護することができる反面、メンテナンスの頻度が高め。
一方、ポリウレタンニスはオイルより保護力は強いですが、モルタル特有のザラっとした手触りが失われてしまいます。
採用する場所やご自身の好みを設計デザイナーに伝え、相談しながら決めるようにしましょう。
施工工程の多さもさることながら、乾燥にここまでの時間を要するのは驚きですね。
乾燥期間中はモールテックスに水分や粉塵が付着するのを防ぐため、他の工事もストップせざるを得ないケースも。
床や壁一面をモールテックスで仕上げる際には、工期が長くなる可能性があることを念頭に入れておきましょう!
モールテックスの注意点
汎用性が高く、魅力的なモールテックスですが、リノベーションの仕上げとして取り入れる際には注意するべきポイントもあります。
今回は特に、リノベーションでモールテックスを採用し、実際に生活する場面で気をつけていただきたいポイントをご紹介いたします。
【モールテックスは酸に弱い】
耐久性や耐水性に優れるモールテックスですが、除光液やお酢などの酸に弱い性質のため、こぼしてしまった場合はすぐに拭き取るようにしましょう。
また、拭き取る際の洗剤についても、保護膜に影響のない成分を選んで使用する必要があります。
【油が浸透するとシミが取れにくい】
高温の油が跳ねたりすると、表面の保護剤が傷つき油が内部に浸透してしまうことも。油シミになってしまうと完全に除去することが難しくなってしまいます。
キッチンなど、油跳ねが想定される場所に採用する際には扱いに注意が必要です。
【定期的なメンテナンスが必須】
モールテックスの保護膜は、定期的にメンテナンスを行う必要があります。フローリングを傷つけたくない場合に、定期的にワックスがけをすることをイメージするとわかりやすいかもしれませんね。
リノベーションでモールテックスを採用する場合には、つくり出したい空間デザインと、実際のご自宅での過ごし方やライフスタイルをしっかりとイメージし、バランスよくモールテックスを取り入れることが、より満足度を高める鍵になります。
モールテックスの採用例
最後に、nuリノベーション(以下、nu)の施工事例の中でもモールテックスのデザインが印象的な空間をご紹介いたします。
リノベーションでモールテックスを採用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
・施工事例:「GALLERY×コンテンポラリー」(東京都渋谷区)
2017年にnuで部分リノベーションを行ったIさん。3年前にリフォーム済みの物件を購入しそのまま住まわれていましたが、所有している家具が映える空間にしたいという思いが強くなり、リノベーションを決意されたそう。
NYでの居住経験もあるIさん。現地で訪れたギャラリーの雰囲気をご自宅に取り入れたいとデザイナーに伝えたといいます。
Iさん:ピカピカと輝くモルタルの床や展示品を引き立たせるためのシンプルな空間。決してただのシンプルじゃない、洗練された美しさのある空間に強烈な魅力を感じていました。
しかし、マンションでは床にモルタルを採用することはできません。そこで設計デザイナーが提案したのが、当時はまだ珍しい素材だった「モールテックス」でした。
モールテックスの床は、Iさんが持つ鮮やかな色のインテリアを引き立て、本物のギャラリーのような空間を実現してくれています。
LDKの床全面に加え、キッチンを囲う壁もモールテックスで仕上げ、ニッチ収納を造作。
モールテックスだからこそ実現できた、無機質で洗練されたデザインの空間に仕上がりました。
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・施工事例:「Ample」(神奈川県横浜市)
玄関にインナーガーデンのような空間を設けたSさん。
北海道出身の奥様と新潟出身のご主人は、生まれ育ったご実家の開放感をご自宅でも感じたいと、この空間のデザインや素材には並々ならぬこだわりがあったそう。
土間の床、ベンチ、壁面収納や造作洗面台に至るまで、全面的にモールテックスを採用。
ラフでありながら高級感を感じる、なんとも言えない居心地の良さを感じる空間で、ご主人はここで娘さんに絵本を読んだり、1人の時間を楽しんだりしているんだそう。
Sさん:モールテックスの面積を減らす提案も受けたんですが、どうしてもここはやりきりたい!と思って…。コストダウンの提案はとにかく却下させてもらいました(笑)。
造作の洗面台は、モールテックスの耐水性を活かし天板、側面、洗面ボウルの中までモールテックス仕上げ。
カウンターと引き出しの納まりをミニマルにすることにも徹底的にこだわり抜き、どこまでもシームレスで洗練されたデザインに仕上げました。
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・施工事例:「ニュアンス×maison」(東京都)
最後にご紹介するのは、白のモールテックスで床全面を仕上げた、ネイルポリッシュクリエイター・アサノさん(@aaasanooo)のご自宅。
まるで雪が降り積もったような淡くて静謐な空気がLDK全体を包み込んでいます。
その中でも特筆するべきは、LDKの一角に佇む曲線で構成されたオブジェ。
当初から、ネイルポリッシュを撮影をするために階段状の造作家具をつくることをリクエストしていたアサノさん。
設計デザイナーとの打合せを重ね、モールテックスの特性を活かした曲線状にデザインすることが決まったそう。
アサノさん:床と同じ白のモールテックスで仕上げていて、何を置いても絵になるので撮影の際はもちろん、インテリアとしても重宝しています。
表面にムラ感があるモールテックスは、真っ白なタイルを敷き詰めるのと比較しても温かみを感じる仕上がりに。ほんのりベージュで仕上げた壁・天井との相性も抜群です。
最後に
今回はリノベーションの人気素材・モールテックスについてご紹介させていただきました。
nuLIVEの下記記事では、実際にnuの施工現場でモールテックス施工を行った様子もご紹介していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。