数年前、nuリノベーションでご自宅をリノベーションしたmaruさん。
リノベをきっかけに変化したライフスタイルや、丁寧な暮らしをつむぐmaruさんの等身大の日常をお届けします。
NO GREEN NO LIFE
約25年前、今住んでいるマンションの購入を考えていた時、いくつかのお部屋が選べました。
老後や重い荷物がある時のことを考えて、エレベーターのある高層棟ということは決めていましたが、富士山の見える5階の部屋がいいという主人と、目の前が自然林で窓からの景色がグリーン一色だった2階がいいと言った私とで意見が分かれました。
結局、災害が起きても2階なら子どもを誰かに託せられる!というゴリ押し気味な私のプレゼンにより2階にしてもらった記憶がありますが、住んでみると緑溢れるこの部屋でよかったと家族にも言ってもらえて良かったなと思っています。
私は森や林など緑に囲まれた場所が大好きで、その由来は東京本土唯一の村である檜原(ひのはら)村にあった祖母の家にあるのではないかなと思います。
山のてっぺんにあった祖母の家は周りも山に囲まれていて、集まった従兄弟たちと遊ぶには絶好の場所でした。
かくれんぼで隠れていたときなどのザワワと揺れる木々の音が心地よくて、時にはその場で眠くなってしまうほどでした。
昼間の楽しさに調子に乗って“泊まっていく!”とつい言ってしまうのですが、古くて大きな祖母の家は夜には豹変し、まるでお化け屋敷のように見えてしまい、結局は怖くて泊まれず夜中に父に迎えに来てもらったことも度々ありました。
それでも祖母と一緒に縁側から見上げたお月さまは蒼々として本当に美しく、今も月を見るとその頃のことを思い出します。
当時は古い家が怖かったけれど、今になって古家具や古道具に心安らぐ気持ちになれるのは、ここが原点だと思っています。
そのようなわけで、そこにあってくれるだけで幸せだった今のマンションから眺められる自然林ですが、昨年一気に伐採されてしまい、これまでは見えなかった前にある棟がどーんと姿を見せました。
あれよあれよという間に伐採はどんどん進み、林の中の大きな木はほとんど切られてしまいました。
コロナ禍で役員のみで行われた前の年の総会で決議されたことで、内容をよく読まずに委任状を出してしまっていた私に非があるのですが、変わってしまった景色を見るたびに今も悲しくて悲しくて。
伐採の理由は災害時の倒木に備えてということで、幸いにも自然林自体が無くなってしまった訳ではないので、まだ背の低い木々たちがすくすくと育ってくれることを日々願っています。
緑に囲まれた中にいると、小鳥の声や風が肌に触れる感触、かすかな草の匂いが本当に心地よいですよね。
1人でいるとその心地よさは尚更感じられ、自然と仲良くなれたような気がします。
何十年もそばにあってくれた愛すべきグリーンは無くなってしまいましたが、私はやっぱり「NO GREEN NO LIFE」。
今そばにあってくれるグリーンを大切に育て、愛でていきます。
新芽が芽吹く一番美しいこの時期に、皆様もぜひ自然の緑を愛でに足を運んでみてください。
早いもので10回の連載も今回が最後の回となりましたが、有難いことにあと一年続けさせていただけることになりました。
途中で打ち切りになってしまわないかとドキドキしていた私にとって、とても嬉しいお知らせです。
より丁寧に自分らしい言葉で伝えられるよう、次回からは隔月での更新とさせていただく予定です。
引き続きお読みいただけますと幸いです。
今月の一枚は、自然林がまだあった頃に幼鳥がバルコニーに来てくれた時の写真です。
また来てくれる日が訪れることを願って。
今回もお読みいただきまして、どうもありがとうございました。
撮影・文:maru
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