一面ヘリンボーンの床を、楽しそうにどこまでもハイハイしていく息子くん。プレーンでさっぱりとした印象の家だけれど、そこには家族の温もりと奥様のつくるお菓子の美味しい香りが溢れています。
静かな場所を求めて
神奈川県、川崎市。駅近にしてはとっても閑静な住宅街にある、Kさん宅。Kさん一家は、会社員のご主人と奥様、そしてもうすぐ1歳の息子くんの3人家族です。 以前住んでいた賃貸アパートの更新のタイミングで、家の購入を決意。 書店で様々な本や雑誌を見て、自分たちの住みやすい間取りを ゼロからカタチにしていけるリノベーションという方法を選択します。 早速リノベーション企業の比較検討をし始めたところ、物件の紹介からワンストップで お願いできるnuのHPにたどり着きます。nuにお願いしようと決定する前には、他の企業のHPも見てみましたが、 「圧倒的に施工事例数が多かったので、自分たちの思う通りにリノベ出来そうだと思いました。 そして何よりも事例が格好良かったので、nuさんを選びました」とご主人。 ご主人の職場と実家に近い、川崎で物件探しをスタート。 担当のアドバイザーには、今までの住まいと同じ60㎡くらいの広さで、 駅近の物件を条件として伝えました。何件か内見をして、最後にたまたま紹介されたこの物件で、ピンと来るものがあったというお二人。 「のんびりとした感じがある駅前の雰囲気と、要望通り駅近にも関わらず とても静かな場所だということが決め手になりました」とご主人。 確かに子育て世代が多く住んでいるという住宅地にしては、とても穏やかで 過ごしやすそうな印象を受けました。「即決はしましたが、最初に見たときはあまりの状態の悪さに本当にこの汚い部屋を買っちゃうんだ、と 自分を落ち着けるのに必死ではありましたけれど(笑)」と奥様。担当アドバイザーの「今はこういう状態ですが、これから一緒に理想の住まいをつくっていきましょう!」という一言で安心してリノベに踏み切ったと仰っていました。
プレーンを生み出す”もと”
以前お住まいだったお宅のキッチンは正方形のスペースに、シンクとコンロが離れたL字型。お料理やお菓子作りが大好きな奥様ですが、光の入らない閉鎖的なキッチンに少々不満がありました。「うちはリビングで過ごす時間が圧倒的に多いので、キッチンもリビングと一体化させて、いつでも皆でいられるような空間にしたかったんです」と奥様。料理をしながらでも、常に家族とコミュニケーションを取れること、 それだけは譲れないポイントでした。一方、ご主人のこだわりは床に張るフローリングの素材。「間取りやデザインにこだわりは無かったのですが、フローリングの木材は絶対無垢のオークが良いと決めていました」とキッパリ。もともと住んでいたお宅で使っていた家具が、ほとんどオーク材で出来ていたということもあり、家具と空間全てが馴染むようにオークのフローリングにしたいと考えていたそう。また、リノベーションを調べているうちに出会った “ヘリンボーン” という、ニシンの骨のように フローリング材を張っていく方法も取り入れたいというご要望でした。そんなお2人のお話を聞いたデザイナーが提案したのは、「Plain Place(プレーンプレイス)」という コンセプト案。サブタイトルには、「そえる×香り」という文字が記されていました。まだプランを提案されてないうちに、このコンセプトを見て「まさにこれだ!」と思ったという お二人。シンプルな空間だけど、ラフではない、でもどこか味のある空間…そこにお2人の好きな北欧作家の小物をそえると、奥様のつくるお菓子の香りがふわりと漂う… そんなイメージをデザイナーと共有しながら、いよいよプランを決めていく段階に入りました。 3種類の間取りの提案を受けた中で、1番開放的でLDKに光がたっぷりと入るプランを選びました。 玄関を開けると、まず目に飛び込むのは鮮やかなグリーンの扉。どんな来客からも、ここは何のお部屋?と訪ねられると言いますが、実はここはトイレ。全体的に極々シンプルな空間の中で、この扉だけグリーンにしたのは、 ご主人の遊び心からなのです。そして奥へと進むと、ヘリンボーンがキッチンにまで敷き詰められたLDKが登場します。 当初の希望通り、オープンで明るいキッチンが主役の空間。壁向きにコンロとシンクが並び、 リビング側には作業カウンターを造作した、2列のストレートタイプです。「私はとにかく頻繁に料理やお菓子作りをするんです。良く使うコンロやシンクを壁向きにした ことで、汚れなど気にせず気兼ねなく料理が出来て、本当に良かったと思っています!」と奥様。 約40㎝のピザをつくるときにも、生地を捏ねるのに何も邪魔するものがありません。さらに、その作業台があることで、来客の際も皆で料理が出来たりと、良いコミュニケーション ツールになっているそう。作業台はTVボードと繋がっているので、正面から見ると一枚の壁のように見えます。表面の下部は収納になっていて、日々使う日用品やAV機器などを収納。裏面は奥様の料理グッズや、つくり置きの常備品などがぎっしり並べられています。「ここはキッチンに入らないと見えないので、私の城なんです(笑)」と楽しそう。 暮らしから生まれた沢山のアイディアで、余計なものを出しっ放しにしない、プレーンな空間を 生み出すモトになっているのだと感じました。
“そえて”つくる暮らし
初めて新居に足を踏み入れたときには、理想のキッチンを目にしてこんなところで料理が出来るなんて!と感動したという奥様。取材に訪れたこの日も、アツアツのピザを焼いて下さいました。アボカドとパインをのせたピザは、お店で出てくるようで本格的!「前につくったものが無くなる前に、次のお菓子をつくるんですよ(笑)」と、食後のデザートにはシュトーレンとビスコッティまで。つくるものが家庭料理の粋では収まりきらないため、キッチンの大きさは “贅沢して良かった” と設計当時を振返ります。引越してからは、友人を頻繁に招いているというお二人。「リビングが広いので、ダイニングテーブルをフレキシブルに動かしたり、椅子も好きな場所に動かしやすくて本当に便利なんです」とご主人。さらに、まだハイハイ歩きの息子くんも、その広いリビングを十分に楽しんでいる様子。取材中も、力強いハイハイで、フローリングの上を行ったり来たり。「子供が生まれてから、家にポップな色のものが増えたのですが、それも意外といいなーなんて思っています」とシンプルが好きだったお二人がサラリと言います。プレーンな空間にその時々の暮らしを “そえて”、その時にしか味わえない家の表情を楽しむ、そんなことを教えてくださったKさん宅でした。