壁全体に施したヴィンテージライクな深い緑が印象的な1LDKプラン。ブレない世界観が生み出したドラマティックな空間に暮らす、元アパレル夫妻のお宅を訪ねました。
ファッショニスタのリノベ
世田谷区大井町線沿い。とあるヴィンテージマンションの一室に、イギリスを感じる独創的な空間が広がっています。ここに暮らすO一家は、ご夫妻と息子くん(1歳)の3人暮らし。家を買おうと思ったのは、息子くんの誕生がきっかけだったそう。「以前の家は都立大学で、今の半分くらいの広さでした。夫婦二人で暮らすには十分でしたが子供が生まれてから手狭になり、広い家に引越したいと思っていて。ただ、次も賃貸に引越すのではなく、将来的に資産になるよう家を買おうと思いました」とご主人。以前アパレル関係にお勤めだったO夫妻は、二人ともファッションが大好き。身に着けるものだけでなく“住まい”にも強いこだわりを持っていて、家を買うならデザイン自由度の高いリノベーション一択だったと言います。そしてネットで調べた複数のリノベ会社に資料請求した後、実際にいくつかの会社へ足を運んだそう。nuリノベーション(以下)もそのうちの一社で、「nuに依頼しようと思ったのは、スタッフさんの人柄。あと、デザインにとことんこだわりたかったので、打合せ回数無制限なのも魅力的でした。効率重視で打合せ回数3回まで!みたいな会社もありましたが、うちの家はそれじゃあ絶対に終わらないと思っていたので(笑)」とご主人。そんなO夫妻が最終的に購入したのは、以前住んでいた目黒区のお隣り、世田谷区に建つ約60㎡の物件。息子くんのかかりつけの病院へのアクセスも良く、最寄駅から10分圏内という点も決め手だったそう。「最寄駅から病院までのバスが出ているので、便利です。実際に生活してみると大井町線は交通の便も良く、通勤や遊びに行く際にもとても便利ですね」とお二人。実はO夫妻が購入した物件は、以前nuでリノベしたお客様のお宅。今度はそこにO夫妻の価値観を反映させて、新しいカタチで住み継いでいきます。
ブレない世界観
深い森のようなグリーンの壁、宮殿を思わせるトラッドパーケット柄の床、ショーウィンドウのようなWIC…。随所に感じるイギリスの気風は、家づくりのテーマ“イギリスの邸宅”に則ったもの。「以前働いていたお店がイギリスから買い付けたアパレルや家具を扱うヴィンテージショップで、店内にもレトロなイギリスの雰囲気が反映されていました。わたし自身もそういう世界観が大好きで、ヴィンテージやアンティークの家具を集めていたので、今回リノベのテーマに設定しました」と奥様。特にこだわったのは「色づかい!」と話すように、全面をグリーンで塗装した壁が特徴的なO邸。色や柄で遊ぶイギリスのインテリアデコレーションの特徴を取り入れ、イギリスライクな空間を再現しています。「コンテンポラリーではなくヴィンテージの雰囲気が好きだったので、Pinterestで検索した海外の家を参考に深い色合いのグリーンを選びました」と奥様。「ただ、全面に色を取り入れるとなるとあまりに範囲が広くてイメージが湧かなかったので、デザイナーさんが作ってくれたカラーサンプルを持って、街へ繰り出しました(笑)恵比寿に外壁がグリーンのアパレルショップがあって、そのお店の壁にカラーサンプルをかざして、『あーこの色だとこんな感じか!』とイメージしていました」とご主人が続けます。壁と同じくグリーンを基調としたキッチンは、奥様お気に入りの場所。息子くんの様子を見ながら料理ができるよう対面式で配置し、オーダーで造作しました。腰壁には表面に凹凸をつけるモールディングという技法を施し、イギリスの雰囲気を掻き立てています。「既製品だと中々イメージとマッチするものに出会えないと思ったので、バックカウンターも全部オーダーメイドです。扉や側面にもたっぷりモールディングを使って、取手は真鍮にしました」と奥様。冷蔵庫やトースターなどの家電は、世界観を崩さないために黒またはシルバーで統一しているのだそう。
グリーンとブラックで構成したドラマティックな色づかいに加え、随所に凝らしたモールディングが特徴的なO邸。キッチン腰壁やリビング天井の廻り縁、そしてこの家を語る上で外せないのがWICのパーティションです。映画『Kingsman』に登場するロンドンの街並みのショーウィンドウを実際に渡米して見た時のイメージを元に造作した、世界にひとつだけのWICは、奥様が一番こだわった場所。「洋服をたくさん持っていたので、収納スペースをどう確保しようか悩みました。デザイン打合せで自分の考えをアウトプットしていくうちに『アパレルショップみたいなWICにしたい!』と思いついて、劇中に出てくるモールディングをあしらったショーウィンドウを参考にしたんです」と奥様。重厚感のあるブラックのパーティションは、訪れる人の心を惹きつけるO邸のシンボル的存在。モールディングの美しい意匠が、イギリス様式に整えられたこの空間にしっくりと馴染んでいます。「このWICを作るの、デザイナーさんはとても大変だったと思います(笑)PC上で見たパースが実際に3Dになったらどうなるんだろう?と少しドキドキしましたが、仕上がりはイメージ通りでした」と当時を振り返るO夫妻。実際にWICヘ足を踏み入れてみると、中には80、90年代のヴィンテージのお洋服や鞄がズラリ。ヴィンテージショップで良く使われているドクターキャビネットには、煌びやかなアクセサリーがディスプレイされ、そこはまさに奥様が理想の収納としていた“アパレルショップ”そのもの。「夫婦揃って服が好きなので、休日は家族で洋服の色を合わせて出かけたりします」。このクローゼットでそんなファッショニスタな話を聞いていると、まるでイギリスの友人宅に遊びに来ているようなワクワクした気分に誘われます。
他にはないもの
今回のリノベーションを経て、O夫妻はこう振り返ります。「最初から明確だったイメージもありますが、デザイナーさんと沢山話していくうちに思いついたアイデアも結構あって。例えばトイレの壁にもモールディングを使っているのですが、最初からそうしたかったというより、“イギリスの邸宅”というテーマに一貫性を持たせたくて、トイレまでこだわりたい!と思ったんです。打合せを経ていく中で、よりこだわりが強くなっていった感じですね」と奥様。一方ご主人は、入居後、インテリアが完成がするまでを思い返し、「家づくりのテーマに合わせてインテリアも緑か黒で統一したかったので、前の家から使っていた白いソファテーブルやキャビネットは黒く塗装しました。少しでも白が入っていると世界観が崩れてしまうので、ブレーカーやエアコンの配線もテープなどを使ってどうにか黒くしました(笑)僕も妻もやるからには妥協したくない!という思いが強いので、とことんこだわったこの家にはとても満足しています」と笑顔で締めくくってくださいました。
“究極の唯一無二”。そんな言葉が似合うO邸は、時代を超えて愛されるヴィンテージのように、この先も独自の輝きを放ち続けていくことでしょう。