ブラックをメインカラーとした大人の1LDK+WICプラン。ゆとりある雰囲気を醸す造り付けのソファや、磁器質タイルの続く床。ピクチャーレールに飾られたアートや小物でほのかにアジアなスパイスを利かせた、SINGLE男性の住まいです。
人が集まる家を夢見て
東中野に一人暮らしをするUさんは、8年前に購入したマンションを今年フルリノベーション。当時、新宿近辺でマイホームをと思い探していたところ、角部屋でルーフバルコニー付きのこの物件にノックアウトされたのだとか。73平米で3LDK、占有面積の半分以上を占めるほどの広さのあるルーフバルコニー。元々自宅に友人を招いてホームパーティーをするのが好きということもあり、このルーフバルコニーの広さは何にも変えられない決め手になったのだそう。夏はBBQ、冬にも星空を見ながら食事ができる!と夢を膨らませて引越しを済ませました。ところがそう長く住まないうちに仕事で海外赴任が決まり、このマンションを賃貸に出すことに。数年で海外赴任先から日本へ戻り一時的に別の家を借りて暮らしていたUさんですが、賃貸に出していたマンションが空くことになり、いよいよ今度こそ自分の家づくりを本格的にスタートさせようとリノベーションを決意したんだとか。それが2016年の夏のことで、まずはリノベーション会社を探すところからスタート。HPを見て気になった2〜3社に声をかけ、実際にプランの提案を受けて「ここなら」と思えたnuに依頼することに決めました。
キッチン<バスルームの公式
躯体現しのグレーとアクセントで使用したブラックでまとめた空間に、間接照明の光がじんわりと灯るようなデザイン。どこかリゾートホテルで寛いでいるような気持ちになれるこの心地よい感じは、Uさんが望んだ空気感でした。「仕事柄、アジア圏への出張が多いんです。仕事でよく行くうちにアジアが好きになり、プライベートでもしばしば訪れるようになって。ダークな中にも煌びやかな印象のある滞在先のホテルの雰囲気がとても好みなんです。それを自宅にも再現できないかとデザイナーさんに相談しました。」とUさん。それを相談した場所というのが、実は以前お住まいだった賃貸の家。そこの雰囲気が気に入っていたので「実際に見てもらった方が早いかと思って」と、自宅にデザイナーを招待したんだとか。86㎡で1LDKのゆったりした空間を見て、今度の家も余裕のあるような雰囲気にしようと決めていきました。そんなUさんに提案したコンセプトは「Asian black」。リゾートホテルのように重厚感のあるインテリアや高級感のある素材を使用し、潜在意識の中でくつろげるように。1LDKの広々とした空間は、使用用途によってスペースの割き方を極端に分けました。人の集まる家にしたいと考えていたUさんは、LDKに21畳のスペースを割くことに。リビングには約4メートルの長さのあるL字の作り付けソファをオーダー。悠に8人は並んで座れそうなソファは座面をブラックレザー、下部には収納スペースを製作し、デザイン性と実用性を兼ね備えています。一方、普段料理はしないためキッチンの広さは最低限に。キッチンの横幅は、通常のFAMILY世帯の平均よりも50センチほど削り、コンロも2口にすることで余分なスペースを省いていきます。「キッチンにこだわらない分、ダイニングテーブルをオリジナルで造作しませんか?とデザイナーさんからご提案いただきました。」とUさん。一見、シンプルでどこにでもありそうなダイニングテーブルですが、カウンターの天板はブラックの人工大理石。下の箱のような部分には、リビングの床暖房のリモコンや照明のスイッチ、コンセントの差し口などが仕込まれているデザイン。もちろん収納も兼ねているので、来客の際にはさっとここからお茶道具なども出せます。そしてUさんが一番こだわったポイントはなんとバスルーム!「せっかくリノベーションをするのであれば、あっと驚くような変わったことをしたかったんです。パッと見て何だかわからないようなバスルームがあったら良いなと考えていました。」完成したバスルームの外見は秀逸。白い壁の真ん中にくり抜かれたブラックのガラス壁は、何だかその奥にシアタールームでもあるかのようなつくり。リビングのソファ横にあるため、まさかそこにバスルームがあるだなんて誰も想像出来ません。中に足を踏み入れると、内壁にもブラックのタイルが張られています。「本当はシャワーブースを作ってみたかったんです。だけど浴室で洗濯物を干すことが多いので、浴室乾燥が出来ることを重視してこの仕様になりました。」とUさん。バスルームとソファの間の間に設けた30㎝幅のちょっとした飾り棚には「古くから親しまれている、タイのセラドン焼きという焼き物を飾っています。旅行に行くと、かなりの量買って帰ってきますね。」とにっこり。その飾り棚やダイニングテーブル、さらには天井にまで、空間のあらゆるポイントには間接照明を仕込み、寛ぎのスペースをじんわりと灯します。そこで時間を共にしていると、暖かい光は空間だけでなく、Uさんの生活における大切なスポットを照らしているようにも見えました。リゾートホテルのようでいて、きちんと実用性も兼ね備えている。その絶妙なデザインのバランス感覚は、旅先での寛ぎ方を熟知しているUさんならではの空間の作り方だと感じました。
心にも身体にも上質な空間
実はUさん、クローゼットにもかなりのスペースを割いておりました。「家の中で一番多いのが洋服だと思います。ここに引っ越す際にだいぶ処分したのですが、それでも多いですね。」と語ります。中を覗いてみると、3.7畳あるウォークインクローゼットはもうほとんどが洋服で埋め尽くされていました。きっちりと収納できるよう、洋服のサイズに合わせた棚もあらかじめつくりつけてあります。まだここに引っ越して2週間。今は仕事が終わって帰り、寝るだけの忙しい日々を過ごしますが「もう少し落ち着いたら人の集まる家にしていきたいと思います」と8年前からの想いがいよいよ現実になるのを励みにしているそう。ルーフバルコニーの植栽も、これから手を入れて充実させていく予定なんだとか。「まだこの家に住んで間もないですが、自分の家が出来て寛いでいる瞬間はやっぱり幸せですね」と、ようやくつくりあげたマイホームに満足感の漂う横顔。ゆとりある空間のゆとりを残したまま、スペースのバランスにこだわり作り上げたリゾート感溢れる家。それはUさんの感性が生んだ、暮らしを心を豊かにするラグジュアリーな空間でした。