全面タイル貼りの床が印象的な、約25畳のゆとりあるリビング。そこには窓から心地よい光が注ぎ、五つ星ホテルで寛いでいるような気分が味わえる、癒しの空間が広がっていました。
2人から3人へ
井の頭線の西永福駅から徒歩約5分。昔ながらの商店街を抜けて少し歩くと、S一家のお宅が見えてきます。夫妻と今年の1月に生まれた息子の3人が暮らすこの部屋は、ちょうどお子様が誕生した頃に完成しました。「子供が生まれたら当時の家は手狭になると思ったので、妊娠が分かってすぐにマイホーム購入に向けて動き出しました」と当時を振り返る奥様。家族3人がゆとりを持って暮らせる80平米以上の物件が理想だったS夫妻にとって、予算を優先するなら中古マンションがマスト。しかし中古をそのまま買うのではデザイン面で物足りないと考え、リノベ済み物件を中心に家探しをスタートしました。最終的に5件くらい内見したそうですが、「ここだ!と思える物件には中々出会えなくて。この部分は気に入ったけど、ここはどうしても気に入らないとか段々と細かい要望が出てきて、『あれ?私たち思っていたよりも家に対するこだわりが強かったんだ!』って気づいたんです(笑)それからオーダー型のリノベにシフトしました」とS夫妻。そしてフルオーダー型のリノベ会社を探す中で、nuリノベーション(以下、nu)に出会います。「nuさんのインスタで事例を見た時に、テイストに偏りがなくて、一人ひとりの要望にきちんと向き合ってくれそうだなと思ったんです。物件探しから一貫してお願いできるのも魅力的で、当初井の頭線は視野に入れていなかったんですが、この永福のマンションもアドバイザーさんが提案してくれて決めたんです」と奥様。都内であれば特段エリアに固執せず、ゆとりのある広さを第一条件に掲げていたS夫妻にとって、この約90平米の広さは何にも代え難い決め手になったそう。実は内見をしたのが夜で、日当りの良さを確認できなかったことだけが気掛かりだったそうですが、「2面採光で窓の面積も大きいので、住んでみたら想像以上に明るく風通しも良いです。前に高い建物がないので、視界が抜ける感じも好きですね」とご主人。近所には散歩できる大きな神社や公園があるそうで、都心に近接しながらも穏やかな街の雰囲気を感じることができるそう。
リゾートホテルに魅せられて
限りなく白に近い、落ち着きのあるグレーの磁器質タイル。そして、大空間にゆとりを持って配置されたインテリア。リゾートホテルのように非日常と安らぎを感じさせてくれるこの空間は、以前お2人が宿泊したスリランカのホテルからインスピレーションを受けた部分が多いと言います。「リゾートホテルの、『廊下なのに椅子が置いてあって休める!』みたいな、ひとつの空間の中で色々な気分を味わえるというコンセプトが素敵だなと思っていて。例えばリビングで寛ぐ場所がソファとダイニングだけじゃなくて、窓際に椅子を置いて外の景色が眺められるゾーン、本棚の側に椅子を置いて読書が楽しめるゾーンとか。リビングや家全体にそういう居場所を点在させたいなと思っていました」とS夫妻。そんなお2人に設計デザイナーが提案したのは、『in parallel』というコンセプトでした。“parallel=複数の出来事が同時に進行していく”そんなワードになぞらえ、色々な過ごし方が楽しめる空間をイメージ。出来上がったのは、玄関扉を開けると約25畳のLDKが広がる大空間です。「イメージ収集の時に参考にしていた画像は海外のお宅ばかりで、タイル貼りの家も多かったんです。だから憧れがあったというのと、元々持っていた木製の家具が映えるように床はタイルにしました。裸足で歩くとひんやりとした質感が気持ち良いし、子供の食べこぼしもさっと拭き取れてお手入れも楽です」と奥様。そんな奥様が一番こだわった箇所は、広々としたセミオーダーキッチン。壁付けのキッチンとアイランド型の作業台を組み合わせたセパレート型で、家具のように空間に馴染んでいます。「最初はアイランド型キッチンを検討していましたが、元々のキッチンがあった場所から移動させることが難しいと分かったんです。でもやっぱり会話が楽しめるキッチンにしたかったので、作業台をアイランド型にする案で落ち着きました!作業台を介して主人や遊びに来てくれた友人とコミュニケーションが楽しめて嬉しいです。」キッチンは実用性も非常に高く、ボディを床から少し浮遊させているため、その分足のつま先を奥まで入れることが可能。するとキッチンと体の距離が自然と近くなり、「本当に作業しやすくて便利です!デザイナーさんが提案してくれたんですが、さすがプロのアドバイスですね!」とにっこり笑う奥様。
オープンでパブリックなリビングと一味ちがった雰囲気を放つ、プライベートゾーン。土間から続く縁側を進むと扉のない3つの部屋が配置され、手前から寝室、WIC、子供部屋、そしてそのままリビングへと繋がっています。元々はリビングの窓際に縁側を設けることを検討していたそうですが、「デザイナーさんからの提案で、個室側にもってきました。リビングの窓際に縁側があるお宅が多いので、廊下兼縁側というオリジナリティが気に入っています」とご主人。フローリングの縁側を取り入れたプライベートゾーンは、木の温かみが感じられる安らぎの空間に。タイル貼りのスタイリッシュなLDKとのコントラストが引き立ち、寝室とリビングで異なる使い方ができます。寝室の壁には落ち着きのある濃いネイビーを、子供部屋には気分がパッと明るくなるようなスカイブルーのカラーを取り入れ、遊び心をプラス。夫妻の寝室と子供部屋は別々に設けられていますが、子供が小さいうちはお互いの雰囲気が感じられるようにと扉のないオープンな仕様にし、縁側を通じて家族をつないでいます。また、WICは引き戸でリビングと繋がっていて、ここを通れば洗面室からバルコニーまで最短距離でアクセスが可能。バルコニーで洗濯物を干すことを考慮して回遊性を持たせたそうですが、忙しい朝の時間帯など日常のあらゆるシーンでこの回遊性が役立っているのだとか。そして子供部屋の隣には、リビングと同じタイル貼りの予備室があります。「ここは将来家族が増えた時のための空間で今は誰も使っていないので、リラクゼーションスペースにしたいと思っています。シングルソファにオットマンを置いたりして、リビングのソファ席とはちょっとちがった、ひとりでぼんやりできるような空間が理想です。これから土間やリビングにも小休憩できる椅子を増やして、最終的にはスリランカで泊まったホテルのように仕上げていきたいですね」とご主人は語ります。
いくつもの居場所
この家に引越してきて約半年が経ち、マイホームの完成、子供の誕生と暮らしは大きく変化したというS一家。「育休中で家にいる時間が長いのですが、賃貸時代より“自分たちの家感”が何倍も感じられて、家にいる時間が楽しいし、寛げます。あと、リビングが広いおかげで息子がハイハイで動き回れるスペースも沢山あるし、改めて子供が生まれるタイミングで引越せて良かったと感じています」と奥様。その隣で取材チームに笑顔を見せてくれた息子くんもなんだかとても嬉しそう。友人が遊びに来た際は、質感が気持ち良いタイルの床に座って息子くんと遊んでいる人、ソファで寛いでいる人、キッチンの周りに集まって料理中の奥様と会話を楽しむ人…みんなが好きな場所を選んで、自由に楽しく過ごしている様子が嬉しいとS夫妻は語ります。
ゆとりのある総面積とS夫妻のセンスが相まってうまれた、いくつもの心地よい居場所。色々な過ごし方や気分で思い思いの時間を楽しめる、『in parallel』な空間が完成しました。