躯体現しの天井に、スタイリッシュなグレーの床。インダストリアルでラフ&クールな空間には、ご夫婦とワンコのハートフルな日常がありました。
迷う余地なし
「2年くらい前に友人が自宅をリノベして、遊びに行ったのがきっかけですね。家に入った瞬間『店かよ?!』って(笑)。キッチンがモルタル素材でイソップの店舗みたいにカッコよくて、リノベってこんなこともできるんだと衝撃でした」
そう話すSさんは、映像ディレクターのご主人と会社員の奥様のご夫婦。それまでリノベーションと言えば、昔ながらの“リフォーム”のイメージが強く、ご自身たちにとっては現実味がなかったものの、友人宅のリノベーションを機に一気に身近な存在になったと言います。勢いで不動産屋に行き、物件を探そうとしましたが……。
「不動産屋さんって、リノベのことまでは考えてくれないんですね。リノベ前提で物件を探していると伝えても、『それは買ってからお好きにどうぞ』といった反応(笑)。まず自分でリノベ会社を探して、見積もりを取って、それも合わせてローンを通してから家の申し込みをしてくださいね、と説明されました。大変だし、正直面倒だなと思いましたね」とご夫婦。そこで、ちゃんと情報収集しようとリノベーション雑誌を購入したのが、nuリノベーション(以下、nu)との出会いでした。
「本の中からそれぞれが好きな事例を選んだら、2つともnuさんの事例だったんです。物件探しからリノベまでワンストップでできると書いてあったし、それなら話を聞きにいってみようかって。説明にも納得できたので、他を調べることなくnuさんに即決しました」と、奥様は振り返ります。
いつかはペットを迎えたいと思っていたSさんは、ペット可をマスト条件に、nuのアドバイザーと一緒に内見を開始。10軒ほど回った末ようやく出会ったのが、この築18年の中古マンションでした。以前の持ち主が3LDKを2LDKにリフォームしていて、間取りはほぼそのまま活用できると思ったこと、駅までの並木道が穏やかな雰囲気だったことも決め手になりました。
「人が少ない方がいいなと思って、最初は小規模マンションを希望していたんですけど、修繕積立金や管理面を考慮すると、30世帯などある程度戸数がある方が好ましい場合もあると、アドバイザーさんが教えてくれて。私たちは世帯数が少なければ少ないほどいいと思っていたので、プロの視点でアドバイスしてもらえて助かりました。このマンションは35世帯くらいかな、私たちにとってはちょうどいいですね。それと、『この物件はないですね』とバッサリ言い切ってくれるアドバイザーさんのおかげで、迷う余地がなくて選びやすかったし、ウソがなくて信頼できました」と、ご夫婦は笑います。
離れたり繋がったり
Sさんが希望したのは、お酒を楽しめる家。ご夫婦ではもちろん、友人たちとも家飲みが愉しめるように開放感のある家にしたいと考えていました。また、近年は在宅勤務が増えたことから、家で各々が集中できる空間も必要でした。こうしてつくり上げられたのは、約20Jの広々としたリビングを設えた2LDK+WICです。
リビング横の居室にご主人のワークルームを、リビングの一画に奥様のワークデスクを設置。リビングとワークルームの仕切り壁に室内窓を設けて、視線の抜けをプラスしました。空間は遮断されているから、互いに会議や電話をしても音漏れの心配がなく、快適なワークタイムが叶っていると言います。
「それと、絶対に欲しかったのがWICですね。すべての服を“掛ける収納”にして、着替えるときにパッと見えるようにしたかったんです。賃貸時代はたたんで収納していたけど、それだと見えなくて存在を忘れちゃう服ってあるじゃないですか(笑)」と、ご主人。オフシーズンの家電やキャリーケースなどの大物も収まる広さを確保し、頼りがいのあるWICを実現しました。
インダストリアルなテイストが好きなご夫婦の希望で、天井は躯体現し、壁は白クロスをベースに。躯体現しにしたことで天高が最大になり、開放感に拍車がかかっています。床は全面、既存フローリングの上に塩ビタイルをのせ、コストコントロールに貢献。要所にブラックカラーを配すことで、全体的にラフな印象を適度に引き締めました。クロスするように配置した天井のダクトレールは、設計デザイナーが仕込んだ視覚マジック。視線が放射状に導かれ、空間がどこまでも伸びやかに感じられます。
「一番こだわったのは造作キッチンですね。この家の雰囲気にマッチするように、ヘアライン加工のステンレス天板にして、コンロとシンクの間と奥行きをたっぷり取ってもらいました。手持ちのダイニングセットをキッチンに隣接させたいと設計デザイナーさんに伝えたら、腰壁にコンセントをつけてくれて。卓上でホットプレートを使うときにちょうどいい高さで、すごく便利なんです」と、奥様。以前の住人が残してくれたガスコンロと換気扇はそのまま引き継げたのも、リノベーションならではの幸運でした。
そして、この家を語る上で外せないのが、廊下とLDKの間の引き分け戸です。2枚の戸を左右にスライドさせて開閉する上吊りタイプの扉で、一瞬「これは自動ドア?」と見紛うほどダイナミックかつスムーズな開閉ぶり。全開放すると、玄関・廊下・LDKが一体になり、この上ない開放感が生まれます。
運命的な出会い
こうして、総面積71㎡とは思えないほどの開放感と快適さ、デザイン性まで網羅したマイホームを完成させたSさん。賃貸時代と比べて圧倒的に仕事しやすくなり、効率もアップしたそうです。モノトーンの空間に映えるビビッドカラーのポスターを飾ったり、「JOURNAL STANDARD FURNITURE」のソファや「WALL」のテレビスタンドを迎えたりして、早速この家での暮らしを楽しんでいます。
竣工当時から一番変わったのは、新たな家族が仲間入りしたこと。ニコニコした表情が愛くるしい、ミニチュアシュナウザーのトロワちゃんです。Sさんはペットも快適に暮らせる空間づくりを意識したそうで、床材に塩ビタイルを使ったのも、犬がツルツル滑らないこと、オシッコを失敗しても掃除しやすいことを考慮してなのだとか。
「ここに引越して来てから3カ月後に、知り合いの家でワンコが生まれる話が舞い込んできたんです。ちょうど欲しかった犬種だったし、何よりペットが飼える家ができたし、これはもう運命!と思って」と、奥様。家中を軽快に走り回るトロワちゃんは、はじめからこの家に住むことが決まっていたかのように、毛色までインテリアにマッチしています。
「キッチン周りの動線がいいし、何より広いので、お酒専用ワゴンをつくってダイニングテーブルまでガラガラ引いています(笑)。ゆったりお酒を飲んでいる時間は、最高に至福ですね。友人や仕事仲間がかなり遊びに来てくれるようになって、一緒に仕事したり、お酒を飲んだりしています。多いときは週2くらいかな」と、ご主人。実は今、お兄様もリノベーションを検討していて、全力でおすすめしているのだとか。
「間取りや素材をどうしようかと考えているとき、めちゃめちゃワクワクしたし、実際にそれが形になっていくのも楽しかったですね。運命的にすぐワンコを飼えたし、リノベがきっかけで人生が色々と充実しています」と、奥様は目を輝かせます。
リビングにおしゃれな収納家具を迎えたり、既存活用中のバスルームを新しくしたり、まだまだやりたいことが尽きないというSさん。空間も暮らしもココロも、ますます充実していくことでしょう。
Interview & text 安藤小百合