ミッドセンチュリーな世界観が漂うLDKと、一転してファンタジーの世界に迷い込んだような気持ちを想起させる可愛らしいドレスルーム。夫婦の「らしさ」を素直に落とし込んだ、2人の住処を訪ねました。
心強い存在
無垢チークのフローリングを全面に敷き詰めた、シンプルで静謐な空間。選りすぐりのインテリアが佇むこの家で暮らすMさんは、兼ねてからマイホームの購入を熱望していたといいます。
「昔からインテリアが好きで、少しでも早く自分の理想の空間で暮らしたいと思っていました。マイホームを購入するまでは新しい家具を買うことも控えていたので、“賃貸に住んでいる時間がもったいない!”と常々考えていて」と、ご主人。奥様の地元である東村山エリアに限定し、当初は戸建なども視野に複数の住宅展示場にも足を運んだのだそう。
そんなご主人に対し、「私は最初から“マンションリノベーション派”だったので、戸建の展示場には行ってないんです(笑)。でも主人の家にかける思いの強さはよく知っていたので、納得いくまで自分の目で見て、こうしたいと思う方法を選んで欲しいなと思っていました」と、奥様も笑顔で続けます。
ご主人が情報収集し、お二人で吟味するという流れで様々な選択肢を検討。希望する立地や予算、内装の自由度などの面から“中古マンション+リノベーション”に改めて魅力を感じ、リノベを前提とした物件探しをスタートしました。
「nuリノベーション(以下、nu)さんに決めたのは、デザインの自由度はもちろん担当してくださったアドバイザーさんがとても頼もしかったからでした。内見の時も、なんとなくでお部屋を見てしまう私たちの横で壁を軽く叩いて構造を確認したり、天井高を測ったりと忙しく動き回ってくださっていて(笑)」。身振り手振りで楽しそうに内見の様子を振り返るお二人の表情からは、アドバイザーとの信頼関係が伺えます。
内見の末、最終的に購入したのは高層階・東向きの一室で、眺望も抜けた気持ちのいい物件。同じマンション内に奥様のご実家があるという願ってもない好条件でしたが、もう一つ背中を押されたエピソードがあるそう。
「アドバイザーさんが『既存の間取りが特徴的で面白い!リノベ会社の目線からも、この物件はおすすめです!』と太鼓判を押してくださって。リフォーム済みの物件でしたし予算的にも既存を生かすことが前提だったので、その言葉は心強かったです。契約なども、独特の雰囲気に飲まれてしまいそうだったんですが、アドバイザーさんが細かなところまで説明してくれたり相手の仲介会社さんとの間に立って話をしてくださって。終始安心して契約を進められたよね」とご夫婦で微笑みます。
やさしい遊び心
アドバイザーが「面白い!」と太鼓判を押した物件。それは東西にバルコニーがついた一見よく見るタイプの長方形の物件ですが、お部屋の真ん中に浴室、洗面室、トイレが縦並びに配置されていて、LDKとプライベートスペースがちょうど半分ずつの広さでゾーニングされた間取り。既存を生かしつつMさんの要望を叶えるためにぴったりな物件だと感じたそう。
「広いLDKと同じくらい、主人のワークスペースと私のドレスルームをつくることも譲れない要望でした。この位置に水回りがあることで“何かを妥協して狭くする”ということもなく、全てのお部屋にちょうどいい広さを確保した間取りを実現することができました」と、奥様。
床材は、水回り以外の全ての居室に無垢のチークフローリングを採用。後から変えるのが難しい部分であること、賃貸に住まわれていた時から一番違和感を感じていた部分であったことから、素材選びも絶対に妥協したくなかったとご主人は話します。
「ミッドセンチュリーなインテリアに囲まれた空間にずっと憧れていたので、リノベーションと同じくらい新しく購入する家具への思いも強かったんです。だからこそ、床材は本物じゃなきゃダメだなって。洗面以外の設備は既存利用しているので、その分素材にはしっかりこだわりました」。
一方、壁や天井、造作のリビング収納やキッチンバックカウンターは全て白で統一。元々木目調だった既存キッチンの面材も今回のリノベーションで白のシートを貼ってリメイクし、空間に馴染むデザインにアップデートしました。
打合せの中で特にお二人の頭を悩ませたのはプライベート空間に設ける3つの要素(ベッドルーム、ワークスペース、ドレスルーム)をどう配置するかということ。初回のプレゼンテーションで設計デザイナーから提案されたプランをベースにいくつかレイアウトを検討し、正方形に近いベッドルームとワークスペース+縦長のドレスルームという今回の間取りに辿り着きました。
「ドレスルームが縦長のお部屋になることに最初は『大丈夫かな?』と思いましたが、毎回デザイナーさんがメジャーで通路幅をシミュレーションしてくださって、使い勝手がイメージしやすかったです」。そんな奥様念願のドレスルームは、大好きなディズニーアニメ『ピーターパン』のヒロイン・ウェンディのお部屋をイメージした空間。淡いピンクと水色の壁紙、扉付きのクローゼットに加えアーチをあしらったオープンクローゼットも設け、物語からそのまま飛び出してきたような可愛らしい空気を纏っています。時々遊びに来るという姪っ子ちゃんもこのドラマチックな空間の虜だそうで、「通路を行ったり来たりして、プチファッションショーを楽しんでます(笑)」と、奥様。
一方、寝室を介してつながるご主人のワークスペースは、ヴィンテージのイームズチェアやチーク系の家具を合わせたアメリカンテイストのお部屋。オープンシェルフには古着が好きだというご主人の洋服が丁寧に整頓されていて、まるで古着屋さんのよう。壁にはポップなデザインポスターと共に、カラフルな可愛らしい絵も貼られていて…。
「週1回くらいの頻度で甥っ子が奥さんの実家に遊びに来るので、遊び相手として僕たちが呼び寄せられることが多くて(笑)。ヒゲとかメガネとか、特徴を捉えて似顔絵をプレゼントしてくれるんですよ」と嬉しそうなご主人。「たまにこの家にも遊びに来ることがあるんですが、自分の絵が飾ってあるのを見て満足げな顔をしているのも可愛くて(笑)」。
おしゃれで洗練されているのに、程よく緊張感が抜けて温かい気分になるM邸。その独特の空気感の秘密は、お二人のやさしい遊び心から来ているのだということが伝わってきます。
家づくりの教科書
リビングに造作したオープンシェルフに飾られたオーナメントやアートブック。その中にはページの所々に付箋が貼られ、お二人にとっての“家づくりの教科書”になったという思い入れのある一冊がありました。
「ピンタレストやインスタも活用しましたが、イマイチ自分のイメージをうまく集められないなと感じるところもあって…。アナログですが、この本を毎回打合せに持参しました」と、ご主人。タイトルにも『Mid-Century』と銘打たれたその本は、床の色味やインテリアの色・素材のバランスなど、M邸を彷彿とさせるデザイン要素が満載されています。
「打合せで迷った時は『教科書、出しますか!?』って、デザイナーさんにも何度もこの本を見てもらったよね(笑)。おかげで私たちが創りたい世界観そのままの空間が出来上がりました」と嬉しそうなMさん。
また、お二人の暗黙のルールとしてLDKにはミッドセンチュリーの世界観を守りつつお互いの好きなものを置いているそうで、今回のリノベーションを機に購入した<USM/ハラー>にはご主人の趣味であるレコードがぎっしり。休日は好きな曲を聴きながらラウンジチェアでぼーっとするのが最高なんだそう。
一方、ディズニーが大好きな奥様はミニーちゃんのぬいぐるみをソファに。LDKの世界観に馴染むよう、レトロなデザインのヴィンテージミニーちゃんを厳選したと楽しそうに教えてくれました。
「ダイニングの壁にかかっているアートは主人が『これかな〜、いやこっちかな〜』と悩んで購入したもので(笑)、窓辺のグリーンは私が買ってきたものです。お互いの好きなものに囲まれた暮らしは、やっぱり最高ですね」と取材を締め括ってくださったMさん。
お互いの好きなものを素直に受け入れつくり上げた大好きなご自宅で、温かい日常が続いていきます。