モク・白・コンクリートで構成されるざっくりとした大きなハコと、空間に調和しつつも凛とした存在感を主張するインテリア。そんなお部屋に暮らす仲良しな3人家族のストーリーです。
お気に入りは、赤い電車が走る街
システムエンジニアのご主人とグラフィックデザイナーの奥さま。関西出身のお2人はご主人の転勤をきっかけに東京での暮らしをスタートさせました。最初の住まいは丸ノ内線の方南町駅。それ以降4回の引越しをしたそうですが、そのあとも必ず丸ノ内線沿いのお部屋に住まれました。「あの赤い電車じゃないと落ち着かなくって(笑)」と笑うお2人。そんなお2人が賃貸暮らしからマンション購入にシフトした理由を伺うと「娘が幼稚園に入る前に長く住める場所を探そうと思って。」とご主人。マンションを購入するにあたり、リノベーションは当たり前の選択肢として2人の頭の中にあったと言います。「いつかリノベしたいねっていう話は出ていたので、リノベ会社のInstagramをいくつかフォローしていたんですが、その中にnuさんがありました。」と奥様。実際にリノベーションをするとなった時に、フォローしていたリノベ会社の中で物件探しから一貫して依頼できるリノベ会社をピックアップし、いくつか検討して周ったと言います。「限られた予算の中でもやりたいことが色々あって。それが一番叶えられそうだなって感じたのがnuさんでした。」とご主人。リノベーションへの期待を膨らませながら、早速nuリノベーションで物件探しを開始しました。新しい住まいももちろん丸の内沿線を希望。いくつか見て回った中で最終的に決めたのは築44年のマンションでした。決め手は耐震への安心感。年季の入った見た目と裏腹に、新耐震基準をしっかりとクリアしているところがポイントになりました。「水回りをそのまま使えたのもラッキーだったよね。」と奥様。それに対してご主人は「使えるところは全部使おうと思って!」と笑います。築年数が古くても、基準や条件を満たしている部分は有効活用して住むことができるリノベーション。そんなリノベーションにぴったりな物件との出会いから、3人家族の住まいづくりが始まりました。
最高の広狭バランス
56平米という、決して大きくはないスペース。開放感のあるリビングを確保しつつ、家族3人が思い思いの過ごし方をする場所もきちんと確保するために、スペースをどれだけ賢く利用できるかが設計の鍵となりました。「とにかくリビングを広く保ちたかったんです。寝室をギリギリまで詰めたらどうかなと思って、カプセルホテルのベッドを置く提案とかもしてみたんです。やっぱり住宅に入れるのは難しいみたいで断念しちゃったんですけど(笑)」とご主人。3人で同じ時間を過ごす場所はゆったりと、それ以外の場所は出来るだけミニマムに。そんな考えのもと出来上がった間取りは、WIC、キッチン、寝室という実用的な3つのスペースを、玄関から見て左側の壁の内側に収めたワンルームでした。「この間取りだとキッチンを既存の場所から動かす必要がなくて。その分コストが浮いたのもよかったし、壁の内側にすることで生活感を隠せるのも嬉しいです。」と奥様。キッチンと隣り合うロフトは下階が子供部屋、上階が寝室になっています。コンクリートの壁の小さなスペースにおもちゃがいっぱいに詰まっている子供部屋は、誰もが子供時代に憧れた秘密基地を思わせるようなワクワク感。このスペースにカメラを向けると、娘さんがおもちゃを1つ1つ紹介しながらポーズを取ってくれました。
今回のリノベーションでは、コストバランスも重要なポイントになりました。その理由は、この機会にご主人が念願だったという“ルアークオーディオ”のスピーカーを迎え入れることにしたから。クラシカルなデザインと最新技術の両方を併せ持ち「世界で最も美しいラジオ」と称されるそのオーディオは、リノベ全体の予算の中でも大きな割合を占めました。内装のコストを抑えながらも、ルアークオーディオを迎え入れるにふさわしいリビングを作り上げるために、デザイナーから提案されたのはフローリングにベニヤを使用することでした。「ベニヤを張るって言われた時、『ベニヤ?大丈夫なの?』って思ったんですけど(笑)デザイナーさんを信じてそれで進めました。」とご主人。もともとダイニングの床にはグレーのフレキシブルボードを使用することが決まっていましたが、タイル状のフレキシブルボードに合わせベニヤも同じ規格で貼ることで統一感を持たせた仕上がりに。幅の違う四角形が一列ずつ交互に並んだデザインはデザイナーのこだわりです。肌理が細かく木目が主張しすぎないベニヤの表情は隣り合うフレキシブルボードともよく馴染み、さらにはその洗練された印象がオーディオの主役感を引き立てます。ソファやダイニングセットは北欧スタイルのオーダー家具を取り扱うSAC worksで揃えられました。念願のオーディオとお気に入りの家具が配置されたリビングを見て、ご主人はリノベーションした喜びを感じるそうです。
自由に遊ぶワンルーム
縦だけでなく上下の空間までうまく使い、スペースをとことん有効活用した設計によって生まれた15帖のリビングスペース。玄関側から窓の外まで広がっていくような大きな一つの空間で、家族3人が自由に過ごしています。「私は手前のデスクで仕事をして、娘はダイニングで絵を描いたり何かを作ったりして、奥のソファで主人がテレビをみて過ごしていることが多いですね。」と奥様。別々のことをしながらも、同じ空気を共有していられる絶妙な距離感がこのお部屋の魅力だと感じました。「設計中は想定してなかったんですけど、娘はロフトの下から玄関の方までおもちゃを持って行って遊んだり、この長い壁に自分で描いた絵を貼って美術館ごっこをしたり、とにかく自由に楽しんでいます。」と奥様。取材中にも絵をたくさん描いてスタッフに披露してくれたり、お部屋を案内しておもてなししてくれた娘さん。このお部屋の楽しみ方を誰よりも知っているのは、きっと彼女なのかもしれません。壁や廊下など、空間を仕切るものを最小限にしたフレキシブルなワンルーム。上質なスピーカーが奏でる心地いい音楽を背景に、仲良しな家族3人は自由な生活を楽しんでいます。