それぞれに個性を放つインテリアと、それをまとめ上げるダークな色合い。揺るぎないこだわりだけを突き詰める潔さが、この世に二つと無い『男の城』を完成させました。
『真新しさ』は要らない
IT系企業の経営のかたわら、エンジニアをされているKさん。もともと千葉の賃貸マンションに暮らしていましたが、職場が都内に移転するのきっかけに引越しをすることに。どうせ東京に住むなら、とマンションを購入しリノベーションをすることを決断しました。分譲マンションの画一的な雰囲気が好みと合わず、「新築っぽさ」を一切排除した空間を望んでいたというKさん。そんな思いから、自分の好きなテイストが100%反映された空間を作り上げることのできるリノベーションを検討し始めました。たまたまnuリノベーション(以下、nu)のサイトにたどり着き「とりあえず話だけでも聞いてみよう」というラフな気持ちで来社されたと言います。依頼する決め手になったのはnuが手がけた施工事例。理想とする雰囲気に近い施工事例があり「ここになら頼んでもいいかも」と思ったんだそう。早速nuで物件探しを開始しますが、物件に求めた条件はただ一つ、職場からのアクセスの良さでした。最初に検討していたエリアではなかなかいい物件と巡り会えず、仲介アドバイザーの勧めで少し場所を移動した上野にも視野を広げます。そこで出会ったのが今住んでいるこのマンション。半年以上の時間を費やしてようやく出会えた今の物件ですが、どこへ行くにも便利でアクセスの良さを日々実感しているんだそう。賑やかな駅周りでは買い物に困ることもなく、今は休日の散歩やお店の発掘を楽しんでいると話します。
突き詰めたダーク
デザインにおいて最初からマストで決めていたのは、フローリングにまつわることでした。新築マンション特有の明るくツルツルした床の質感がとにかく嫌だったというKさんは、フローリングにはダークな色味の無垢材を使用することを絶対条件にしていました。濃い色味のフローリングというキーワードからデザイナーが「こんなイメージはどうですか?」とお見せしたのが、nuが過去に手がけた『MAJESTIC』という事例。Kさんと同じシングル男性が暮らす、暗い色味の無垢フローリングが特徴のマニッシュなお部屋です。余計な真新しさが排除された落ち着いてラグジュアリーな空間は、Kさんが思い描いていた理想にぴったり。その物件からヒントを得て徐々にイメージを膨らませて完成したのは、高級感のあるクリフローリングとダークグレーの壁、そして躯体現しの天井で構成されたダークな空間でした。部屋の中心でガラスブロックが白く輝くキッチンの腰壁。内側にはLED照明を仕込み、明かりを点灯すると白い光がガラスを通して乱反射する仕様にしました。こちらもリノベを始める前からKさんが必ず取り入れたいと決めていたもので、厚みを感じさせる大きなブロックは空間の中で異質な存在感を放っています。もう一つキッチンで叶えたかったのが、時間のない朝の食事をスムーズに済ませるためのカウンター。こちらは透明感のあるガラスブロックとは相反するようなざらっとした質感のモールテックスで仕上げました。仕事が忙しく家にいる時間が少ないというKさんですが、何気ない朝の食事の時間も、高級感溢れる素材で作られた空間が非日常的な時間を演出します。
城を構成するもの
「開放感が欲しかったので『余計な壁やモノが何もない状態にしてください』とお願いしていました。それなので細かい要望は多くなかったですね。」と話すKさん。その分打合せはスムーズに進んだのかと思いきや、時間をかけた部分は他にあったのだと言います。それは間取りについて。とにかくリビングを広く大きく取るために、お風呂の位置などを熟考したと言います。もともと3LDKだった物件を、リノベーションで1LDKに。寝室と水回りを玄関側にまとめ、それ以外の部分を全てリビングに充てました。無駄な壁や個室を全て無くして生まれた広いリビング。当初は全ての壁と天井を躯体現しにする想定でしたが、躯体の状態を考慮しダイニングの一部以外をグレーのクロスに変更。そうすることで返って天井と一部の壁に残した躯体のハードな質感が際立つようになりました。ハードな質感の大きなハコの中では、革製のソファや個性的なインテリアの堂々たる佇まいがより目を引きます。4~5年に渡って愛用しているというHALOのソファは、身長の高いKさんでももたれると包み込まれてしまうような大きさ。時代を超えて愛されてきたヴィンテージもののような風格で、ここに座ってくつろいでいる時が何より幸せな時間なんだと言います。ダークトーンの壁と床に、個性的なインテリアたち。好みを100%反映させたこのリビングは、何よりも贅沢なKさんの城となりました。
削ぎ落として見えてきたもの
デザインの打合せ期間について、「楽しかったですよ!好きな空間についてのことなので、時間がかかっても全然苦じゃなかったです。」と話してくださったKさん。続いて「またぜひお願いしたいです。」と嬉しい一言をつけ加えてくださいました。一度リノベーションを経験して、こうすればよかったと思うことや、新しくやりたいと思うことが増えてきたんだそう。数年経ったら、今の家をまたnuでリノベーションしたいと話してくださいました。
「よく買い物はするんですけどその分捨てるので、モノは少ない方です。」そう話すKさん。収納へのこだわりもあまりなく、打合せ中にデザイナーから「収納、少なめですが大丈夫ですか?」と何度も確認されたと言います。黒やグレーで構成された空間でも必要以上の重さを感じないのは、余計なモノや壁による圧迫感が一切排除されているから。そしてそんな空間には、住む家が変わっても場所を移して愛し続ける、選び抜いたインテリアたちがレイアウトされています。いらないものを最大限削ぎ落として完成したのは、Kさんのこだわりがそのまま形になった堅牢で揺るぎない一つの塊。自分だけの好みをとことん突き詰め、どこよりも寛げる至極の空間が完成しました。