東京都品川区に暮らす、3人家族。マットなタイル、ダークトーンの無垢材、アクセントのブラックカラー…。心落ち着く素材に包まれたT邸は、家族の笑い声が響き渡る、朗らかな空間に仕上がっていました。
着地点は、馴染みの街。
「戸建を検討していた時期も含めると、4.5年越しにマイホーム購入の夢が叶いました」。そう話すのは、アウトドア好きのT夫妻。お子様が生まれたことをきっかけに、当初は戸建の注文住宅を建てようと土地探しから開始したのだそう。しかし、「都内に絞ると、広さや立地など条件に見合うものに中々出会えなくて。約2年間ほど土地を探して、最終的にマンションにシフトしたんです。注文住宅のように“自分好みの家が創りたい”という気持ちは変わっていなかったので、ゼロから自由に創れるリノベーションを選びました」と奥様。それから、情報収集のために見ていたリノベーション専門誌「relife+」でnuリノベーション(以下、nu)を知り、実際に個別セミナーへ参加。「沢山の会社が掲載されている中で、一番好みに近い事例がnuさんでした。リノベを見越した物件購入ができる所も魅力的でしたね」とお2人。nuへ依頼することを決め、以前から住んでいた馴染みのある不動前周辺で物件探しを開始します。趣味のアウトドア用品が沢山仕舞えて、家族3人が余裕を持って暮らせる80平米前後の広さを条件に、トータルで10件ほど内見。最終的に購入したのは、以前の家から徒歩5分程の場所にある約85平米の物件でした。実はここ、奥様の通勤途中にあるマンションで、いつも前を通る度に気になっていたのだとか。「広さも、立地も満足でした。ただ、元の間取りが3LDKで細かく分かれていたので、本当にこの壁を壊せるのかな?と不安もあって。でもアドバイザーの方が『この壁は壊せる、壊せない』をハッキリ教えてくれたおかげで、迷いなく購入を決断できました」と当時を振り返る奥様。「真摯に対応してくれたその姿が、信用にも繋がりましたね」と、ご主人が続けます。マンションのすぐそばには子供が遊べる公園や小学校があり、今回の引越しは子育ての面でもプラスが多いと話してくださいました。
心落ち着く素材に包まれて
「もちろん好きなテイストはあるんですけど、“〇〇テイスト”で表現できるような偏った雰囲気は好きじゃなくて。一見シンプルで普通だけど、要所にこだわりが光っているような“やりすぎない空間”を目指しました」と語るT夫妻。そんなお2人の想いに、設計デザイナーは『matte』(マット)というコンセプトを提案。マットな質感がもたらす落ち着いた雰囲気のように、上質で、心から寛げる空間を目指してデザインを進めてきました。家族で長い時間を過ごすLDKは広々と、その分子供室と寝室はミニマムに。そして夏には釣りやキャンプ、冬にはスキーなど家族でアウトドアを楽しむT家族にとって、広い収納を確保することが必須条件でした。そうして完成したのが、この2LDK+趣味部屋+土間+パントリーのプランです。玄関を入ってすぐ左手に設けた土間には、見ているだけで楽しい気持ちになるアウトドア用品が所狭しと並んでいます。そして廊下を進むと、右手にもうひとつのアウトドア部屋が現れます。実はここ、ご主人の趣味部屋。まるで小さなショップのように、釣竿や細かな工具類がディスプレイされています。「ここはガレージみたいな空間が良いなと思って、壁材に有孔ボードやラーチ合板を選びました。結果的にコストダウンにもつながって、一石二鳥です」とご主人。その先のブルーグレーの扉を開けると、約15畳の広々としたLDKが広がっています。空間の印象をつかさどる床には濃いめのローズウッド色の無垢材を敷き、落ち着きのある雰囲気を演出。なかでも目を惹くのは、ブラックのアクセントカラーが印象的なキッチンです。システムキッチンを造作の腰壁で覆い、ニッチを設けたタイル貼りのデザインに仕上げました。「料理中に手元を見られるのが嫌だったので、腰壁の高さを少し高めに設計してもらいました。マットな質感のタイル 、木、ブラックの塗装など異なるテクスチャーを取り入れつつも、まとまりのあるデザインでとても気に入っています」と奥様。上部には同じブラックで統一した吊り棚を設け、視覚的にキッチンがゾーニングされるよう仕掛けています。
キッチンのバックカウンターから続く木の造作ワークデスク。自宅で仕事をすることも多いご主人の使い勝手を最優先にデザインしました。特に悩んだのは木の色で、フローリングと同じ色では全体的に暗くなりすぎてしまうため、少しトーンを変え、いくつか調色したもの見比べながら決めたのだそう。全長2.5m超えのワイドスパンのため、家族3人で並んで座ることも可能。リビングの中に取り込んだことで、いつでも家族の雰囲気を感じられるスペースとなりました。そしてT邸をぐるりと見渡すと、一味違った空気を放つタイル敷きのインナーテラスが。「『広いLDKなので、少し贅沢な空間の使い方をしてみませんか?』とデザイナーさんに提案してもらって、陽当たりの良さを活かしたインナーテラスを設けました。十分すぎるくらい光が注ぐので、植物を育てるのにもってこいですね。壁は建てていないのに、床材を切り替えただけでひとつの部屋ができたような感覚です」とご主人。色鮮やかなグリーン、海外旅行で買ったペルーの絨毯やトルコのクッションカバーなどカラフルなテキスタイルで彩られたそのスペースは、異国情緒溢れる雰囲気が感じられます。目を惹くハイセンスなインテリアは空間全体に溢れていて、「ソファ以外、ほとんど新調しました。マイホームを買った時のためにとっておきたくて、賃貸時代はあまり買わないようにしてたんです。特に気に入っているのはダイニングの照明で、大阪のアンティークショップまで行って選んだ一点ものなんですよ」と朗らかに話します。
ちょうど良い心地よさ
リノベーション後は家への愛着が一層強くなったというT一家。遠出をしなくても、休日は必ず出掛けるというアウトドア派のご主人でしたが、「リノベ後は家にいる時間が格段と長くなりました。職業柄外出が多いためカフェで仕事をする機会も多いのですが、本当は家で仕事をする時の方が何倍も快適です!リラックスできる空間で仕事ができるのは嬉しいことですねリラックスできる空間で仕事ができるのは嬉しいことですね」とご主人。隣でインタビューを聞いていた5歳の娘さんも「今のお家の方がすき!保育園のお友達もたくさん遊びに来たよ」とにっこり笑って見せてくれました。
コンセプトである『matte』が“つや消し”を表すように、ピカピカしすぎない、ちょうど良い輝きに包まれたT邸。そこは家族3人にとって心から落ち着ける、穏やかな空間に仕上がっていました。