エントランスからLDKまで、明るい自然光に包み込まれたN邸。nuリノベーションで9年越し、2回目のリノベーションをすることで見えてきた、暮らしに求める本質とは。
愛着ごとお引越し
東京都板橋区。静かな住宅街に位置する築20年のマンションの一室で、Nさん一家は暮らしています。
9年前、同マンション内の別住戸をnuリノベーション(以下、nu)でリノベーションしたNさんでしたが、息子さんの成長や娘さんの誕生をきっかけに手狭さを感じるようになり、もう少し広い家への住み替えを検討し始めたといいます。
「前の家も気に入っていたんですが、4人家族という想定でつくった家ではなかったので。“子供たちそれぞれに個室を”と思うと広さや部屋数の面から住み替える必要が出てきて、なるべく生活環境を変えない範囲で物件探しを始めました」とNさん。近隣の中古マンションや新築のタワーマンションなども幅広く内見しましたが、しっくりくる物件にはなかなか出会えなかったと振り返ります。
「共用部の綺麗さだったり、手直しなしですぐに住み替えられる面だったり、新築には新築の良さを感じる部分もありました。でもやっぱり、一度リノベした家に住んでしまうと設備や内装などには満足いかないものもあって…」。
そうして様々な選択肢を熟考しながら1年ほどが経ったある日、同マンション内の約100㎡の一室の売却情報に巡り合ったNさん。広さも十分あり、角部屋で全ての個室に窓が配置されている点が魅力的。さらに、今回のリノベーションでは“ゆっくりじっくり”というよりは、できるだけ早く住み替えたいという気持ちもあったため、もともと3LDKが確保されたこの物件は大きく間取り変更をする必要がなかった点も購入の決め手になったんだとか。
こうして住み替え先が決まり、同時にリノベーションの計画が始動。リノベ会社はいくつ比較検討しましたか?と尋ねると、「迷わずnuさんへ!」という嬉しいアンサーが。「以前の自宅のデザインも気に入ってましたし、比較検討する余地はありませんでした」と朗らかに語ります。
こうして約9年ぶりにnuのオフィスを訪れたNさん。長年愛用しているというダイニングテーブルやソファ、奥様のお父様がDIYしたというダイニングベンチやサイドテーブルなど…。思い入れのある家具たちを新居でも使いたいと考えていたことから、愛着のある暮らしをそのまま受け入れる器になるような空間をつくり出すべく、設計デザインの打合せがスタートしました。
デザインと暮らし
家族が成長したこと、そして2回目の家づくりということもあり、設計デザインの打合せで重視するポイントも前回とは少し変化していたといいます。
9年前のリノベーションでつくり上げたN邸は、リビング収納やWICなど、全体的にオープンな収納が特徴的なデザイン。メインフロアには無垢フローリングを敷き詰め、玄関はモルタル。その一角にはワークスペースをゾーニングし、背面にはブラックフレームの内窓…と、リノベならではの要素を詰め込んだ空間でした。「大好きなデザインだったし、それ自体は間違っていなかった」としつつも、息子さんが小学校に入学した頃からプリントや勉強道具などの量が一気に増え、家の中で目につくようになっていったんだとか。
「扉付きのリビング収納や、メンテナンスのしやすい床材など、いわゆる新築にあるような仕様って、万人に受け入れられるだけあって住み心地の良い面もあるんだということを9年間で実感したんです。だから今回は極力シンプルに、長く暮らすことを一層意識して計画していきました」とNさん。その思いが如実に現れているデザインの一つが床材で、LDKや水回りには塩ビタイル、廊下には“ココフロア”と呼ばれるビニールと織物を融合させた床材を採用。メンテナンスのしやすさもありますが、これは長年共に暮らしてきた愛犬への気遣いもあって選んだ素材なのだそう。
「以前の家では無垢フローリングで滑ってしまって歩きづらそうで。9年間、ほとんどフロアマットを敷いて過ごしていたので、せっかく選んだ素材感を味わいきれなかったんです。だから今回は犬の足腰にもやさしく、私たちもデザインを楽しめる床材を吟味して選びました」とNさん。リビングのタイルも、表面に少し凹凸感のあるものを選定することで家のどこにいても愛犬が心地よく過ごせることを重視。「当初は白をイメージしていましたが、デザイナーさんの勧めでベージュが混じったニュアンスのある色にしました。イメージを集めるうちに、私の中では『とにかくシンプルに』とテイストが偏りすぎてしまっていたので(笑)。この色にして良かったなと思っています」と楽しそうに打合せを振り返ります。
また、既存の間取りを最大限に生かした今回のリノベーションでは、間取りにメスを入れたのは二箇所だけ。
一つはエントランスで、寝室の壁を70cmほどセットバックすることで玄関の間口を拡張。帰宅時に開放感を感じられる空間にアップデートしました。廊下の壁の一面に鏡を取り付けたのは、デザイン面ではリノベーションを奥様に一任していたというご主人からのリクエストだったそうで、開放的なエントランスにさらに奥行きを演出しています。
「廊下に面した収納にブラックガラスの引き戸を採用したのは、物件探しの時に内見した新築マンションで目にしたデザインを参考にしたんです」と、Nさん。新築か、リノベーションかに捉われず、自分たちの物差しで“いい”と感じたものを上手に取り入れることで、デザインと住み心地の良さの最大値を引き出しています。
二つ目の間取り変更ポイントは、リビングに設えたワークスペース。テレビボードの背面に高さ185cmほどの壁を立てることで、繋がりつつも独立した家族のホームオフィスをつくり出しました。ワークスペースの突き当たりには以前の家でも何かと便利だったという押入れサイズの奥行きの深い収納を設け、キャンプ用品やアート作品を収納するための箱などが仕舞われています。
ワークスペースを計画する際はLDKからの見え方にもかなりこだわったといい、「抜け感はあるけど、丸見えにならない絶妙な高さにこだわりたくて。通路になる窓際はディスプレイ棚のように使って、ぎっしり本を詰め込むのはその横のオープンシェルフ、と役割を分けることで、雑然とした感じが出ないようにこだわっています」と続けます。
シンプルながらも細部まで計算されたこだわりが、N邸の洗練されたデザインを生み出しています。
大切なモノと共に
全体的に白やベージュなど、シンプルなニュアンスカラーで統一されたN邸ですが、お子さまの部屋はそれぞれ黄色とピンクのアクセントカラーで彩られています。
「息子の部屋は本人に好きな色を選んでもらおうと決めていて。黄色の中でも、いろいろな色味を見比べて、この色を選びました。娘は打合せ当時はまだ自分で色を選べる年齢ではなかったので私たちが決めましたが、今ではすっかりピンク好きです(笑)」。終始打合せに同席してくれた2歳の娘さんがその日履いていたのは、淡いピンクのズボン。“なるほど”と、自然と笑みが溢れます。
そんなお子さまの個室を含め、LDK、ワークスペース、寝室など、家中にアートが飾られているN邸。以前のご自宅から変わらず飾り続けている作品もあれば、最近新たに迎えたものもあるといいます。
「アート作品は夫婦共通で好きなのですが、決められた収納スペースに箱が収まる分だけと決めていて。ずっと仕舞い込んでしまうと、作品自体も可哀想ですしね。新たに迎えることもあれば、手放す決断をすることもあります」とNさん。
そんなお話を伺っていた最中にも、先日購入し届く日を待ち侘びていたというアート作品がちょうど到着。大切そうに作品を見つめながらご夫婦で微笑み合います。
デザインやアートへのリスペクトに裏打ちされた、洗練されたリノベ空間。選び抜いた大切なモノに見守られながら、Nさん一家の新たな日常が紡がれていきます。