建具の種類いろいろ_扉編
『建具』とは、部屋と部屋をつなぐ開口部に取り付けられる仕切り(ドアや窓、ふすまや障子など)と、それを取り付けるための鴨居や枠などの総称です。
今回は、建具の種類や特徴を詳しく解説し、空間づくりに最適な扉の選び方を紹介します。
物件探しから設計・施工、インテリアまでをワンストップで手掛けるnuリノベーション(株式会社ニューユニークス)のスタッフ。
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<この記事のトピックス>
・ドアのいろいろ、開き戸と引き戸
・『開き戸』のメリット・デメリット
・『引き戸』のメリット・デメリット
・アイデアいろいろ、扉のデザイン集
ドアのいろいろ、開き戸と引き戸
住宅内で扉を設置する際には、前後に開閉する『開き戸』か、ふすまのように左右に開く『引き戸』を選択するのが一般的。
間取りや部屋の構造によって選択できるタイプが決まってしまう場合もありますが、そうでない場所では用途や使う人にあった扉を選ぶことが重要です。
『開き戸』のメリット・デメリット
まずは開き戸について、メリットとデメリットを見ていきましょう。
■メリット
1. 場所を選ばずに設置できる
開き戸の特徴は、扉1枚分のスペースがあればどんな場所でも取り付けられること。
左右の壁のことを考慮する必要がないので、扉のすぐ隣にスイッチプレートやコンセントを設置したり、扉と内窓と一体的に造作するなど、建具周りのデザインも自由に楽しむことができます。
・リノベーション事例「SOZAI×KITCHEN」(東京都世田谷区)
こちらは開き戸のすぐ横に内窓を設けた事例。
開き戸と内窓の木枠を同じ木・同じ色で揃えることで、統一感のある落ち着いた印象に仕上がっています。
2. パーツの種類が豊富
・リノベーション事例:「ROUGH×土間」(神奈川県横浜市)
ドアノブやハンドルなど、金物の種類が豊富なのも開き戸のいいところ。こちらの事例では既製品の無垢レッドパイン材のドアとアメリカのKwikset社のドアノブを組み合わせています。
3. デザインの幅が広い
既製品でイメージに合うものがなかった場合でも、リノベーションではオリジナルで理想の扉を造作することができます。
・リノベーション事例:「a line」(東京都調布市)
リビングを横断する、直線的なラインが美しい木の壁。
実はグリッドに沿って収納や、奥の個室へ続く通路への開戸が隠されています。
扉単体ではなく壁面全体をデザインすることができる点は、オリジナルの扉を製作するメリットと言えます。
■開き戸のデメリット
1. 前後のスペースにゆとりが必要
開き戸を設置するときに確認したいのが、ドアを開いた先にゆとりがあるかどうか。
特に幅の狭い廊下に面する扉や、扉が密集する場所では、開けたときに他の扉や人の通行と干渉しないかどうかなどをよく検討する必要があります。
2. 開閉の音が気になる場合も
生活の中で意外と気になるのが、開き戸の開け閉めの際の音。
家族と生活リズムが異なる場合などは、特に注意が必要です。
既製品では扉がゆっくり閉まる装置がついているものもあるので、お子様のいるご家庭などでは検討してみるのもいいかもしれません。
『引き戸』のメリット・デメリット
続いては、引き戸について。同じくメリットとデメリットをご紹介します。
■引き戸のメリット
1. 開いた状態でもすっきり
引き戸のメリットは、開いた状態で扉の存在が邪魔にならないこと。
・リノベーション事例:「Asian black」(東京都中野区)
こちらのお宅ではLDの引き戸を開けた際に、戸板が壁と壁の間にぴったり納まるように引き込みを計画し、すっきりとした見た目にこだわりました。
2. 自由な使い方が可能
大きな開口部に大して扉を3枚連ねることで、使用シーンに合わせて個室化したり、1部屋のように開放的に空間を使うことができる点も引き戸の大きなメリットです。
・リノベーション事例:「As time goes by」(東京都文京区)
LDKに隣り合う個室にガラス引き戸を採用。引き戸は左右から中央に引き込んだり、3枚を左端に引き込んだりと自在に開閉が可能。
使うシーンに合わせて大きく開口できることや、上吊レールにすることで段差も解消でき、将来的なバリアフリーの観点からもオススメです。
■引き戸のデメリット
気密性・防音性が低い
引き戸のデメリットは気密性・防音性が低いこと。
構造上、上下に隙間ができてしまうため、開き戸に比べるとエアコンの効きが良くなくなったり、音が漏れやすくなる場合があります。
アイデアいろいろ、扉のデザイン集
最後に、nuリノベーションの施工事例の中から様々なシチュエーションの扉のデザインをご紹介します。
開き戸、引き戸、通路の扉、収納の扉…。オリジナリティあふれる扉のアイデアをお楽しみください◎
<リビング収納にうっとりする引き戸を造作>
・リノベーション事例:「TANSEI-端正-」(埼玉県川越市)
元々あまりものを持たないタイプだというOさんは、当初検討していたWICをつくるプランをやめ、大容量のリビング収納を採用しました。
「いかにも収納って感じではなく、見ていてうっとりするような見た目がいい」と、大判のシナ合板を引き戸に採用。
天井がなるべく高く見えるように、天井高ギリギリのH2.3mで造作しました。
取っ手は掘り込みでミニマルな設えに。
引き戸を採用しているため、対角の位置にある脱衣室へつながる通路とも干渉せず、すっきりとした動線を確保しています。
<ビビッときたテンパーパードア>
・リノベーション事例:「conceptArt」(東京都足立区)
LDKと隣接する個室の間にテンパードアを設えたYさん。
内見でこの壁が躯体壁であることを知った時から「テンパードアと躯体壁の質感は絶対似合う!」と、テンパードアの導入を熱望していたのだそう。
扉周辺にはピクチャーレールやフィギュア専用の棚など、夫妻の好きなものを飾るスペースを設けていることからも、引き込みなどの心配がいらない開き戸がぴったり。
楽しそうにフィギュアの棚を飾るご主人の姿をガラス越しに見る瞬間も、奥様の幸せなひと時なんだとか。
<愛猫思いのやさしい引き戸>
・リノベーション事例:「nest」(東京都江東区)
2匹の愛猫と暮らすTさんのお宅では、廊下の先の個室へつながる扉に造作の引き戸を採用。
よく見ると、戸板の左端がアールに切り欠かれたデザインになっています。
これは扉を閉めた状態でも猫たちが家中の好きな場所で過ごせるようにするための工夫。
手前が細い通路であること、奥はWICや個室への通路が入り組んで配置されていることから、干渉が少ない引き戸を採用しました。
<大開口を叶える親子ドア>
・リノベーション事例:「latte」(東京都横浜市)
通路幅約1.2mの廊下に、親子扉を設置したS邸。
普段開け閉めする扉の幅は約71cmですが、袖の部分も開閉することができるため大きな家具の搬入も楽々です。
閉めている状態でも袖の部分が壁ではなくガラスになっているので、抜け感も抜群。
LDKの明るさを玄関までたっぷり届けられるのも使い勝手のいいポイントですね。
最後に
お部屋の「顔」とも言える扉。
1日に何度も手が触れる場所だからこそ、お気に入りのデザインで使用感にストレスのないものを選びましょう。
次回は「建具の種類いろいろ_内窓編」をお届けしますので、お楽しみに。
よくあるご質問
Q1. 扉にはどのような種類がありますか?
A.
扉には、主に前後に開閉する『開き戸』か、ふすまのように左右に開く『引き戸』の2種類があります。間取りや部屋の構造によって選択できるタイプが決まってしまう場合もありますが、そうでない場所では用途や使う人にあった扉を選ぶことが重要です。
Q2.『開き戸』のメリットはなんですか?
A.
開き戸は基本的に、扉一枚分のスペースがあればどこにでも設置することができます。また、引き戸と比較してハンドルなどのパーツが豊富だったり、デザインの幅が広い点がメリットとしてあげられます。
Q3.『開き戸』のデメリットはなんですか?
A.
開き戸を設置する際には前後にスペースのゆとりが必要となります。廊下など人や他の扉などが狭い空間に密集する場所では干渉する可能性がないか注意して設定しましょう。また、引き戸と比較して開閉音が気になるというケースも。
Q4. 『引き戸』のメリットはなんですか?
A.
引き戸は扉を開くと戸板が袖壁に引き込まれるため、すっきりとした納まりが可能となります。また、3連引き戸など、扉の枚数を増やすことで大開口に対してフレキシブルに空間を仕切ったり繋げたりできるため、自由な空間の使い方ができる点もメリット。
Q5. 『引き戸』のデメリットはなんですか?
A.
引き戸のデメリットは気密性・防音性が低いこと。構造上、上下に隙間ができてしまうため、開き戸に比べるとエアコンの効きが悪くなったり、音が漏れやすくなる場合があります。