
オブジェのような赤い柱に、立体アートのようなキッチンとダイニング。MoMAから飛び出してきたような近代的な住まいで生まれた、新しい日常とは。

憧れの人の家
東京郊外の緑豊かな文教都市に住むのは、夫婦ともにIT企業にお勤めのTさん。郊外で育ったこともあり、騒がしい都心よりも落ち着いた環境が肌に合うと考えていたと言います。フルリモート勤務で通勤の制約もないため、
「マイホームを買うなら郊外で」と、国立エリアを検討。試しに賃貸で約1年半住んでみて、納得してから購入活動をスタートしました。
中古物件探しは、住宅情報サイトでの情報収集からスタート。ワンストップサービスで物件探しから依頼できるリノベ会社も探し、まず2社に問合せしましたが、物件探しの段階から費用が発生する仕組みだと分かり、一度立ち止まったと言います。
その間に新たに問合せたのが、nuリノベーション(以下nu)。nuは物件探しや内見同行を依頼しても、契約前なら費用がかからないことが分かり、安心して踏み出せたそうです。
「この家はたまたま自分で見つけて不動産屋に内見予約を入れたのですが、リノベのプロの意見を聞きたかったので、nuさんに同行をお願いしました。すごく暑い時期だったし、その時点では一円も発生していないのに、ここまで付き合ってくれるんだ…と感動するくらい寄り添ってくれて。そこで一気に信頼感が増しました」と、Tさん。
この築27年、70.65㎡の物件の決め手は、目の前に立つ桜の木。奥様のご実家にも桜があり、同じように季節を楽しめることに心が動いたと言います。また、リノベーション済み物件だったため、設備を既存利用することでリノベ費用を含めても予算内に収まりそうだったことも、大きな安心材料でした。
実は奥様、芸術大学出身の審美眼の持ち主。nuを選んだ理由には、こんなバックストーリーがあったと言います。
「以前からネイルポリッシュのブランドを運営しているアサノさんのインスタグラムをフォローしていて、住まいも素敵だなと思っていたのですが、nuの事例を見ていたら、なんとアサノさんのお家が掲載されていて。それで、一気にnuさんに興味を持ったんですよね」。
さらに、nuの完成見学会で実物を体感し、デザインと施工のクオリティに感激。素敵な予感は確固たる確信に変わり、nuへの依頼を決意しました。
その後も、アドバイザーの仕事がとにかく早く、相談メールを送ると「このままZOOMで話しませんか?」とすぐに返信が届き、そのままオンラインで打合せするなど、スピーディーな対応に感動したと言います。
こうして、大きな安心感とワクワクの中で、設計打合せがスタートしました。

異素材の競演
ご主人はラジオ・音楽・本。奥様は編み物・ビーズ・刺繍と、インドアな趣味をお持ちのTさん。「とにかく家の時間を充実させたい」と考え、日中は自然光だけで過ごせる採光度、落ち着いて趣味を楽しめる雰囲気、植物が似合う内装などを希望しました。さらに、二人で並んで使えるキッチンや、掃除やメンテナンスのしやすい素材選びも大切なポイントだったそうです。また、デザイン面は、シンプルでありながら高級感があり、カラフルなインテリアも映えるコンテンポラリーな雰囲気をイメージ。ここまでの希望をデザイナーに伝え、あとはお任せしたと言います。
想いを託されたデザイナーは、Tさんと対話を重ね、光と風がたっぷり通り抜ける、2LDK+ワークスペース+WICの間取りを設計。購入時すでに新しくなっていた風呂・トイレ、床と壁の下地は既存を活用し、玄関から斜めに伸びる廊下も既存のラインを活かしました。
また、床材には、天然素材を主原料とする〈リノリウム〉を採用。ライトグリーンのやわらかな色味が、空間に静かな上質感を添えています。「初回プレゼンで提案したリノリウムの床を気に入っていただき、その日にそのまま家具を見に行かれると伺ったので、サンプルもお渡ししました」と、デザイナーは当時を振り返ります。
小上がりのダイニング兼ワークスペースにはブラックの磁器質タイルを採用して、素材でゾーニングしつつメリハリを創出。天井は躯体現しにクリア塗装を施し、リノリウムのやわらかな質感と対比するような、無骨なコンテンポラリーさを加えました。

最も目を引くのは、キッチンの赤い円柱。構造上動かせないパイプスペースを赤いタイルで包み込み、シンボリックな柱へ昇華しました。全長約3mmの造作キッチンをなめらかなアールで末広がりに伸ばし、イタリア生まれの左官材<オルトレマテリア>で天板・腰壁を一体的に包み込みました。
一方、バックカウンターは、リノリウム天板とシナ合板でやわらかい印象に。全長6.3mで一枚板のようにワークスペースまで伸ばし、夫婦のワークデスクも兼ねました。ウォークインパントリーは家電類をまとめられる広さを取り、生活感を隠せるようにしました。
また、ダイニングの小上がりの角を取ってアールにしたり、リビングの壁もさりげないアールにしたりして、ここでもやわらかさをプラス。エッジの効いた素材たちとのバランスを、細部で調整しました。「アールの壁は、朝日が当たると陰影が綺麗なんです」と、目を細めるご主人。
その他、寝室は白でまとめ、クイーンサイズのベッドと小さなデスクだけ収まるコンパクトな空間に。しっかりモノが収まる3.0JのWICと、家族構成の変化に対応できる3.0Jの個室も設けました。
こうして、さまざまな色や異素材が斜めやアールのラインで交差する、新感覚の空間が完成しました。

芽生えた、暮らしへの欲
住んで9カ月。新居での暮らしは、賃貸でのそれとは明らかに違うといいます。「断然便利になったし、毎日テンションが上がります」とご主人。奥様も「家での時間をもっと楽しもう、という気持ちになりました。花を買って飾るようになったんですけど、花があるとこんなにも気持ちが違うんだ…と気付いて(笑)。ちょっと良いフラワーベースを買おうか検討中です」と、笑います。
現時点で、理想の実現度は90点。残りの10点は伸び代で、ソファにアートブランケットを掛けたり、オシャレなベッドカバーに換えたり、アルテックのスツールをお招きしたりしたいそう。
「やりたいことは尽きません。どこまでやるとやりすぎなのか? 引き算が難しいですね」と、ご夫婦は笑います。
家具にはとことんこだわり、設計打合せの1回を家具の話に充てたほど。<HAY>のダイニングセットとソファ、ペンダントライト、<Montana>のワイヤーシェルフ、<USMハラー>のオリーブ色のテレビ台など、全てnuのインテリアスタイリングサービス<decoる>を活用して揃えました。引き渡し後も、家具のスタイリングについてデザイナーに相談するなど、関係は続いています。
休日はリビングで、それぞれ思い思いの時間を。ご主人はソファで読書や動画鑑賞、奥様はダイニングで編み物や刺繍に興じているそうです。ソファでゴロゴロしながら、可愛らしいリノリウムの床を眺める時間が愛おしいのだとか。
「朝、差し込む光を見ながらコーヒーを飲む時間が幸せです。自分の家ができたことで、きちんと整えたいという気持ちが強くなりました」と、ご夫婦。広いワークデスクのおかげで、モニターを2台並べられたり、ノートを広げたりできるようになり、仕事の作業性も上がったと言います。
「これまでは賃貸でも順応できるタイプだったし、それに疑問を持ったこともなかったけど、リノベでこの家をつくったことで、ちゃんと住まいに対する欲が出てきました。自分たちの暮らしへの要件が明確になって、軸が整理されてきた気がします」とご主人。ウェブデザインの仕事をしている奥様は、「リノベ体験を通して、細かな部分まで丁寧に考えることが、空間全体の完成度を高めるのだと改めて実感しました。今回の経験は、これからの仕事にもきっと生きてくると思います」と頷きます。
これからの楽しみは、リビングのグリーンを大きく育てて家のシンボルにしたり、ダイニングチェアを色違いで揃えたりすること。お喋りの絶えないご夫婦の笑顔が、この家での暮らしの満足度を教えてくれました。

Interview & text 安藤小百合