
家族が自由に動ける回遊動線に、床座で過ごせる心地いい素材。ライフスタイルに寄り添う空間が育む、ノンストレスの暮らしとは。

無骨さに惹かれた、ふたり。
のどかな空気が流れる、東京の下町エリア。この街に建つマンションに住むKさんは、IT系企業に勤めるご主人、飲食関係の企業で製造に携わる奥様、6カ月の娘さんの3人家族です。
結婚後しばらくは浅草の賃貸に住んでいましたが、近年の物件価格の高騰を感じる中で「買うなら早めがいいかな」と、住宅購入を意識し始めたといいます。
そんなお二人の出会いのきっかけは、古い倉庫をリノベーションしたホステル&カフェ。一時期ホテル暮らしをしていたご主人がそこを利用していたときに、働いていた奥様と意気投合したのだとか。
「そのホステルもそうだったのですが、二人とも無骨さのあるリノベ空間が好きだったんです。その前提はありながらも、以前住んでいた賃貸に近所の新築マンションのチラシが入っていたので、手始めに内見に行ってみたんですね。そこから3軒ほど新築を見て回ったものの、綺麗すぎて雑味がなくて、自分がそこに住んでいるイメージが持てなくて…。『私たちはやっぱり中古リノベだね』と、その日のうちに近くのリノベ会社に相談に行きました」。
その後nuリノベーション(以下nu)に相談したのは、ご主人の同僚がnuでリノベをしていたことがきっかけ。コンクリートの質感を活かした家をつくりたかったお二人は、nuの事例を見てピンと来たと言います。
「『TVやインスタで見るような暮らしを実現できるかもしれない』と、ワクワクしました。事例のバリエーションも豊富で、この中から私たちらしい方向を見つけられそうだなって」と、奥様。
早速nuのアドバイザーと共に中古物件探しを開始し、墨田区や台東区など、ゆっくり時間が流れる下町を中心に、3日に分けて5軒を内見。家族構成の変化を見据えて、70㎡以上の広さをマスト条件にしました。
この築32年・82.88㎡の物件は、駅から近く、広さの割に良心的な価格だったこと、近隣にスーパーが多いこと、奥様が好きなカフェや勤務先が近いことが購入の決め手に。特にご夫婦の印象に残っているのは、内見時のアドバイザーの対応だったと言います。
「前の住人がまだ住んでいる状態だったので、荷物も多くて、リノベのイメージがつきにくかったんです。でも、アドバイザーさんが構造的にリノベに不具合がないかをテキパキ確認してくれたり、その場で『こんなリノベが良さそうですね』とイメージ図を描いてくれたりして、すごいなと思いました」と、奥様。
さらに、「何が好きですか?」「どんな空間に住みたいですか?」などニーズを丁寧に聞き出しながら、言語化が得意ではないという奥様ともゆっくり丁寧に話を進めてくれたことも嬉しかったと言います。
こうして、絶大な安心感の中でリノベーションが始まりました。

めぐる動線、整う暮らし。
Kさんがイメージしたのは、“ひらけた空間”での“目線の低い暮らし”。ご主人は「床座でゴロゴロしたい」、奥様は「収納はちゃんとありつつ、生活感があってもいい感じに見える家にしたい」と考えていました。そこで“床座”をコンセプトに、間取りは、ワンルームのような1LDK+WICに。家の中心に水回りをまとめ、玄関・キッチン・LD・クローゼット・寝室をぐるりと囲むように配置して、家全体が行き止まらないパーフェクトな回遊動線にしました。
22.8畳のLDKの床には、床座に適した心地よい肌触りで、購入予定だった国産材の家具ともマッチするナラ材のフローリングを採用。今後家族が増えたら壁を追加して部屋数を増やせるように、あらかじめそれを想定した構造にしました。ダイニングのテレビ下の床には磁器質タイルを敷き、雛人形など季節のしつらえを楽しめる床の間のような場を設けました。
特にこだわったキッチンは、料理に集中できる壁付け型で、ゆとりのある3.7m幅で造作。3口ガスコンロやBoschの食洗機も採用しました。天板はステンレスで厨房のような無骨さを表現しつつ、直接作業台としてパンやお菓子の生地をこねられるようにしました。
「食器や調理用具をポンポン置いたり、壁に掛けたりしたい」という思いから、正面の壁にお皿をディスプレイ収納できる棚とハンガーバーを設置。キッチン台の下部は収納をつくり込まず、シルバーラックやブリキ箱を組み合わせて“見せる収納”にしました。

収納動線にも徹底してこだわり、玄関とキッチンをつなぐ位置に冷蔵庫を格納したウォークスルーパントリーを設け、買い物から帰ってきたら直行で仕舞える動線を確保。さらに、リビングと寝室をつなぐ廊下に配置したウォークスルークローゼットは、洗面室からもアクセスが可能で、掛ける収納を中心に、動線上で衣類の出し入れが完結するようにしました。また、クローゼットの隣にはご主人のワークスペースを設け、廊下を有効活用しています。
広く取った玄関土間は、左右の壁に可動棚を造作し、片側は約30足が収まるシューズラック、片側は文房具・書類・薬・掃除用具・防災グッズなどあらゆるモノが収まる全面収納に。奥様がバンカーズボックスなどを駆使して完璧にオーガナイズし、各引き出しにテプラを貼って、どこに何が入っているのかが一目で分かるようにしました。
「とりあえずここに来れば全部あるし、使ったらここに戻せばいい。これから子どもが大きくなっても、『お母さんアレどこにある?』と聞かれないように(笑)」と、どこか楽しげに話します。家族の誰もが迷わず使えるよう整えられた収納は、空間の開放感だけでなく、暮らしそのものをひらいていくようです。
また、無骨なLDKとは対照的に、洗面室はやわらかな印象に。幅広の洗面台や縦張りタイル、ドーム型のニッチなど、機能性と意匠性を両立させました。

完成しない余白
希望全てが叶った空間での暮らしが始まって約7ヶ月。日々の暮らしに不足はない一方で、空間にはまだ余白が残されています。これから家族の変化に合わせて、その余白をどう活かしていくかも楽しみのひとつだと言うKさん。
そうした余白を内包しながらも、日常の動きは極めて合理的に整えられています。回遊動線のおかげで家の中で誰ともぶつからず、掃除もしやすく、どこに何があるのか分かりやすい。さらに、ベビーカーを畳まずそのまま玄関に入れることに感動していると言います。
「この家で実際に主婦をやってみて、生活のしやすさをすごく感じています。マンションの住人や管理人さんたちも良い人ばかりで、出かけ際にお喋りするのが日々の楽しみ。見守ってもらっている感じで心地いいし、ほっとできる要素が散りばめられています」と、奥様。ご主人も、「仕事から早く帰ってこようと思うようになりましたね」と満足気です。
家具は、nuのインテリアスタイリングサービス<decoる>を利用して選んだもので、マスターウォールのソファと、通常より座面が低くなっている飛騨産業のダイニングセットがお気に入り。今後はさらにインテリアグリーンを増やしたり、ベランダをテラスとしてつくり込んだりしたいそうです。
幸せを感じるのは、光の入り方によって空間の表情が変わるのを見ているとき。娘さんもあちこち自由に動き回れて、毎日楽しそうなのだとか。今後は、玄米を炊いたり、お菓子をつくったり、パンを焼いたり、工数がかかる料理をゆっくりしたいと話す奥様。念願の圧力鍋を買おうか、検討中なのだそう。
物件購入前は、都会でこんな広々とした暮らしができるとは思っていなかったというご夫婦。将来への可変性も持たせることができ、長く愛せる住まいを手に入れた今だからこそ、実感していることがあると言います。
「ライフスタイルのベストはその時々の家族の状況で変わるものだから、将来的にリビングを分割して個室を増やせるようにするなど『あれしよう、これしよう』と臨機応変に変えていける設計にしてもらえたのが本当に良かった。シンプルにつくってあるから、モノを減らしても増やしても楽しいですし。ただ、なるべくゴチャゴチャしないように、今はモノの購入を最低限に留めていますが(笑)」、そう笑うご夫婦。
永久に完成することのない余白がある。それもまたリノベーションの醍醐味であることを、Kさんの暮らしが教えてくれました。

Interview & text 安藤小百合